何もしない院長パート68 嶌田さん、“怪しい差し入れスイーツ”の出どころを報告する
■スイーツフェアの余波
院内スイーツフェアの翌日。
野上院長は院長室で例の「謎の差し入れスイーツ」について考え込んでいた。
あれは誰が持ち込んだものか、なぜ受付横のテーブルに混ざっていたのか……。
(まあ、美味しかったから良いんだけどな)といつもの調子で済ませようとしたところ、
ノックと同時にドアが開き、嶌田さんがずいっと顔を出した。
■嶌田さんの報告
「院長先生、例の“怪しいケーキ”の件、調べときました」
「ほう?」
野上の目がきらりと光る。
「どうもね、外来の待合のボランティアさんが、“これみんなでどうぞ”って置いてったみたい。
でも、その人が言うには“近所の知り合いに作ってもらった”って。つまり、差し入れの差し入れよ」
「二重差し入れか……」
「そう。それで肝心の出所は、その知り合いの娘さんがパティシエを目指してて、試作品を持ってきたんですって」
■院長のリアクション
「なるほどなぁ。つまり、うちのスイーツフェアに新人パティシエが“飛び入り参加”したわけか」
「そういうこと」
嶌田さんは腕を組み、にやりと笑った。
「でもね、あのケーキ、職員の間では“今回いちばん美味しかった”って評判よ。
正式に呼んだスイーツより好評なのは、ちょっと笑えるわね」
野上は机をトントンと叩いて大笑いした。
「素人の差し入れがプロのスイーツを超えるとは……。病院も世の中も、案外そういうもんだな」
■事情通の底力
「で、院長先生」
嶌田さんは声をひそめた。
「その娘さん、今度市内の製菓学校に入る予定らしいから、もし院長が声をかけたら“病院公認スイーツパートナー”になってくれるかもね」
野上はまたニヤリと笑う。
「……やっぱり、うちの掃除リーダーはただ者じゃないな」




