何もしない院長パート113南方のサッチャー
翌日。
飯窪科長が“鉄の女”と呼ばれたことを、熊田が何気なくナースステーションで口にした。
「院長が言ってましたよ。“南方のサッチャーやな”って」
これが発端だった。
病院内での広まり
看護師A:「サッチャーって、イギリスの首相?」
看護師B:「そうそう、“鉄の女”で有名な。飯窪先生にぴったりやん」
看護師C:「いやでも、鉄瓶でお茶ってオチもあったんでしょ?あったかい鉄、みたいな」
気づけば、ナースステーションのホワイトボードには大きく書かれていた。
今日の一言:南方のサッチャー(ぬくもり鉄瓶ver.)
地域にも波及
さらに数日後、病院売店に行くと――。
ポスターが貼られていた。
「フィナンシェ焼きたて!南方のサッチャーに負けないアツさで!」
売店のおばちゃんはウィンクしながら、
「先生の言葉、宣伝に使わせてもろたよ」
嶌田さん(掃除のおばちゃん)も負けじと、
「私らシルバーは“南方のチャーチル”やわ、どう?」
と妙な便乗。
記者クラブに顔を出した大原(地域包括ケア局)が、議員の演説原稿に“南方のサッチャー”が引用されているのを発見。
大原:「……先生、あの発言、もう止められませんよ」
野上は肩をすくめて、ひと言。
「ええんちゃう。どうせワシ、ただのお茶飲みやし」
会場はまた、笑いに包まれた。
これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。