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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル


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第3話 そして、引きこもりへ……。

 メイド少女と会話して、少しだけ落ち着いて来た。


 せっかくだから他にも気になることを確認しておこう。 


「いくつか質問させてほしい。俺は貴族のミリアルド・ヒリュー。ここはミリアルドの屋敷で、君はここで働くメイド。それは間違いないよな?」


 俺の質問に少女は不思議そうな表情を浮かべた。


「は……はい、そうですけど」

「ここはマークニル王家が治める王国で、その辺境の統治を任された俺は民衆からの支持も低い」

「そ、そんなことはございません! ミリアルド様は偉大な貴族様でございますっ」

「いや、今は正直な話を聞かせて欲しいんだ。大事な情報だからな」


 そう。


 ミリアルドは悪徳貴族として主人公に成敗される。


 もし、ゲームの中とは違って、このミリアルドが民衆から愛される偉大な貴族であれば王の不評を買って殺されるようなことはないのだが――


「ええっと、確かに、そのぉ、あんまり好かれてはないっていうか、税金高すぎとか、贅沢しすぎとか、態度が高圧的とか色々言われてはいますけどぉ……王都の方でも評判良くないって噂ですし……」

「や――やっぱりそうか」


 そんなに都合よくはいかないらしい。


 じゃあつまり―――このままいけば俺は殺されるってことだ。


 なんだそれ、最悪だ。


 俺はただ引きこもってゲームをしていただけなのに。


 こうして俺がミリアルドになってしまっているのが悪い夢だというのなら一刻も早く覚めて欲しいところだけど、こんなにリアルな夢があるのだろうか。


 しかし、仮に俺が超絶リアルな夢を見ているのだとして、それでも殺されるのは嫌だ。


 どうにかして未来を変えなければ。


「あ、あのぉ、ミリアルド様……!?」


 メイド少女が遠巻きに俺の顔を覗き込む。


「……君、名前は?」

「わ、私ですか? 私はミーア・ウィンデアです」

「そうか。ではミーア、頼みごとがあるんだけど」

「なっ、なんでございますかっ!?」

「この付近でしばらく身を隠して生活できるような場所がないか探して欲しい」

「ど……どういうことですか?」

「逃げるんだよ。殺される前にね」



◇◆◇◆



「おひとりで大丈夫なんですかぁ……?」


 不安そうにきょろきょろと辺りを見渡しながら、ミーアは言った。


 深い木々の茂みからは聞いたことのない鳥の鳴き声がしている。


「それにしても、しばらく休養なさりたいなどと、突然の話でしたな」


 ミーアの後ろにいるのは、執事のキャンベルだ。


 白髪で痩身の老人で、ヒリュー家に忠実なベテラン執事。ストーリー中盤でミリアルドの敵討ちのため主人公たちに襲い掛かってくるというミニイベントがある。ミリアルドのような悪徳貴族には勿体ない人材だ。


「いや、少し自分を見つめなおそうと思ってね。精神修行だよ」


 俺は着替えや食料一式が詰まったバッグを両手に抱えたまま、目の前の古びた小屋を見上げた。


 ミーアとキャンベルが探してくれた隠れ家だ。もちろん、俺がここに身を隠していることは口外しないよう言ってある。


「左様でございますか。ミリアルド様がそのようなことをお考えとは、このキャンベル感服いたしました!」


 キャンベルは感動したように目元を拭う。


 泣くほどのことではないような気がするけど……。精神修行っていうのも出まかせだし。実際は死にたくないから身を隠すだけだし。


「まあ、とにかく二人ともありがとう。助かったよ」


 俺が言うと、キャンベルとミーアは驚いたように顔を見合わせた。


「ま、また他人に感謝を……っ!? ミリアルド様、まるで人が変わられたようですね。何かあったんですかぁ?」

「……別にいつも通りだよ」


 文字通り人が変わっているのだが、それを説明しても伝わらないだろう。


「ミリアルド様がここにおられることは誰にも口外しておりませぬ。また、領内の統治についても政務官殿に一任しておりますゆえご安心を。表向きには外遊へ出られたことになっております」

「助かるよ、キャンベル」


 俺が言うと、キャンベルは再び目頭を押さえ始めた。


「先代の当主が亡くなられミリアルド様が後を継がれた際は、増税に次ぐ増税と贅沢に次ぐ贅沢で領内の収支は急激に悪化、民衆からの支持は暴落し他の貴族からは煙たがられ、お屋敷に勤める執事たちにすら愛想をつかされる始末でしたが、このキャンベルはミリアルド様を信じておりましたぞ。どうか生まれ変わったお姿でお屋敷にお戻りください」


 涙ながらにすげえ悪口言われた気がする……。


 まあ、仕方ないだろう。ミリアルドがどんなに愚鈍で自己中心的な貴族だったかは、ゲームをプレイしていた俺にも分かっている。



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