何もしない院長パート90 「レセプト査定委員会パート2、前立腺肥大と抗コリン薬」
今月のレセプト査定委員会。
湯先(医事課)は眉間にしわを寄せて発表した。
「抗コリン薬の査定が続いています。特に高齢男性。背景に前立腺肥大がある場合、処方理由が明記されていないと、まとめてバッサリ査定されます」
スライドには、無慈悲な「査定△△件、減点××万円」の赤字文字。
医局内がざわついた。
■医師たちの言い分
「尿閉リスクはもちろん分かってる。ただ咳止めやCOPDにどうしても必要なケースもあるんだ」
「忙しい外来で、いちいち“前立腺肥大なし”なんてカルテに書いてられんのや」
ぼやきが相次ぐ。
だが、湯先はきっぱり。
「エビデンスと査定は別物です。理由を明記していないと、保険者は認めません」
熊田副院長も重々しく補足した。
「処方自体を否定しとるんやない。ただし“尿閉リスクなし”と一言添えれば済むことや。手間を惜しむな」
■河添の冷静な突っ込み
河添診療部長がぼそり。
「……要は、“書かないと病院が損する”ってことやろ」
会議室に失笑が広がった。
■野上院長の追加コメント
沈黙の中、野上院長がのそりと口を開いた。
「……まあ、患者さんに“前立腺はお元気ですか”って聞くのも、外来の風物詩にしたらええんちゃう?」
一瞬シーン……。
だが次の瞬間、爆笑。
「風物詩て!」
「先生方、どうせなら標準質問項目に入れましょうか?」
看護師もつい笑ってしまう始末。
こうして院内には新たな通達が回った。
『抗コリン薬処方時は、必ず前立腺肥大の有無を記載すること。
皮肉ではなく、病院の財布を守るため。』
会議録の最後には、やはり湯先の書き添えが。
《本日の野上語録》
外来の風物詩:“前立腺はお元気ですか”




