表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何にもしない病院長  作者: しゅんたろう
116/123

何もしない院長パート109「ピンピンコール」誕生の巻



(場面:院長室。城方が、分厚い書類を片手にドアをノックする)


「失礼します、院長先生。例の Lifeline+、登録まだですよね?」


Lifeline+。それは通信大手MTTが企業向けに提供する、災害時安否確認システムである。


「……ああ、あれな。めんどいんや」


「いや、めんどいじゃなくて!訓練できないと意味ないんですから!」


「訓練やろ?わしは“本番”で頑張るタイプや」


城方(深いため息):「先生、“訓練で頑張らない人は本番でも頑張れない”って、医局でネタにされてますよ」


「うっ……わかった、やってや。頼む」


(やっぱり、できんかったのね。)


(城方がスマホを取り出してサクサク登録。5分もかからず完了)


(数日後。抜き打ち訓練開始。職員の携帯に一斉メール)


「安否:元気/軽症/重症」

「来院可否:可/不可」

「フリーコメント」


ほとんどの職員:

→【元気/来院可】(コメントなし)


ところが一件だけ、異彩を放つ返信。


安否:重症

来院可否:いつになるか不明

フリーコメント:苦しい、助けて、死ぬかも。早よ、みつけて!


城方(目を見開く):「……先生!? これ、院長ですよね!?」


野上(悪びれず):「せや。ちゃんと“重症”で返さんと、テストにならんやろ?」


「いや普通“重症”なんてわざわざ入れないですよ!」


「だって“訓練”やろ?システムが本気で反応するか、試さんと意味ないやん」


城方(絶句しつつも内心納得):「……あ、いつものおふざけじゃなくて、本気でテストしてたんですね」


「そうや。“ええんちゃう”で登録は済むけど、“死ぬかも”って書いてちゃんとアラート鳴らせたら、本物や」


(その後の反省会)


野上:「でもな、“Lifeline+”って名前、ちょっと固すぎひん?緊急のときほど、余裕あった方がええやろ」


城方(少し考えて):「じゃあ……“ピンピンコール”とかどうです?“ぴんぴん”してるか確認するってことで」


「おっ、ええなあ! 城方くん、いいセンスやん。忘れへんし、縁起もええ。ええんちゃう」


(その場に居合わせた中西事務局長が苦笑い)


中西:「……市にどう説明するんですかね、その名前」


「ええやん。“生きてるかどうか確認する”んやろ?だったら“ピンピンコール”。覚えやすいやろ」


(なぜか妙に説得力があり、職員たちに笑いが広がる)



翌日、病院内の掲示板には大きく貼り出されていた。


「次回災害訓練は ”ピンピンコール”(旧呼称 lifeline+) を使います!」


(売店おばちゃん):「……先生、やっぱり名前のセンスだけは天才やわ」


(命名は城方くんやけどな! 野上は飄々と微笑みながら羊羹をかじるのであった)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ