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何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
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何もしない院長パート48 「マツケン vs 管理栄養士、出張“栄養推論”講義バトル勃発!?」



「この人、BMIえらい低いやん。

でも“食べてへん”理由、ほんまに“食欲がない”だけか?」


マツケンのその一言が、空気を変えた。


会場は、南方総合病院・栄養指導室。

いつもは患者さんの個別指導に使う静かな部屋だが、

今日はなぜか、医師・看護師・管理栄養士・リハスタッフまで総勢20名超。


始まったのは月一恒例の「マツケン臨床推論セミナー」……の“出張版”。

主催は、何を思ったか小浦医師。

テーマは、なんと 「食べられない患者を診るとはどういうことか」。


患者ケースを紹介したのは、管理栄養士のベテラン・森口主任(通称:もりもり)。


「80歳女性、独居。肺炎後でADL低下。BMI17、体重38kg。食事摂取量6割程度……」


マツケンは、もりもり主任の説明を黙って聞いていた。


「……で、栄養ケア計画では、補助ゼリーと栄養補助飲料の追加を提案してます」

「ふむふむ」

「でも、あんまり食べてくれないんです」


——その瞬間、マツケンのスイッチが入った。


「ほな訊きますけど、その人、歯の調子は?」

「えっ? あ、下顎に義歯が……」

「それ、合ってへんのちゃう? 飲み込みにくそうにしてたん、気づいた人おる?」

「えっ、あの、いや……」


マツケンはすぐに壁のホワイトボードに走り書き。


 【食べない理由=①食欲なし?②嚥下困難?③味覚変化?④孤食・環境?】


「栄養って、“カロリー計算”ちゃうんよ。“その人が、なぜ食べへんか”のストーリーを考えるんや。

ゼリーもええけど、冷たすぎたら嚥下に負担。

部屋が暗いと食欲落ちる。声かけなかったら手つけへん。それ、全部“推論”で見抜けることやで?」


会場、シーン。


もりもり主任、眉をひそめてから——ふっと笑った。


「……そう言われると、ちょっと悔しいです」

「せやろ?」

「でも、私ら栄養士だって、“推論”しとるんですよ?

メニューひとつ変えたら、“完食率”5割上がった例もあるんです」


マツケン、にやり。


「——おもろいやん。今度は“栄養推論カンファ”やりまひょか」


その場が、爆笑と拍手で包まれた。


院長室——午後

「また、やってくれたんかいな」

野上は、お茶を啜りながら言った。

目の前では小浦が報告をしている。


「マツケン先生、管理栄養士さんと意気投合して、“食の臨床推論道場”作る言うてました」

「ええんちゃう」

「あと、“栄養評価に関するカルテ用プロンプト”をChatGPTでつくろうとか……」

「……ええんちゃう」


野上はつぶやいた。


誰かが動いて、誰かが学んで、病院がちょっとだけ良くなる——。


それでええんちゃうか。


これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

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