何もしない院長パート91 「レセプト査定委員会パート3、喘息と心不全ベータブロッカーは禁忌!」
レセプト査定委員会。
医事課の湯先が、今月の“減点項目”をスクリーンに映し出した。
「こちらの症例です。喘息の既往がある方に、心不全でβブロッカーが投与されていました」
委員会室にざわつきが走る。
「これは……査定どころか、禁忌やないか」
野上院長、珍しくまともに
普段は羊羹片手に半分寝ている野上が、珍しく背筋を伸ばした。
「これはアカンやろ。吸入治療してる患者にβブロッカーは、発作おこるで。
……循環器が見てたん? それとも呼吸器か?できればこういうのは.....科で」
場が一瞬静まった。
そのとき、総合診療科1年目の中川医師が、外野からぼそっと呟いた。
「……私です。すみません」
会議室が一気にどよめく。
■熊田と河添の反応
熊田副院長は慌ててフォローに回る。
「まあ、中川先生、初めてならしゃあないな。心不全の第一選択はβブロッカーやから、機械的に入れてまうこともある」
ところが河添診療部長は真顔で追い打ちをかけた。
「いや、“初めてだから仕方ない”は通りません。
喘息に禁忌は内科の基本中の基本です。ここは徹底して再教育を」
真面目すぎて空気を読まない河添の正論に、会議室が微妙な緊張に包まれた。
■野上院長のまとめ
沈黙の中、野上院長が再び口を開いた。
「……まあ、循環器も呼吸器も大事やけど、こういうのは総合診療医がちゃんと見たらええんちゃう?
身体ひとつに心臓も肺もひとつやけど、診療科は分かれてる。
結局まとめるんは総合診療や」
中川が深々と頭を下げた。
熊田は苦笑し、河添はまだ眉間に皺を寄せている。
だが医局員たちは、どこか救われたような気持ちで会議室をあとにした。
■会議録の末尾
《本日の野上語録》
「臓器はひとつ、診療科はバラバラ。まとめるんは総合診療や」




