何もしない院長パート55 Future Hands Project 2029 その3 高校2年生 石川桜の場合
この物語に登場する人物・団体はすべて架空です。ただし、思い当たる節があっても、口には出さないのが大人のマナーです。
合宿最終日の振り返り。石川さくらは背筋を伸ばし、真剣な表情で口を開いた。
「私が担当した中村さんは、圧迫骨折で入院していました。リハビリで家に帰れるはずなのに、同居の長男さんとの関係に不安がありました。いわゆる“80-50問題”です」
城方が首を傾げる。
「80-50…?」
荒又が説明する。
「80代の親と、50代で無職の子が同居して、介護がうまく回らないケースや」
さくらは頷き、続けた。
「本人は“家に帰りたい”と言うけれど、長男さんは介護に消極的でした。その葛藤をどう扱うか…私は精神科診療にも興味があったので、臨床心理士の岩田さんに相談しました。でも精神科診療は、私が思っていたよりもずっと“日常の延長”で、解決じゃなくて支える営みなんだと知りました」
雄河が微笑む。
「“治す”じゃなくて、“支える”か…それ、よう気づいたな」
さくらは少し照れくさそうに笑う。
「はい。中村さんには、退院後も通える地域のサロンを紹介しました。長男さんもそこなら負担が軽くなると言ってくれました」
会場に小さな拍手が起きる。
そこへ、野上院長がまた顔を出す。
「…支える医療、ええやん。ほんで、桜ちゃん、うちに就職せえへん?」
みんな笑い、振り返りは和やかに幕を閉じた。
これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。




