表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
20/162

何もしない院長 パート17 ― 静けさの理由 ―

この物語の登場人物は架空です。ただし、思い当たる方がいらっしゃるなら、それはあなたの病院にも奇跡が起きている証拠です。



病院機能評価(JQ)サーベイ前夜。

南方病院は、いつになく緊張感に包まれていた。


看護部、事務局、臨床検査部門、放射線、リハビリ、給食、ME……

職員たちは最終チェックに追われ、職場のあちこちにホワイトボードと付箋が飛び交っていた。


副院長・熊田は目を血走らせ、外来の導線図を再確認中。

診療部長・河添は若手医師に「リスク管理項目の逆質問対策」を徹底指導中。

看護部長・澤田は各病棟を走り回り、スタッフの表情をチェックしていた。


ところが――


「……なあ、院長室、やけに静かじゃない?」


そうつぶやいたのは、総務課の若手職員だった。


■ 院長室前、20:40

事務局長・中西がそっとノックしたが、返事はない。


中をのぞくと――


野上院長は、いつもの椅子に腰をかけたまま、目を閉じていた。

机の上には何も置かれていない。

テレビもパソコンも、電気スタンドもついていない。


まるで“電源を落とした宇宙船の艦長室”のようだった。


中西:「院長、もしかして……寝てます?」


野上は目を開けた。


「ああ。……なんや、まだ準備しとんのか?」


「“まだ”って、明日が本番ですよ!」


野上:「せやけど、あんたらもう十分やっとる。

最後の夜は、病院に“静けさ”戻したほうがええねん」


■ その夜の逸話

夜勤の看護師がそっと言った。


「サーベイの前の夜って、こんなに静かだったっけ?」


臨床工学技士がつぶやいた。


「……いや、なんか、空気が澄んでる気がする」


夜の当直医はこう言った。


「ふだんは慌ただしくて気づかんかったけど、

この病院って、案外……あったかいよな」


■ そして、サーベイ当日

JQのサーベイヤーは、午前の病棟ラウンドを終えたあと、ぽつりと言った。


「静かですね。

整いすぎて不自然、ではなく、“自然な秩序”がある。

これはなかなか、簡単にはできませんよ」


 


評価ミーティングのあと、熊田がぼそっと言った。


熊田:「院長、昨日の夜……何か、したんですか?」


野上:「いや、なんも。……ただ、“静けさ”を置いといただけや」


 


職員たちは、その意味を、

その日の帰り道になって、やっと理解しはじめた。


■ 院長室のドアに貼られていたメモ

その日、院長室のドアに、こんな付箋が貼られていた。


「“静けさ”は、“信頼”の音やで」—— のがみ

これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ