何もしない院長パート44「院内球技大会、院長MVP!?」
これはフィクションです。でも、“こういう人、いるよね”って思ってもらえたら、本望です。
発端は、いつもの“丸川部”のLINEグループでのひとことだった。
【丸川先生】「そろそろ本気出して球技大会やりません?」
いつもなら既読スルーが横行するこのグループ。
しかし今回は違った。
「お、いいですね!」
「ER vs 病棟チーム、実現しましょう!」
「副院長チームと事務局の“仁義なき戦い”希望」
「学生さん混ぜた“ジェネレーションマッチ”も!」
いつの間にか体育館を仮予約したのは放射線技師長兼田。
備品を手配したのはリハビリ科主任米岡で、
「参加は自由です、ただし見学は強制です」という謎のポスターが院内に貼られた。
——そして、当日。
気温28度、快晴。
南方総合病院史上初の「院内球技大会」が開催された。
プログラムはドッジボール、バレーボール、そしてドッヂビー。
中でも注目は「部長対抗バレーボールマッチ」だった。
ところが。
開会式にて、司会の熊田医師が叫んだ。
「ここでスペシャル助っ人の紹介です!」
ざわめく体育館。
入口から、白衣のまま、ゆっくりと歩いてくるのは——
「……院長!?」
野上院長だった。
「えっ、出るんすか!?」
「てか、あの人、球技やるイメージまったくないけど……」
「まさか、得意なドローン操縦とかじゃ……」
そんな声を尻目に、院長は無言で白衣を脱ぎ、バレーボールを手にとった。
試合開始。
と、その瞬間——
ドシャアアアアッ!
なんと、院長のアタックが決まった。
誰もが目を疑った。だが、次も、また次も、
ドシャア! ドシャアアア!
あまりの球威に、審判(検査科長)が「今のってルール上セーフなんすかね」と真顔でつぶやくレベル。
最終セット終了後。
スコアボードには、見事に輝く「MVP:院長(野上)」の文字。
観客席からは拍手、そして失笑、いや歓声が巻き起こる。
閉会式。
野上院長はマイクを手に、言った。
「……まあ、たまには、やってみてもええやろ」
そしてひとこと——
「この勝利は、チームプレイの勝利や。ワシだけやない」
あの“何もしない院長”が、
誰よりも汗をかき、
誰よりも球を打ち、
誰よりも、仲間を信じていた一日だった。
……なお、翌日。
筋肉痛で出勤が昼すぎになった院長の机には、
職員一同からの贈り物として、湿布20枚とプロテインバーがそっと置かれていたという。
これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。




