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転生したらチュートリアルで殺される悪役貴族だった件 ~元ニートの俺は引きこもるために努力する~  作者: 抑止旗ベル


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第1話 転生

 モニターの中では、金髪碧眼の主人公が最初の敵である「ミリアルド・ヒリュー」にとどめの一撃を放っていた。


「まったく、チュートリアルが長いのだけが難点だよな」


 俺が今プレイしているのは、大人気RPG『ブレス・オブ・ファンタジー』。中世風の世界を舞台にしたオープンワールドのこのゲームは、騎士である主人公が魅力的なヒロインや仲間たちとともに次期国王を決める戦いを勝ち抜き、最後には世界を救うという壮大なスケールで物語が展開される。


 特にヒロインの友好度によって分岐するストーリーが好評で、全ヒロインのイベントを解放した上でようやく進むことの出来るトゥルーエンドは涙なしに語れない――ということらしい。


 らしい、というのはちょうど俺が『ブレス・オブ・ファンタジー』の周回プレイ真っ最中だからだ。


 メインヒロインのルートをクリアし、サブヒロインのルートを攻略し終え、ようやく5週目のチュートリアルをプレイしている真っ最中だった。


 ここを超えればようやく俺の推しヒロイン、『リリィ・ステイナー』の攻略に取り掛かることが出来る――が、いかんせんチュートリアルが長すぎる。


 神ゲーと名高い『ブレス・オブ・ファンタジー』だが、チュートリアルだけは欠点だと言われていた。


 チュートリアルでは、王から命令を受けた主人公が悪徳貴族であるミリアルドを倒すことになる。


 戦闘の基本的な部分を習得できるチュートリアルだが、敵として立ちはだかるミリアルドは回復魔法を多用してきて、無駄に時間がかかるのだ。


 しかも、何度周回してもチュートリアルだけはスキップできないので、『ブレス・オブ・ファンタジー』最大の難所とまで言われている。


『ぐあああああっ!』


 主人公の斬撃を受けたミリアルドが、断末魔を上げながら倒れる。


 ミリアルドの居城を出た主人公たちは、ミリアルドの圧政に苦しんでいた民衆たちからの祝福の声に包まれる。


 そして王都に戻った主人公は、国王から次の王を決める戦いへ参加するよう言い渡されるのだった――。


 ふと時計を見ると深夜の2時を回っていた。


 働いていた頃なら、このくらいの時間にようやく帰宅していた。


 しかしそれももう、数日前までの話だ。


 度重なる残業や上司からのパワハラで完全にメンタルが崩壊した俺は、退職代行サービスに依頼して仕事を辞めたのだった。


 それ以来ぶっ続けで『ブレス・オブ・ファンタジー』をプレイしている。


 ゲーム画面を映し出すモニターだけが明るく光っていて、床はカップ麺やスナック菓子のゴミで埋め尽くされていた。


 カーテンは閉め切り、窓の隙間もガムテープで完全に塞いでいた。太陽の光が少しでも部屋に入ると、嫌でも外の世界のことを思い出してしまうからだ。


「二度と社会人になんかなるもんか……!」


 覚悟は決めた。


 季節は冬。吐く息は白い。安全装置もついていないような中古のボロいガスファンヒーターだけが俺にぬくもりを与えてくれる。


 数年間の社会人生活で幾らかの貯金はあった。しばらくは生きていける。貯金が無くなった後のことは考えていない。


 せっかく労働から解放されて夢の引きこもり生活を送れるようになったのだから、とにかく今は『ブレス・オブ・ファンタジー』だ。それ以外のことは、今は関係ない。現実以外の何かに没頭したかった。


 王都に戻り、ようやくプレイヤーが主人公を自由に動かせるようになる。さて、次はサブヒロインルートだから、まずは裏路地に行って―――


 あれ?


 何かおかしい。


 画面が歪んで見える。


 指先がうまくコントローラーのボタンを押せない。


 なんだか息苦しくて、頭がぼうっとする。


 まあ、ほとんど眠らずに『ブレス・オブ・ファンタジー』をプレイし続けているのだから、少しくらい身体に支障が出ることもあるよな。


 俺はコントローラーを握り直し、霞んだ目を擦りながら再び画面に向き合った。


 徐々に視界が暗くなっていく。


 どうしたんだ、俺? もしかしてこれって単なる寝不足じゃなくて――


 そんなことを思った瞬間、俺の意識は途絶えた。



◇◆◇◆




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