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ヒロインのパンツは何色ですか? ~乙女ゲーによくあるターニングポイント前夜の話~

作者: 3ツ月 葵

 私は悩んでいる。

 ひょっとしたら人生一ってぐらい悩んでいる。

 なぜならば――


「ヒロインのパンツって何色だ?」


――という悩みを抱えているからに他ならない。

 とっても真剣に。


 これはつい最近、いわゆる異世界と呼ばれる所に私が転生してしまった事に端を発する。

 転生した異世界は私の見知った乙女ゲーの世界であり、私はヒロインという役柄(ポジション)の貴族令嬢。

 どのルートを選んでも悲劇しか待っていない悪役令嬢でなかった事は幸いではあったが……。

 もう既に重要な場面の所にまで来てしまっているのでどうとも動きようがないのが現状だ。


「私好みでいくと――だめだよな~ぁ」


 純粋(ピュア)という言葉をそのまま形にしたようなこのキャラクターの取り扱いについては慎重にしなければならないと、かれこれ約一時間は唸っているのだった。

 ここで選択を一歩間違えば悪役令嬢と似た様な事にもなりかねない可能性だってあるからだ。

 その一つがこれ――パンツ問題である。


「ここはやはり定番の白……か? だがピンクというのも可愛らしく――」


 中世ヨーロッパ風の異世界だからか、前世に比べると服装や下着はいかにも中世っぽい様なレトロなデザインではあるし色味も少ない。

 下着だってTバックやブラジャー等と種類があった前世ほどはない。

 とはいえ前世で男であった私には女性用下着の全部を把握しているわけがなく、そこの細かいところまでは知らないのだが。


 この世界での女性用下着――パンツは二種類存在する。

 ロングか、ショートか……だ。

 ロングの物はドロワーズと呼ばれ、前世では古めかしい絵の中でちょいちょい見たことのあるあれだ。

 そして膝辺りまで丈があるからか、使っているのはそれなりに年が上の人ばかりの代物である。

 一方でショートの方はといえば、かぼちゃパンツを思い出してみるとよく分かると思う。

 あれが最も近く、子供や若い人は皆こっちを愛用している。


「色気がない!」


 それが私のストレートな印象だ。

 だがしかし、明日にはこれに関する大事な場面が待ち構えているのだ。


 明日は貴族学園に入学してから最初の学園祭最終日。

 物寂しくなった(ヒロイン)は人のあまり通らない所にある木に登って太い枝に座り、上から見下ろす。

 そこへ攻略対象であり悪役令嬢の婚約者でもある第二王子が登場。

 不意に声を掛けられた私は下へと落ち、第二王子を下敷きにしてしまう。


 その際に第二王子の顔がスカートの中へと入ってしまい、サッとよけた私を見て起き上がりながらフッと笑って「いつも強気でお転婆な君でも、こんな可愛らしい色の下着を身につけるのだな」と言われるのだ。

 そこでヒロインが「私だって女の子ですもの!」と顔を真っ赤にし、照れながら怒る。

 第二王子は「ハハッ。悪い、悪い。なんとなく普段の君のイメージから黒だとかと思っていたのでね」と言って頭を撫でるのだ。

 ヒロインはそこで「もうっ!」と第二王子の胸にコツンと頭を預け、顔を埋める。

 そうしてまた少し距離が縮まるという話で……。


「さぁ――何色が正解だ?」


 あの第二王子に『可愛い』と言ってもらえるような色のパンツを選ばなければ、もしかしたら私の人生は破綻するかもしれない。

 ベッドの上に散らかして広げた色とりどりのパンツを眺め、私は長々とあーでもないこーでもないと呟きながら苦悶していた。

 明日は決戦の日。

 その為に今日、私の夜は更けていくのだった……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] パンツとは妄想ではなく、現実と仮想を示すために実在する、スパイスではなく料理ではなく、動物の毛並みの良さを表すために重要な生き様が現れる要素だとも語られている。 [気になる点] なぜヒロイ…
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