第14話 密会、そして襲撃
息を吸い呼吸を落ち着け、俺はリリィに向かって声を上げた。
「リリィ・ステイナー。少しの間で良い、二人きりで話すことはできないだろうか?」
リリィが驚いたように目を大きく開ける。
「二人きりで……ですか?」
「ああ、そうだ」
「ミリアルド様、何かお考えが?」
メチャムが俺に囁く。
「もちろん。俺の命に係わることだ」
「ミリアルド様の? 一体何が」
命に係わると言っておけばそれ以上追及されないだろうと思っていたが、意外にもメチャムは食いついて来た。失言だったかもしれない。
「とにかく、リリィと二人で話しておかなければならないことがあるんだ」
「……お考えがあってのことと思います。承知しました」
メチャムが周囲に目くばせすると、ステイナー家側の役人たちも察したように頷いた。
そして役人たちが動く前に、リリィが口を開いた。
「良いでしょう。私とミリアルド様以外の者は退席しなさい」
それを合図にステイナー家の役人や使用人たちが部屋から出ていく。
「ミリアルド様、大丈夫ですかぁ……?」
ミーアが不安そうに呟く。
「大丈夫だ。大事な話があるんだよ」
「何かあればすぐにお呼びください。光よりも速く駆け付けましょうぞ」
キャンベルがそう言い残し、メチャムやミーアと共に退室していく。
そして部屋には俺とリリィの二人きりになった。
――――うおおおおお! あのリリィが目の前にいる! しかも、ゲーム中に登場したような落ちぶれた後の姿ではなく、貴族として着飾った姿で。その影響かリリィの美しさはますます際立っていた。
「ご希望通り人は払いました。話というのは何でしょう?」
若干の緊張を含んだリリィの声に、俺は興奮状態から目覚めた。
こうして見るとリリィはまだ若い――というか、少女といっていいくらい幼い。設定上は17歳くらいだっただろうから女子高生くらいだ。俺が朝の通勤電車で見かけていた女子高生たちと同じ年代の少女が領主だというのだから、とんでもないことだ。
俺は咳払いをして、言った。
「今回の資金援助の見返りというわけではないが、頼みがある」
「頼み……?」
リリィは訝しむように俺へ青い瞳を向けた。
「何も大したことじゃない。ステイナー領の領主たるあなたなら簡単なことだ」
「具体的に仰ってください」
「では単刀直入に言おう。ステイナー領の住民としての身分をいただきたい」
「身分……? 戸籍ということですか?」
「そうだ。数名分の戸籍を用意して欲しい。それも、古くからステイナー領に居住していたことを示す戸籍だ」
「籍を偽造しろというのですね? ……出来ないことはありません。しかし、なぜそんなことを?」
「理由か。そうだな―――実は」
俺の言葉を遮るように、大きな音を立てながら部屋の窓ガラスが割れた。
同時に、割れた窓ガラスから差し込んだ日光で何かが煌めいたのが見えた。
咄嗟に俺は椅子を蹴って駆け出し、リリィの前に身を挺していた。
「……ミリアルド様!?」
「――っ!?」
目の前を赤い液体が舞う。
キャンベルに鍛えられていたおかげで間に合ったと安堵した直後、俺の胸元に激しい痛みが走った。
斬られた―――!?
俺はそのまま地面に倒れた。俺の胸部からはとめどなく血液が溢れていた。
「なっ、何が……!? だ、誰か助けを呼ばないと!」
「う――動くなリリィ。俺は大丈夫だ」
「で、でも、血が!」
「大丈夫なんだ……このくらいなら」
そう、大丈夫なはずだ。
ミーアと練習したことを思い出しながら、血まみれの胸元へ手を翳す。そして俺は囁くように唱えた。
「ひ――『ヒアル』」
俺の掌から緑色の光が放たれる。
光が徐々に強まっていくにつれて傷の痛みは引いていった。そして完全に血が止まったのを確認してから、俺は回復魔法をやめた。
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