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72話:狂気との遭遇01

 

 暖かな感触がソレナの手に感じる。


 意志が消えようとする彼女に、それは何なのかもう分からない。


 だが、それは手放してはいけない想い。



 だから離さない。


 例え闇の底で溺死しても、その温もりは決して手放なさい。



 ――――貴女は何を望んでいるのですか



 それは自分に問いかける言葉


 だがソレナには、もうそれを理解出来る機能(こころ)はない。


 故に返事をする様に暖かななにかを胸に抱く。



 それと共に眠るように……


 しかし同時に去来する思いもあった。


 このままでいいのかと……




 ――――『待っているね……ソレナちゃん』



 その言葉は誰が言ったのか、残ったのはその言葉



 ――――貴女の望みは



 再び響く言葉

 このまま眠ることが私の望みなのか……



 ――――あの頃の様に


 ――――もし、取り返せるのなら



(わたくし)の望みはやり直すことです。 でも、それは過去をやり直すことではありません」



 蘇る彼女の一つの意志、それは消えようとしていた彼女の人格を再びカタチ取る。



「彼女に伝えたい……”あの頃の様に”と、そしてもう一度……」



 怖い……酷いことをした自分に愛想を尽かしているかも知れない。


 でも……それでも会いたい、話をしたい、そして



「どんな結末でもカタチであっても、(わたくし)は未来が欲しい」


 自分の心に住まう黒い想い。


 ヴァハが指摘した通りだ、自分の心は常に憎悪と憎しみが燻っていた。



 でも(わたくし)にあるのはそれだけではない。


 私を愛してくれたお爺様、両親、兄として共に居てくれたレグルス、そして



(アリィ)



 先のことは分からない。


 結末は悲しい未来しかないのかも知れない。



「それでも何度でもやり直します。停滞ではなく、戻るのではなく、先を歩きたい」



 手に残っていた暖かな光


 光はソレイナがよく知っている姿をカタチ取る。



「まさか……精霊女王(アリアンロッド)様ですか……」



 その姿はいつも祈りを捧げる教団のタペストリーと同じ姿をした女性であった。



『私は御方の一部……水面に映る鏡……《水鏡》と申します』



 ソレイナはその名前に心当たりがあった。



 祖父より教団の至宝《精霊の弓》を下賜された時の話だ。



『その弓の真の名は《水鏡》、創造神が生まれし世界の言葉で水に映る鏡を意味する言葉だと言うことじゃ』



「つまり貴女様は(わたくし)が持っていた《精霊の弓》の化身だと」



 ソレイナのその言葉に頷く《水鏡》


(精霊女王の一部と言う話は、精界で生まれたと聞いていますから理解できますが……うーん……調子が狂いますわ)


 いきなり自分が祈りを捧げている者が、一部だと言え目の前に現れれば妙な気分になるのは仕方ない。



『手にされてから、貴女のことはずっと見ておりました』



 いきなりの告白の様な言い方にソレイナはドキリとしてしまう。


 これが殿方だったなら一瞬で恋に落ちるだろが



(自分が女でよかったですわ)



「見ていたと言う割には、今まで伝承に伝わる様な力は発揮されておりませんでしたが」



 事実、見た目と遜色された話ばかりで武器としても大した性能はなかったのだ。


 唯一役に立ったのは創造神の影が降臨した、あの儀式の時のみである。



(アリィ)


 儀式と言う単語であの時のアリアの姿を思い出すソレイナ。



(嫉妬と言うのは認めてしまえば尊敬になるとお爺様は仰っていましたけど……その通りでしたわね)



『私は鏡ですから、手にする者の光が無ければ輝くことは出来ないのです』



「光?」


 抽象的は表現でイマイチよく分からないソレイナは聞き返す。


 まさか魔術の《(ライト)》のことではあるまい。



『陽光が無ければ月が輝けない様に、私は使い手を映す鏡……あの時の貴女には私が映し出せる光はなかった』


『ですが今の貴女には一筋の光が見えます。深い闇の中に僅かに光る美しい光が……』


 自分が光輝く純白の乙女とまでとは自惚れていないが、深い闇と言うあんまりな言葉に苦笑いを浮かべる。


『光のみ溢れていても、闇だけであっても駄目なのです。深き闇の中で光る輝きを持つ者こそ、我が鏡が映し出すもの』



 そう言って精霊女王(アリアンロッド)の姿をした精霊の弓《水鏡》はソレイナに手を差し出す。



『微力ですが、貴女の望む未来の道を照らす、お手伝いをさせてください』







 天を貫くその威力。


 天に放たれし矢は自らに還ると言う言葉があるが、その言葉を嘲笑うかの様に光の矢は天を貫いた。



(一体あれは何だ。神器なのか……いや、恐らくこの世界で生み出されたそれに準ずるものなのか)



 ヴァハは()()()()の姿で、神々しいまでに輝く弓を持ったその姿に混乱する。



(何故消滅しなかった。そもそも何故ソレイナの姿に!!)



 ヴァハの内心など関係ないのか、ソレイナは弓に光の矢を再び番えヴァハを狙う。


 一の矢はその威力の大きさに、上に逸れ天に昇ったのだろう。


 だがこの二の矢は確実にヴァハを射抜く様に構える。



「《魔弾(エナジーボルト)》よ矢となれ!」



 ソレイナは《魔弾(エナジーボルト)》の魔術を一の矢に続き、二の矢として番える。


 番えられた二の矢の《魔弾(エナジーボルト)》は本来の初級魔術とは考えられない膨大な力を宿す。


 最初の矢は無我夢中で放ったものだったが、二の矢を番えたソレイナにはこの弓の特性を僅かだが理解していた。



 《多重乗算(オーバーブースト)


 魔術は上限がありその力を超えることは出来ない。


 その為に存在するのが、魔術を超えた現象を発現させる魔法陣形である。


 だが、もう一つ魔術を超える手段をソレイナは知っていた。


 祖父クラリオスが使いし《魔導式:多重乗算(オーバーブースト)》と言う魔導式だ。


 これは世界の法則に刻まれた《導式:多層空間》と言われるもので、魔術・魔法陣形を使用した際、現象の屈折により僅かに空間に空白が出来る現象だった。


 《導式:多層空間》にはその空白を修復する機能があるのだが、その空白を修復する瞬間のエネルギーは考えもつかない巨大な力が働いているのを祖父は発見した。


 《魔導式:多重乗算》はその爆発的な《修正力》のエネルギーを利用することによって、魔術の暴走とも言われる様な力を行使する自殺行為とも言える技術であったが、祖父クラリオスは《魔導式》でそれを制御し大陸最強とも言われる魔導師と呼ばれていた。


 《魔導式》が使用出来ないソレイナ自身にはそれは不可能ではあるが、それを可能にしたのが手にした《精霊の弓》であった。


 弓を通してソレイナの脳裏に《導式:多層空間》の流れの《式》が雪崩れ込む様に流れる。


 その《修正力》の《式》は膨大で、魔に触れたことのない常人であれば狂死するほどの情報量であろう。



(でも、この程度の《式》ならなんとか!!)


 ソレイナは二の矢を放つ。


 矢はヴァハの目前に一瞬止まるが、矢の威力が勝ったのだろう、そのままヴァハを貫く。



「当たりましたわ!」


 射抜かれたヴァハが消えるが、《矢避け》と《瞬間転移》の魔術で逃れたのだとソレイナは瞬時に判断した。



(ハガル)



 《瞬間転移》でソレイナから逃れたヴァハは、ソレイナの周囲に無数の円錐の雷弾を出現させる。



穿(つらぬ)け」



 ソレイナを瞬時に肉塊に変え、灼き尽くすほどの無数の雷錐が襲うが……



「《雷感知》、《潜在能力開放Ⅰ》……」



 ソレイナは瞬時に発動出来る二つの付与魔術を己にかける。


 一つは《雷感知》、その仕組みは先走りたる《先駆放電》を感知する魔術であり、音速系の奥義の体術を身に着けた者ならば雷速すらそれで避けられる。


 もう一つが《潜在能力解放Ⅰ》、《潜在能力解放Ⅲ》に比べると上昇力に劣るが反動も少なく、瞬時に使用出来るのが強みであった。


 いくつかの雷撃の錐がソレイナを穿(つらぬ)くかに思えたが、彼女は数発を《潜在能力開放》で強化した雷速級の体術で躱す。


 だが体術で回避出来るのが数発で限界と見抜いたヴァハは、全包囲躱す芸当など出来ぬほどの雷錐をソレイナに一斉に放つ。


 第一波の雷錐を躱したソレイナであったが、第二波は攻め手を変えて襲って来る。


 ヴァハの第二波に対し、ソレイナは精霊の弓を矢も番えず弓の弦を引き、美しい音柄を立てた。



 それは瞬時の出来事であった。


 ヴァハの目に雷錐はソレイナの全身に突き刺さる様に見えたが、手応えを感じない。


 全て躱されたと理解せざる得なかった。



 《瞬間転移(ブリンク)》と言う名の魔術がある。


 聖騎士のクラスにも同名のスキルがあるが、《瞬間転移(ブリンク)》そのものは魔術においては秘術であり、それは一歩の距離を転移すると言う、接近戦を苦手とする魔術師が緊急回避時に使用する魔術であった。


 ソレイナは精霊の弓の魔術拡大の力を、周囲の()()に作用させ、通常の空間移動ではなく一時的に自らを位相空間に身に委ね、雷錐を躱したのだ。


 一括りにすれば瞬間転移で攻撃を躱したと言えるのだが、《雷感知》で攻撃を察知し身体強化で躱す体術、転移の計算を行うその頭脳、失敗を恐れない胆力、ソレイナの闘いの選択肢を拡げた手にする弓。



(何故だ!何故こうも都合良く!!)



 だがヴァハにそれ以上思考する時はない。


 雷錐の猛威を凌いだソレイナはお返しとばかりに精霊の弓から三の矢を番え……放った!!


 一直線に向かってくる凄まじい威力の《魔弾(エナジーボルト)


 だが、彼女にしてみれば威力は脅威だが対処出来ないものではない。



 攻撃が一直線過ぎるのだ。


 如何に強力な攻撃であっても当たらなければどうと言うことはない。


(エオロ)


 発動するのは《矢返し》の魔文(ルーン)


 二の矢の攻撃は《矢避け》の加護で躱そうとしたが、術の強度が矢の威力を下回っていたので完全に逸らすことが出来なかった。


 今回は先の威力を基準にし“返し”の魔術を発現させたのだ。


 だが矢はヴァハに届く前に地面に墜ちる。


 丁度ヴァハの目前の地面を“爆ぜさせる”為に



 ソレイナがヴァハの記憶から自己流で解析した魔文(ルーン)は、強力な術式ではあるが完璧なものではない。


 それは確定させた事象を顕現出来る特性にあり、《魔文(ルーン)》に秘められた事象を空間内で確定、発現させる魔術。


 それが《魔文(ルーン)》の力である。


 文字に秘められた世界の強制力は強いが、それを外れさせればその力は何の効力もない。


 故に、馬鹿正直にソレイナが三の矢を二の矢と同じものを放てば《魔文(ルーン)》で対策、最悪跳ね返される危険があった。


 故に二の矢をオトリに使い、三の矢で《多重乗算(オーバーブースト)》を使用していない偽物(フェイク)の《魔弾(エナジーボルト)》を放ち、トリッキーな動きをさせた。


 魔文(ルーン)の弱点は確定外の事象には弱い。


 そして《魔弾(エナジーボルト)》に込めた魔術は《石礫(ストーンブラスト)》の魔術であり、墜ちた箇所から無数の(つぶて)がヴァハに襲い掛かる。


「無駄なことを……」


 しかしその(つぶて)でダメージを負った様には見えない。



 《高位次元神体》



 人であるソレイナには、神である高次元生命体にダメージを与えることは出来ない。



 しかし……


(相手が《高位次元神体》であっても、この弓ならそれを突破出来るはず!)


 精霊の弓に《魔弾(エナジーボルト)》以外の魔術を込めれればよかったのだが、《多重乗算(オーバーブースト)》の難解な術式演算に付いて行くのが精一杯で、基本魔術の《魔弾(エナジーボルト)》を番えるのがやっとの有様だった。



(ならばその様に闘えばいいこと!!)


 ソレイナは《石礫(ストーンブラスト)》の砂埃が晴れる前に、《速度強化(クイック)》の魔術を自らに付与しヴァハに接近しようとするが



(ニード)



 駆けるソレイナに一斉に襲い掛かるのは魔術で生み出された無数の短剣


 持ち手は居ない無垢の刃であるが、その剣閃は確かなもので五体の急所を的確に薙いで来る。



 《 (ニード) 》の事象は打破する力。


(それなら!!)



 ソレイナは弓の弦を再び鳴らし、自らの幻影を数体出現させる。



 《高位(パーフェクト)幻像(イリュージョン)


 本来なら工程が複雑な魔術でソレイナでも急造なら一体が限界の魔術であるが、精霊の弓の力で六体の数を瞬時に作りだした。


 この幻像は五感を騙し得る高位のもので、ヴァハと言えど見破るのなら高位の看破の術を使わなければならないだろう。


 だがそんな隙はない為に《 (ニード) 》の短剣は幻像を含めた全てのソレイナに襲い掛かった。


 最初の刃が一体のソレイナの腹部に突き刺さり、その場に倒れこむ。






(幻像の強度が強いからか、消すことは出来ないか……)


 しかも、この精神世界においてはソレイナは血が出ない。


 この精神世界は魔力が支配する世界である為に、血の代わりに魔力が失われる為だった。



 二体目のソレイナは見事な回避を見せるが、背後からの短剣は躱せずに背中に突き刺さり倒れる。


 そして三体目、四体目、五体目と凶刃によって倒れた。



 残るは二体……


 距離はあと五歩ほどで接敵される。.

 故に体術で対応しなければならないが……


(どちらが本物だ……?)


 しかし焦りはない。


 接近戦は姉や妹に比べて苦手ではあるが、有効打のない人間の少女、それに最大の脅威はその手にしている弓であり、ヴァハからすれば接近されるよりも超遠距離から弓で狙撃されることの方がより脅威であった。



「《 (ラグ) 》 」



 一人目のソレイナが弓を振りかぶりヴァハに叩きつけ様とする。


 弓には《魔力付与(エンチャントウエポン)》で魔力強化されており、まともに食らえばダメージは負うだろう。


 だが、ヴァハは振りかぶられた弓を紙一重で躱す。


 その動きは達人が一寸見切りで躱すかの如くであり、魔文(ルーン)の力であった。


 《 (ラグ) 》の事象は予知と流動である。


 それは自らに対する攻撃を予知し、対応する戦技を発現させる魔文(ルーン)であった。


 攻撃が躱されたことで、体勢が崩れた一人目のソレイナに《 (ニード) 》の短剣の一本が深々と突き刺さる。



 倒れるソレイナ


「児戯は終わりだ」


 最後に残ったソレイナは苦し紛れに弓に《魔弾(エナジーボルト)》を番えようとするが……


 残った《 (ニード) 》の()()()()がソレイナの全身に突き刺さり倒れ伏す。




「……児戯ではありません」


 それは下……


 ヴァハの足元からだった。


 無傷のソレイナが精霊の弓に《魔弾(エナジーボルト)》を番えている姿に、ヴァハは即座に守りの魔文(ルーン)を発現させようとするが


(遅い!!)



(わたくし)の勝ちです!!」



 ヴァハが防御を行う前にソレイナの精霊の弓から放たれた《魔弾(エナジーボルト)》はヴァハを飲み込み粉々に吹き飛ばした。





(お、終わりましたわ……)


 精霊の弓によって増幅された魔術は強力無比な力であったが、最大の欠点はその扱い辛さにあった。


 現状ソレイナには番えての魔術発動には大きく制限がかかり、基本の攻撃魔術である《魔弾(エナジーボルト)》しか発動することが出来ない。


 《火球(ファイアーボール)》などの《魔弾(エナジーボルト)》をアレンジする術式を行えば、制御できずに自身が火達磨になることになったであろう。


 だからと言って普通に《魔弾(エナジーボルト)》を、それも一直線に射るだけではヴァハに当てるのは不可能であった。


 故にソレイナは罠を仕掛けたのだ。


 作戦名は『馬鹿めそれは本体だ』だった。

 それを昔に命名したのはレグルスだ。


 《高位(パーフェクト)幻像(イリュージョン)》で、分身をして接敵したソレイナであったが、最初に一撃を喰らったのがソレイナの本体だった。


 胴体に被膜式の障壁をガチガチに固めていたので、なんとか貫通は避け、他の分身がヴァハの気を引き全部倒され油断した所で《自己加速(ヘイスト)》で一気に距離を詰め、増幅した《魔弾(エナジーボルト)》の矢を放ったのだった。



(さて、あとはどうやって帰るかですが……)


 ヴァハを倒せば帰れるのかと思ったが、どうやらそう上手く事は行かない様だ。


 ソレイナは何故この世界……自らの精神世界に来たか、理由を思い出していた。


 精霊クルラホーンに飲まされた酒の効果だったのだのは間違いないだろう。


 だが成果はあった。


 完全ではないが個人で《高位次元神体》に対抗する手段は得た


 もっとも、この弓の力を自分が引き出せればだが……



 どうやって元の世界に戻るか分からないので、とりあえず祖父の元に向かってみようかと思い、立ち去ろうとしたが……



(……アリィ……)



 この世界の人物はソレイナの記憶で再現された、想像の世界の一部だ。


 故にこの世界のアリィが死んだとしても現実には何の影響もない。


 でも、もうこんな思いは嫌だった。


 必ず助けて見せる。と彼女が決意を新たにしたところで……



 ―――――周囲の音が消えた



 それは瞬きすら追いつかないほどの時の出来事

 周囲の音が消えただけではない


 ここはもう記憶が再現された森ではなかった


 それは理解出来ない世界


 それをソレイナの精神世界と言うなら、自分と言う人間はもう人間を辞めているのだろうと言う世界


「……うぅ………」



 周囲の異様な空気に吐気が込み上げ様とするが


 手にした精霊の弓の輝きがソレイナの心の乱れを癒す。



「……大丈夫ですわ」


 水鏡のソレイナを案じる感情が弓から伝わり、無事を伝える。


 しかし、一時的な混乱は収まったが、嫌な予感はまだ収まらない。




 ――――― ヒタッ…… ヒタッ…… ヒタッ……



 軽い感じの足音が聞こえる。


 ソレイナは何故だか分からないがその足音に恐怖…… 否、畏怖の様なものを感じる。


(なに……これ……足音だけなのに……なんなのこの込み上げるような震えは……)



 ―――― ***** ***** *****

 **** ** **** ****



 言葉なのか、歌なのか、足音のする処から何かしらの声が聞こえる。


 それはまさに魔惑とも言うべき音を秘めていた。


 内容や意味は分からない。



 足音と歌の源がソレイナの視界に入るが……


「………ヒッ……!!」


 ソレイナが恐怖を込めた悲鳴のような呻きを上げる。


 それは冒涜的な姿をした、ニンゲンのカタチをしたモノであった。


 皮膚だけが綺麗に削げ落ち、ニクの繊維、血管、が視界に入る。


 そして申し訳程度に変色した人間のヒフが処々(ところどころ)そのニクを申し訳程度に被っていた。



 ―――― ***** ***** *****

 **** ** **** ****



 その歌の様な言葉の意味は相変わらず理解出来ない。


 だが何の天啓か一つ、そのヒトのカタチをしたものから感じることはある。



 それはヨロコビとも言える感情であった。





取り敢えず今回はここまでになります。


キャライメージのAIイラストを追加しましたので、よろしければご覧になってください。


次回もよろしくお願いいたします。


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