なにもしない院長パート70 売店での邂逅
■ 県庁を後にした有明厚生部長
会議を終えた有明さつきは、ひとり南方総合病院にふらりと立ち寄った。
「現場を知らなければ制度は空回りする」——あの野上の言葉が頭に残っていた。
廊下を歩いていると、ふと売店の明かりに目がとまる。
■ 売店のおばちゃん登場
売店のおばちゃんは、レジ横に貼られたポスターを指差して笑っていた。
そこには太字で——
「病院経営? 放っときゃええ。風呂の残り湯と同じや、かき回すと濁る」
― 南方総合病院長 野上
と、堂々と印刷されている。
■ 意外な会話
有明(思わず苦笑)
「……まさか病院売店で野上語録を見るとは思いませんでした」
おばちゃん(うれしそうに)
「これね、患者さんもご家族も大笑いして写メ撮ってくのよ。
“うちの議員さんの演説よりわかりやすい”ってね」
有明(肩を震わせながら)
「確かに……。私たちの資料は百ページあっても、
この一行には敵いませんね」
おばちゃん(にやり)
「結局、人を動かすのは正論より “笑い” かもね」
■ 和解の余韻
二人は思わず同時に笑った。
制度の人間と現場の人間。
一瞬だけ、立場を超えて「野上語録」という共通言語でつながった。
有明は笑みを残したまま売店を後にする。
その背中に、おばちゃんの声が追いかけた。
「また寄ってってね、部長さん! 語録は毎月更新してるから!」
なぜか、ばれていた!




