第101話 エピローグ①
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レザンが引き起こしたクーデターは、首謀者の失踪という形で幕を下ろした。
しかしその爪痕は大きく、ロザワル領における政治の実権を握っていたディシズム卿の死亡による混乱や、クーデターが引き起こされたことによるロザワル領の治安悪化、それに伴う観光的価値の低下、そしてそれらによる貧困、さらなる治安悪化と、ロザワル領に負の連鎖を巻き起こした。
が、中佐が中心となってまとめたロザワル領とステイナー領、さらにはヒリュー領の三領地が結んだ協定により政治的な混乱は終息へ向かった。
その後、ロザワル領がヒリュー領をモデルとした行政組織を構築したことでさらなる治安の安定を図り、マークニル領内での信頼を取り戻すとともに、再び観光資源を活用した領地運営が行われていく見通しだという。
―――というわけで。
もう良いだろう。
俺は十分働いただろう!
ロザワル領とヒリュー領を繋ぐためにメチャムと何度も会議したのは俺だし、リリィの補佐としてロザワル領とヒリュー領を何度も行き来したし、一時はメル姫のボディガードも兼任したし。
ロザワル領でのんびり休暇だと思ったら、予想外に面倒で大変で手間でわけのわからない事件に巻き込まれてしまった。
「もう、ゴールしても良いよね……」
「急にどうしたんですかぁ? フルスト様」
ステイナー領の市街地、その片隅にある俺の部屋。
窓からは路地の賑わいが聞こえてくる。
俺は深く椅子に腰かけ、リムニが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
テーブルの上に広げた新聞には、『ステイナー領領主、リリィ・ステイナー ロザワル領を救う』という大見出しが付いていた。
「遠くに行きたいよな、なんか、南の島とか」
「良いですねぇ、南の島。海とか綺麗そうですぅ。私、海に行ったことないんですよぉ」
「そうなのか。じゃあ今度行ってみるか。シャペールは、海がきれいなところ知らないか?」
俺の背後に控えていたシャペールは、温和な声音で言う。
「海ですか。そうですな、ロザワル領の海――も綺麗ですが、ドラク領の海はまた別格でございます」
「ドラク領か。どこにあるんだ?」
「南方の領地にございます。ロザワル領よりもやや遠方ではありますが、漁業を中心とした産業で栄える領地ですな」
シャペールの説明を聞いて、『ブレス・オブ・ファンタジー』のゲーム中、そんなマップもあったことを思い出す。
隠しダンジョンとアイテムがいくつかあるだけで、大したイベントは――特にクーデターなんかは起こらなかったはずだ。
「そうか……行ってみるか」
この部屋に引きこもっていても、いつ仕事で呼び出されるか分からない。
こうなったら中佐にも内緒で遠出して、ゆっくり過ごそう。
よし、思い立ったが吉日。俺は椅子から立ち上がった。
「リムニ、シャペール、ドラク領に向かうぞ。旅の支度をしてくれ」
「リリィ様の補佐というお仕事はよろしいのですか?」
「う……良心は痛むが仕方ない。俺が居なくてもリリィは大丈夫だよ、中佐だっているんだし」
いや、でもリリィも大変そうだし、疲れていたみたいだったし……。屋敷に忍び込んでリリィを拉致して、一緒に連れて行くのもアリか?
そんなことを考えていた時、電話の呼び鈴がなった。
俺たちは顔を見合わせた。
こういう時に電話を掛けてくる人物は、たった一人だ。
「フルスト様ぁ……」
「い、いや、落ち着けリムニ。もしかすると間違い電話かもしれない。とりあえず出てみよう」
気は進まなかったが、俺は受話器を取った。
案の定、中佐の声が聞こえてきた。




