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何もしない院長 パート86「僕のお父さん」
ぼくのおとうさんは、おいしゃさんです。
ときどき、よるになってもおうちにかえってきません。
おかあさんは「しごとだから」っていいます。
でも、にちようびになると、サッカーをいっしょにしてくれます。
すごくつかれてるのに、ぼくよりはやくはしります。
ぼくのおとうさんは、くるまがだいすきです。
ちいさいくるまなのに、じてんしゃをのせたりします。
ぼくはおとうさんのくるまにのるのがだいすきです。
かぜがいっぱいはいってきて、まるでひこうきにのってるみたいだからです。
ぼくのおとうさんは、まちのおまつりにもいます。
たいこをたたいたり、はっぴをきたりします。
「おいしゃさんなのに、なんでまつりにいるの?」ってともだちにきかれました。
ぼくはいいました。
「うちのおとうさんは、なんでもできるから」
だから、ぼくのおとうさんは、かっこいいです。
ぼくもおおきくなったら、おとうさんみたいになりたいです。
作文は、ひらがなだらけの拙い字でノートに並んでいた。
丸川は、病院の当直室でこれを読み返し、誰もいないのを確かめてから、人知れず涙した。
——野上院長に見せたところ、羊羹を食べながらひと言。
「……ええんちゃう。“なんでもできるお父さん”って、最高の肩書や」




