何もしない院長パート78 「医療従事者労働環境改善対策委員会② 当直業務は夜間外来?」
■テーマ提示
委員会第2ラウンドの議題は「当直業務の扱い」。
外来診療と病棟管理の境界があいまいで、労働時間のカウントが混乱していた。
ある内科ベテランが言う。
「昔は夜間救急も当直の“ついで”だったんだ。
仮眠室にいて、呼ばれれば出て、合間に論文読んで。
だからこそ“自己研鑽”と紙一重でよかったんだ。」
若手のレジデントは反発する。
「先生、それは“待機”じゃなくて“労働”です!
夜間に来る患者さんは、救急搬送や発熱小児や、タチの悪い酔っ払い。
眠れるわけがないんです!」
■コメディカルの視点
看護師長・中山が口を挟む。
「夜間外来を“自己研鑽”扱いされると、看護師のシフトが崩壊しますよ。
外来は外来、当直は病棟管理、と切り分けて考えないと。」
衛生委員会の向山も厳しい。
「そもそも夜間外来を“教育”と称して若手に押し付けてるのが問題じゃないですか?
医師不足を補うための業務なら、それは純然たる“労働”ですよ。」
■副院長・熊田の整理
外科副院長で安全管理室長の熊田が、
「夜間外来は“救急外来”という診療行為。
当直業務は“病棟管理”。
両者は別物と切り分けるのが本筋だろう。
ただ現実は兼務してしまっている。
ならば院内規定で明確に線引きすべきだ。」
と整理する。
会議室にやっと理屈が通り始めた。
■野上の一言
場が硬直しはじめたその時、野上院長が何気なく。
「夜間外来は“夜の診療所”だろう。
なら、当直は“夜の番人”。
同じ夜でも、役目が違うってだけじゃないか。」
みんな「おお…!」と妙に納得。
■後日談
この言葉を受け、委員会は「夜間外来=診療業務」「当直=病棟管理」と定義を明文化。
シフト表が改訂され、夜間外来専従と当直担当が分けられることになった。
だが現場からは
「人が足りないのに二分割なんてどうするんだ!」
と新たな不満が噴出。
——結局、“何もしない院長”の一言が、またしても新たな課題を投げかけることになったのであった。
「当直とは“病院に泊まる”ことではない。“眠れぬ夜を共にする仲間を増やす”ことだ。患者も職員もな」
野上太郎




