第22話 復活の日
◇◆◇◆
誰かが泣いている声がする。
徐々に視界が明るくなり、俺は目を開けた。
俺は草原の上に倒れていた。どこだろうと思いながら体を起こすと、そこはヒリュー家の屋敷の庭だった。
「死んでなかった……?」
上を見上げる。
ブレスたちと戦っていたはずの大広間の窓が見えた。
屋敷の、大広間のある箇所は外から見ても分かるほど大きく傷ついて、ほとんど半壊状態になっていた。
立ち上がろうと地面に手を付いたとき、切り落とされたはずの右腕がついているのに気が付いた。
とにかく、泣き声の正体を探ってみよう。俺は声のする方へと歩いた。声は、大広間の方から聞こえていた。
屋敷に入り、階段を上る。ブレスたちが通った足跡が残っていたものの、彼らの気配は既になくなっていた。
大広間までたどり着くと、そこには二つの人影があった。
痩身の男性とピンク色の髪をしたメイド――キャンベルとミーアだ。
二人はこちらに背を向けたまま、その肩を震わせていた。
「う、うう……!」
ミーアがすすり泣く声が聞こえると同時に、キャンベルが歯を噛みしめる音がした。
「このキャンベルめが迂闊でした。きっとミリアルド様はすべて理解しておられたのです。ご自分の命が王家に狙われているということを。その上で、皆に被害が出ないよう休暇を出し――ああ、私はなんと愚かだったのか!」
「み、ミリアルド様ぁ……! あんなに優しい人だったのに、なんで殺されなきゃいけなかったんですかぁ……! 帰って来て下さいよぉ……!」
「ミリアルド様、この仇は必ずや取りますぞ……! たとえ王に反逆することになっても、必ず!」
壁も半壊しボロボロになっている大広間で喋る二人。
俺はどのタイミングで話しかければいいのか迷ったが、待っていても仕方ないと思い声を上げた。
「あ、あのー、二人とも……」
ミーアとキャンベルは同時にこちらを振り返った。
その瞬間。
「うわああああああ幽霊だああああああっっっ!!?」
絶叫するミーア。
「ち、違う! 俺だよ、俺! ミリアルド・ヒリューだ!」
「ほ、本物なんですかぁ!? でも、ミリアルド様は私たちの目の前であの騎士の攻撃を受けて跡形もなく――」
ミーアの手元には、俺の衣服の一部があった。血まみれのその衣服以外には、俺の体は肉片ひとつ残っていなかった。
そうだ、確かに俺はブレスの攻撃で死んだはずだ。なのにどうして――いや、違う。
俺は右腕を見た。
「回復魔法だ……」
本来の俺の体はブレスの攻撃で跡形もなく消し去られ、絶命した。
だけど右腕は――剣で切り落とされ大広間の外へはじけ飛んだ右腕は残っていた。
そして俺が俺の体にかけていた自動制御の回復魔法が、その右腕を対象に発動したとすれば――今こうして立っている俺は、魔法によって右腕から全身が再生した存在ということになる。
普通に考えればありえないことだけど、ミリアルドの尋常じゃない回復魔法があれば可能なのかもしれない。現にこうして生き返ってるわけだし。
「回復魔法、ですかぁ?」
ミーアが首を傾げる。
「そうだよ。自動で発動するようにしていた回復魔法が、俺の体が消失したことをトリガーに、切り落とされた俺の右腕を媒介に全身を再生させたんだ。そうとしか考えられない」
「よ、よく分からないですけどぉ……とにかく、ミリアルド様が生きてて良かったですぅ!」
ミーアは俺に飛びついてきて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を摺り寄せてくる。
「お前が教えてくれた回復魔法のおかげだよ」
俺はミーアの髪を撫でた。
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