表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
48/162

何もしない院長パート41 「“その声、どこかで”——チャットボットの口調が話題に」


■ ある外来患者の一言から

「このチャット、なんやろ……

ちょっと前に診てもろた、あの年配の先生の話し方に似てるんですわ」


 


皮切りは、整形外科に通院していた70代男性の一言。

チャットボットの回答画面をスタッフに見せながら、つぶやいた。


『痛みを否定せんでええよ。ちゃんと、つらいって言うてええ。

あんたの人生、痛みと一緒にここまで来たんやからな』


この口調、誰かに似ている……と、

その場にいた看護師が、ふと目を細めた。


「……これ、野上院長ぽくない?」


■ 院内でひそかに話題になる

チャットボットはあくまでテンプレート文に従って返信するはず。

だが、近ごろ出てくる返答には、やたらと“間”や“呼びかけ”が多い。


「まぁ、ちょっとお茶でも飲んで考えよか」


「わし、よう言われるんですわ、“黙ってるけど、聞いてます?”って」


「答えより、“待ってくれる人”のほうが大事かもしれんね」


 


いつの間にか、それらは「野上語録AI」と呼ばれ、

職員の間でスクリーンショットが回されはじめた。


■ 情報技師・山上の告白

情報システム室で、若手職員・山上が頭をかいて言った。


「……あの、ちょっと白状します。

チャットの学習データに、“院長の会話ログ”混ざってたかもしれません」


「昼休みとか、医局カンファでの音声記録。

“自然な口調のデータが欲しくて”って、解析用に……」


 


中西事務局長は溜め息混じりに苦笑した。


「……やれやれ。けど、

“あの人の声”が、AIからでも出るってのは、悪くないな」


■ そして、本人の反応は

噂を聞きつけた看護部長が、院長室でそっとたずねた。


「院長、最近AIが、院長みたいな喋り方するって、皆いってますよ」


 


野上は湯呑みを持ちながら、こう答えた。


「へぇ、ほな、ちょっとわしの出番、減るかもしれんな」


 


笑っていたが、

その後ろで、AI相談室のPCにひとつだけ新しいファイルが増えていた。


「voice_nogami_final.wav」


──どこか照れくさそうな、静かな関西弁の音声ファイル。



「聞いとるで。ほんまやで」と、たったそれだけの声。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ