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ちょっと今から牛魔王ぶっ殺してくるわ【限定LIVE配信】 その2


「何でこいついるの??」

『は? 戦隊というかヒーローはまだ突入してないはずなんじゃが』

『極秘作戦??』

『いや、たった今中級が到着したっぽい』

『中級集めたところでなあ』

『階級の差はそのまま戦闘レベルの差に直結するからね。よほど相性が良くないと死ぞ』

『まあヒーローが減ってくれるなら助かるけどな』

『減らないんだよなあ、あいつらすぐ増えるから』

『わかる。一代倒しても次の世代が出てくるんやで』

『↑自分、泣いていいっすか。(ノД`)』

『生命力はゴキブリ以上だからなあいつら』

『確実に殺したはずなのに最速で次の日にはケロッとしてた事例もあったらしいぞ@諜報員』

『なにそれ怖い』


 困惑する彼女らに気づかず、彼らは戦い始める。

 スターレッドは右腕の赤い獅子の顔をモチーフにした自身の専用装備“スターガントレッド”を用いた近接格闘を得意とし、仮面の少女が放つ呪符を殴り落としていく。


『うわぁ、器用に打ち落としてるよこいつ』

『何こいつ化けもんか』

『鍛えてるヒーローならこのくらい余裕やろ』

『たしかレッドは格闘家って話聞いたことあるから、それちゃう?』

『前に殴られたけど死ぬほど痛かったぞ』

「腹立つけど実力はあるのよね……てかあの仮面の女誰よ」


 見飽きたスターレッドよりも見知らぬ仮面の少女に目をやる彼女。

 顔はわからないが、髪は黒、身体に特異な特徴はなし。傍から見れば普通の人間のよう。

 中華剣に呪符、そして道服を纏っていることから中国の道士か仙人系の怪人かなとあたりをつける。


『知らんし』

『しらんけど仮面の下は可愛い顔してそう』

『わかる』

『仮面少女は美少女って相場が決まってるもんな』

『みな大切な事を忘れてはいまいか? 何を隠そう>>1も仮面少女なんだぞ』

『あっ』

『萎えたわ』

『なんてことを言うんだお前_| ̄|○』

『もうあの子が狂犬にしか見えたくなったやんけ』

「どういう意味だこら」


 話題は仮面少女の素顔に移りかけたが同じ仮面少女だった彼女の事が話に上がると皆さっさとはうってかわったて意気消沈していった。

 事実なのであるから仕方のないことなのだが、自覚がない彼女からして見れば謂れのない誹謗中傷に切れかけるが、その前に流れたコメントが目に入る。


『話戻すけど、多分あいつ玉面公主じゃね? 狐の面つけてて牛魔王の仲間ってそいつしか思い浮かばん@諜報員』


 玉面公主。その名は彼女も知っていた。

 牛魔王の愛人で、符術を使う怪人だったはずだ。

 しかし。


「にしては若くない? 私が知ってる玉面公主って外見年齢が二十代後半のはずなんだけど」


 もう一度仮面の女子を観察するが、どう見ても十代半ば程度の年齢にしか見えない。

 明らかに彼女が前職場で見たデータとは異なっていた。


『あれ? >>1知らんの? 玉面公主って確かにちょっと前に死んだぞ』

『表沙汰にはなってないけど、ちょい前に三蔵たちとのゴタゴタの時に、豚の流れ弾くらって死んだ』


 三蔵一派とは中国で活躍する上級ヒーローチームのことである。

 リーダーの玄奘三蔵法師を中心として“斉天大聖"孫悟空、“捲簾大将(けんれんたいしょう)”沙悟浄、“天蓬元帥(てんぽうげんすい)“猪八戒、”八部天龍(はちぶてんりゅう)“玉龍の五人のメンバーから構成されている。

 その実力たるや中国で知らぬ人はいない程であり、少人数でありながら何度も牛魔王の属する極大魔王を退けているほどである。


「そうなんだ……」


 そう言えば最後に牛魔王一派のデータを見たのは三ヶ月くらい前だったと思い出す。

 さして重要でもなく興味も惹かれなかったため、あまり確認することはなかったのだ。

 こんなことならもう少し目を通しとくんだったと少し後悔するが、所詮は結果論と割り切って目の前の二人に集中する。


「さてどうしよまじで。このまま不意打ちしてもいいけど、あいつら妙に勘が鋭いから普通に避けられるきがするなぁ……」

『わかる』

『それな』 

『前に500メートル先から狙撃したら避けられたんじゃが』

「それに、私近接タイプとは相性悪いし。できる限り戦闘は避けたいのよね……」


 既に星辰戦隊二人とサイバーガールを下した彼女ではあるが、それでも苦手な相手というものは存在する。

 中級レベル以下のヒーローや怪人相手ならば彼女のバリアを破ることができず、距離を詰められるか飛んできた斬撃をくらうのが関の山である。

 しかし、それは火器に頼るヒーローや実力の足りない輩の話。

 上級並の攻撃力を持つ者や、中級上位かつ近接攻撃主体の相手ならば彼女の守りを突破することができるのである。

 その点、スターレッドは十二分に条件を満たしていた。

 右腕のスターガントレットを主体とした近接格闘術、上級にも匹敵する必殺技の威力。

 故に彼女は迷っていたのだ。

 偶に突拍子もない行動を取ることもあるが、それは彼女の中で彼女なりの計算を行った上での行動なのである。


『とりま玉面公主だけでもやってみる?』

「いや、その必要はないと思う」


 彼女はカメラをズームして、玉面公主を集中して映しだす。


「これで見えると思うけど、僅かに呼吸が荒れ始めてるし、所々汗も滲んでる。カメラ越しだと伝わらないけど、徐々に攻撃時のエネルギー量も落ちてきてるし、そう長くはないわ」

『いやわからんし(^_^;)』

『あー、確かに薄っすら服がすけて見える、かも?』

『ガタッ』

『いやわかるかぁ!!』

『百歩譲って汗は見えても呼吸は無理ですはい』

『ガタッ(^u^)』

『だめじゃ、ワイのゴミスマホじゃ解像度がががが』

『無駄に良い>>1のカメラワークのおかげでチャント写ってはいるけど、凝視してると酔う@諜報員』

『こんな事態に備えてこのサイトのプレミア会員で、高スペックPCで見ているワイは勝ち組(*´艸`*)』

『なにそれ無駄に羨ましい』

『ワイもやな、しかも録画もしてるぜ』

『じまで?!』

『後で映像プリーズ』

『スレの方にアップはよ、はよ(;゜∀゜)=3ハァハァ』

『い や で す (*´艸`*) おめーらはそこで呻いてろwww』

『あん?』

『やんのかこら(`Д´#)』

『絶対ぶっ殺す。絶対にだ』

『この恨み晴らさでおくべきか』

『クラックしてでも手に入れる』

『ハッカーさーん! ハッカーさんは何処!!?』

「いや、こんなしょうもない事であの人の呼ぶなし」


 何処までもマイペースな視聴者たちに呆れつつ、あの二人の戦いを見守る彼女。

 喉が渇いた彼女がスマホを置いて飲み物を取りに行って戻ってきた直後、事態は動いた。


「レッド・ブロウォ!!」


 弾幕のように迫る呪符を掻い潜り、スターレッドの拳が玉面公主の腹部へと叩き込まれた。

 右拳から溢れる炎は瞬く間にその煌めきを増し、まるで流星のように玉面公主を吹き飛ばした。


「きゃああああああ!?」


 なすすべもなく殴り飛ばされ、そのままホテル廊下の内壁へと激突した。

 数秒そのまま内壁にめり込んだかと思えば、重力に従いうつ伏せに倒れ伏した。


『やったか!?』

『ああ、モロに腹にくらったんだ。もう立ち上がれはしまい』

『所詮玉面公主など我ら牛魔王一派の内では一番……二番目の雑魚よ』

『この程度で牛魔王一派を名乗ろうとはとんだ恥さらしよのうぅ(エコー)』

『↑お前ら打ち合わせでもしてんの?@諜報員』

『急に小芝居始まって草』

『レッドと結構接戦だったけど、意外と強かったなあいつ』

『そう? 私は逆にレッドが弱く感じたけど』

『てか決着ついちゃったけど、どうすんの>>1?』

「そうね……()()()()()()()()あいつ相手には仕掛けたくないし、ここはスルー安定でしょ」

『ま?』

『あれで本気でないと??』

『あぁどうりで』

『下級戦闘員のわい、全く理解できぬ模様』

『ワイはちゃんと理解出来てるけど>>1のチャネルだしでしゃばるマネはしないぞ(^_^;)』

『ワイも\(^o^)/』

『せやな、なので解説はよ』

(絶対ウソだ)


 そう思ってはいたが、渋々彼女は今観察したことを掻い摘んで話し出す。


「使った必殺技がレッド・ブロウだったからね。殺す気なら一番威力のあるレッド・レオを使ってたはず。レッド・ブロウは確かに威力はあるけどレッド自身が使い慣れてるから相手を気絶させる時とか無力化させる時によく使うのよね。さっきに何か逃げてほしい的なこと話してたし星辰戦隊の中でも特にお優しいレッド様は相手に情でも生えたんじゃないの。知らんけど」


 そうやって冷静を装ってやや早口目に話し出すが、最後のあたりに彼への敵意が隠しきれていない。

 長年敗北し続けたからか、それとも怪人としての心が彼らを許せないのか、彼女は愛や勇気といった物が理解できなくなっていた。

 彼女からして見れば愛や勇気、正義や希望などは嘘偽りでしかなく、それらを謳うヒーローどもを見ると言いようにもない怒りが胸の内から湧き出してくるのだ。

 特に星辰戦隊の中でもスターレッドはそれらの単語を口にすることが多く、精神面においても彼女は彼を苦手としていた。

 だからだろうか、こんな些細なミスを犯してしまったのは。


『詳しいね』

『流石』

『腐れ縁ってやつやね』

『ここまでくるもう()()()()()ってレベルやな』

『お、()()()()()()wwww』


 普通に考えて、これは冗談だと誰もが理解できる。

 怪人とヒーローが結婚できるはずもないし、彼女にもそのつもりがないことも皆知っている。

 ただのありふれたコメントであり、彼女も悪態をつきながら流すものだと思っていた。


「今何て言った」


 今でで一番凄みの効いた、低く威圧感のある声が配信を通じて視聴者へと届く。

 大半の視聴者たちは自分のことではないのは理解していたのだが、まるで背後から首筋に鋭い刃物でも押し当てられているかのような錯覚に陥った。

 書き込むことも配信を見ていたことも忘れ、首筋に手をやるが、そこには当然何もない。

 確かに冷たい金属に触れられた感触があった。

 だがそれは彼女の言葉に込められた殺意にあてられた彼らが創り出した錯覚であった。

 まずい。誰もがそう思った。

 誰の書き込みかはわからないが、そのどれかが彼女の逆鱗に触れてしまったのだと分かってしまった。

 一秒一秒が長く感じる。

 彼女が画面越しに彼らに危害を加えられるわけがないのだが、彼らの大半は本気で焦っていた。

 しかし、救いの手は予想外の所から齎された。


「誰だ!!」


 スターレッドの声が響く。

 彼は振り向き、こちらを警戒しているように見える。


「……やらかした。あほか私は」


 スターレッドが振り向く直前に彼の動きを察した彼女は直ぐに部屋の中へ姿を隠していた。

 そして同時に、なぜ彼が彼女の存在を察することができたのか直ぐに理解できた。

 彼女の殺気だ。

 抑えきれずにに溢れ出た殺意が、スターレッドに彼女の存在を知らせてしまったのだ。


「さーて、どうしようかな?」


 思考を切り替える。先程の失言よりも、今はこの場を乗り切ることを考える。

 まず目を閉じて集中。周囲にいるのは気絶している玉面公主とこっちに近づいてきてるスターレッドの二人。

 二階ほど下まで気配はない。

 取り合え他に敵はいない。じゃあ何をする?

 死んだフリ。ダメ。今変装も何もしてないから顔見られる。

 正面突破。相性の差で無理。てか牛魔王控えてるのに余計な戦闘したくない。

 そこのバラバラ死体で誤魔化す。無理だと思うなぁ……。だってもう血みどろだし、ゴミにしかならない。


「…………あ。そう言えば…………よし、行けそう」


 彼女は言うと、音も無く右腕にエネルギーの刃を作り出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうゴキブリみたいな感覚なのかなあ
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