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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル
第二章「美少女領主と仲良くなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)」

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第33話 反・反ステイナー派

 俺は中佐に続いて馬車を降り、館の中へと入った。


 ロビーでは明らかに一般人ではない、殺伐とした雰囲気を纏った人たちが何人か集まって、立ち話をしていた。


 彼らは中佐に気づくと、軽く会釈をするようにして挨拶した。


「……彼らが俺たちの仲間なのか?」

「その通りだ。反ステイナー派に対抗するために私が声を掛けて集めた人間たちだ。元軍属から商人のネットワークに詳しい者、金鉱脈の経営に携わっていた者など、それぞれの分野に長けた人物を選んでいる」

「なるほどな」


 そんな話をしていると、立ち話をしていた集団の中から一人、明らかに年齢の若い男がこちらに歩み寄って来た。


「カタヨル中佐、お久しぶりです」


 爽やかな雰囲気の、金髪の青年だ。彼は質の良いシャツに似た衣服を身につけていた。


「ああ、ラウル・アーシャ。久しぶりだな」

「こちらの方は?」

「フルスト・ロウ殿だ。領地経営に詳しい男だそうだ。リリィ様からの信頼も厚い優秀な人材だよ。ヒリュー領に関する専門家だと聞いている。知らないか?」

 

 ラウルと呼ばれた青年はじっと俺を見つめ、そして言った。


「いえ、初めてお会いする方ですね。フルストさん、ラウルです。よろしく」

「中佐からも紹介があったが、フルスト・ロウだ。よろしく頼むよ」


 ラウルが差し出した右手を握り返す。


 その瞬間、『ブレス・オブ・ファンタジー』をプレイしていたときの記憶が蘇った。


 ラウル・アーシャ。


 俺はこの青年を知っている。


 こいつは――!


「どうしました、フルストさん。僕の顔がどこか変ですか?」


 裏表のないような表情でラウルは言う。


「あ……いや、何でもない」

「ラウル君は若くして金の取引で財を成した男だ。ステイナー領内に拠点を構える商人たちのネットワークに詳しく、反ステイナー派の資金源を追うのに協力してもらっている」

「……というわけです。カタヨル中佐、このフルストさんを紹介するのが今日の目的ですね? 新しいメンバーとの顔合わせだって聞いてましたけど」

「その通りだ。会議室へ向かおう。フルスト殿、こちらへ」

「あ、ああ」


 中佐と共にホテルの廊下を歩いていく。俺たちの背後から、ラウルと、彼と立ち話をしていた不健康に太った男がついてくる。


 ラウル・アーシャ。俺はこの青年のことを知っていた。


 『ブレス・オブ・ファンタジー』で王国を裏切り闇落ちするキャラクターだ。


 次期国王の座を狙う貴族の一人にそそのかされた彼は、闇の魔力に呑まれて中ボスとして主人公たちの前に立ちはだかるのだった。


 若くして成功した商人という設定も俺の記憶と一致している。


 ということは、やはりラウルはステイナー派も裏切るのか……?


「考えごとか、フルスト殿」

「いや……あのラウルという青年は、どこで知り合ったんだ?」

「彼の方からコンタクトを取って来た。ちょうど、反ステイナー派の勢力が強まっていた頃だ。奴らの台頭で事業に支障が出ているから、反ステイナー派の排除に協力したいと」

「そうか……」

「ラウル君は商人のネットワークを利用した情報収集に加え、我々への資金提供も行ってくれている。実績は申し分ない」


 話を聞いているだけだと確かに信頼できそうだけれど……。


 それとも、歴史が若干変わってしまった影響で、まだ裏切っていないというだけか?


 どちらにせよ100%信用してしまうのは危険な気がする。


 到着したのは、この間リリィと会った部屋とは違う、円卓が置かれた小さな会議室のようなスペースだった。


 既に一人、赤毛の少女が席に座っていた。


「待ちくたびれたわ、中佐」

「少し遅れたか? すまない、ミカ」


 少女は黒くてタイトなワンピースを着ていて、耳には派手なピアスがついていた。


「……フルストだ。よろしく」

「あたし、ミカ・シャーリー。情報屋をやってるわ。今は中佐に雇われて反ステイナー派の情報収集をしているの」

「フルスト殿の詳しい紹介は全員が揃ってからにしよう。まだ来ていないのは――」


 中佐が部屋を見渡す。


 ミカ、ラウル、太った男。そして軍服を着た青年が小走りで部屋へ駆け込んできた。


「いやー、すみません。遅れちゃったっス。森で道に迷っちゃって」

「次からは遅れるなよ、ロメロ。フルスト殿、私の部下のロメロ軍曹だ」

「ああ、よろしく」

「話は中佐から聞いてるっス」

 俺が言うと、ロメロは敬礼を返した。

「紹介が済んでいないのは……ゾップさんだけか。すまないが、ゾップさん。挨拶を頼む」


 ゾップと呼ばれた男は重たそうに身体を揺らしながら立ち上がり、俺の方へ近寄って来た。


「ゾップです。金鉱脈の経営に携わっていました。ようこそ、フルストさん」

「ああ……どうも。フルスト・ロウです」


 ゾップさんは俺と握手を交わすと穏やかに微笑み、再び身体を揺らしながら席に戻った。


 案外気さくなタイプなのか……!?


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