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何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
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何もしない院長 番外編「簑浦の抗議と野上の答弁」




■ 簑浦の抗議


南方中央医療センター院長・簑浦が、副市長、医療課の杉岩、大原を呼びつけた。


「急性期をすべて南方(みなかた)総合に集める? そんなことをしたら、西地区から外科診療が消える!

外科は病院の顔であり、地域住民の安心の礎だ。

もし改革を強行するなら、うちの副院長も看護師長も、薬剤科長も、誰も残らんぞ!」


言葉は荒く、そこには西地区を背負う気迫があった。

背景には、中央設立時に深く関わった隣県・城北大学外科の大物、富田林(とんだばやし)兼男の意向が見え隠れする。


■ 行政の動き


杉岩医療課長が冷静に答える。

「簑浦先生、私たちも外科が大事なことは理解しています。ただ……市全体の収支は年々悪化し、このままでは両病院とも共倒れになりかねません」


副市長も重い口を開いた。

「市としても、どちらかを“切る”つもりはありません。急性期とケアミックス、役割分担で生き残るしかないのです」


■ 野上の答弁(珍しく雄弁)


後日、市庁舎での説明の場。

出席したのは、副市長、医療課の杉岩と大原、そして南方総合の野上院長。


いつも寡黙な野上が、珍しく雄弁に語った。


「まず、南方病院は“勝ちにいく病院”やない。“地域医療を守る病院”です。

外科を奪うんやなくて、どう分け合うかを考えているだけ。


外科診療は“病院単位”やなく、“地域単位”で考えるべきや。

市民病院で手術、中央で術後管理やリハを担う。

流れを作れば、“南方市に外科がなくなる”わけやない。


たしかに、職員の離脱リスクは重い。

でも、中央が“生活支援と回復期を担う誇りある病院”として再定義されれば、地域での役割は揺るがんはずです」


■ 会議後の空気


一瞬、会議室は静まり返った。

大原が続ける。

「院長のおっしゃる通りです。地域包括ケアの視点で、役割を再編しましょう」


副市長も深く頷いた。

「市も腹を括ります。市民に伝える言葉を、一緒に考えていきましょう」


野上は椅子に深く腰を掛け、最後にぽつり。

「……ええんちゃう、地域で支えるいう考え方で」


■ 結び


こうして「南方市に外科がなくなる」という誤解を解き、

「地域で外科を守る」という新たな言葉が、行政と病院の共通認識となっていった。

これはフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。



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