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何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
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何もしない院長パート56: Future Hands Project 2029年度活動報告書(抜粋) NPO法人Reach Beyond 代表理事 土居 健司

この物語に登場する人物・団体はすべて架空です。ただし、思い当たる節があっても、口には出さないのが大人のマナーです。



1.事業目的

本事業は、医師を志す高校生に地域医療の現場を体験していただくことを目的とし、地域包括ケアの理念のもと、医療・介護・福祉が連携して支える現場の実際を学ぶ機会を提供するものである。

参加者には、単なる職業体験ではなく、「命と向き合う覚悟」と「医療チームの一員としての視点」を身につけることを狙いとしている。


2.実施概要

実施期間:2029年8月4日~8日(5日間)


実施場所:南方総合病院および関連施設


宿泊形式:病院宿舎にて自炊合宿


協力:南方総合病院(野上院長ほか職員)、南都大学総合診療科(荒又、雄河)


選考方法:全国の進学校よりZOOM面接等で3名を選抜


3.参加者と主な学び

① 三宮 祐(男子校出身)

心不全患者・安井氏を受け持ち、退院延期の中でラポールを形成するも、急変で死別。

「祖父の死には何も感じなかったが、安井さんは“親しい方”を失った感覚だった」と振り返る。

医療の本質が「治す」だけでなく「寄り添う時間」にあることを実感した。


② 白鳥 れいな(高校2年・脳科学研究経験あり)

糖尿病で下腿壊疽のある女性患者を担当。間食をやめられない患者の“生きる喜び”と医学的改善の狭間で葛藤。

「正しい治療と本人の人生の質をどう両立させるか」という倫理的課題に直面。

患者と共に生活上のルールを作るという合意形成を経験した。


③ 石川 桜(意志の強い性格)

圧迫骨折後リハビリ中の高齢患者と、介護に消極的な50代長男との関係に課題を認識。

精神科診療を臨床心理士から学び、「解決よりも支える営み」が現場の本質であることに気づく。

退院後の地域サロン利用提案により、患者と家族双方が納得する方向を見出した。


4.成果と考察

今年度の参加者はいずれも、


医療は治療行為にとどまらず、“その人の人生全体”を対象にする


正解のない倫理的課題に向き合う覚悟


多職種連携の中での自分の役割の自覚

をそれぞれの体験から学び取った。


特筆すべきは、3名ともに「患者本人との信頼関係ラポール」を短期間で築いた点である。

これは地域医療の現場力、そして南方総合病院の受け入れ体制の賜物である。


5.謝辞

本事業の成功は、南方総合病院・野上院長をはじめとする医療スタッフの全面的協力なくして成し得なかった。

特に、教育担当の荒又教授、雄河助教授の指導は参加者の心に深く刻まれた。

また、日々の振り返り会で事務局長中西氏、事務員城方氏、神野氏が見せた温かいサポートは、参加者にとって病院の“人の力”を体感する機会となった。


6.結び

Future Hands Projectは、「手を伸ばし、その先へ」を合言葉に続いてきた。

今年もまた、若い瞳が患者と医療者をつなぎ、私たち大人も初心を思い出す時間となった。

彼らがいつか医療者としてこの地に戻る日を、我々は心から願っている。


(追記)野上院長より:


「…まあ、ええやん。今年も“Future Hands”つながったんやし」



これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

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