第102話 エピローグ②
『フルスト殿、大変だ』
「いや、俺はもう十分大変な目に遭ったよ。そろそろ良いんじゃないか、解放してくれても」
『そうはいかん。実は貿易上で新たな問題が――いや、それよりも大変なことが。リリィ様が居なくなったのだ』
「……またかよ!」
俺がぼやいた瞬間、リビングのドアが開いた。
銀髪の少女が顔を覗かせる。
「フルスト様、お迎えに来ちゃいました」
『一刻も早く捜索隊を組織し、探しに行かねば』
「……その必要はなさそうだ。後で報告するよ」
受話器を置き、リリィに向き直る。
「リリィ、中佐が心配してたぞ。ダメじゃないか、勝手に屋敷を抜け出してきちゃ」
「ですが、いつもならお屋敷にいらっしゃる時間にフルスト様が来られなかったので……」
俯くリリィ。
「……そういえばロザワル領の件も一区切りついたんだよな」
「え?」
「しばらく重要な会議は無かったはずだよな。ということは、リリィがステイナー領から離れても特に問題はないはずだ」
「フルスト様?」
「実は、今からドラク領まで旅行しようかと思ってるんだ。リリィも一緒にどうだ?」
リリィの表情が輝いた。
「行きます、フルスト様!」
「よし、それなら決まりだ。リムニ、リリィの分の支度をしてやってくれ」
「分かりましたぁ、フルスト様!」
すまない中佐。しばらく一人で頑張ってくれ! 俺が心の中で中佐に謝ったとき、玄関のチャイムが鳴った。今日は来客が多い日だ。
「……まったく、次から次に誰だよ」
シャペールと共に玄関へ向かい、ドアを開けると、そこには小さな人影があった。
「フルストさん、遊びに来たのですよ!」
「め――メル姫!?」
地味な服装と、表情を隠すようなサングラス。だが、気品あるその立ち姿は間違いなくメル姫だった。
「ロザワル領のことは本当にありがとうございます、フルストさん。おかげでロザワル領も落ち着きを取り戻したのです。で、お休みを貰って遊びに来たのですよ」
「あ、遊びにって言っても……護衛もナシにこんなところまで」
「護衛でしたら、こちらの方がついてきてくださったのです」
「え?」
メル姫の背後を見ると、小太りの中年が涙交じりに立っていた。
「わ、我が君っ!」
「メチャム!? なんでこんなところに!?」
「実は大変なことに――ヒリュー領と貿易を行っている領地の経営が危ないと噂で、ステイナー領と共同で急遽視察を。カタヨル中佐とも話はついております。ご一緒に、我が君」
「貿易を行っている相手って、一体どこだよ?」
「それが――ドラク領という領地でございます」
なるほどな。
そういう『運命』ってことか。
俺は苦笑した。
「フルスト様、どういたしましょう?」
シャペールが尋ねる。
「決まってるだろ。みんなで行こう、ドラク領に」
俺が引きこもれるようになる日は、まだ遠いみたいだ。
〈了〉
ご愛読ありがとうございました!
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