37話︰学園編 トーヤ冒険者になる? その2
あれから俺達は中庭でくつろいでいた、同学年の3人の少女達のグループを見つけた。
色々な人達に声を掛けて来た俺達は、何処にも良き返事が得られなかったので片っ端から声を掛けていたが、何とかこの辺境出身の3人の少女達は興味を持ったらしく話しを聞いてくれるとのことだった。
「……と言う感じにパーティを組むことを考えているのだけど、どうかな」
リボックは3人の少女達にどういったパーティ構成を考えているか説明が終わり。
少女の1人は…恐らく3人の少女達のまとめ役なのだろう。
「取り敢えず自己紹介、アンナテルだよ。よろしく~」
暢気な口調で自己紹介をしたアンナテルは見た目は幼さの残る、いわゆるロリっ子だ。
リボックの説明を聞いていた彼女はにこやかにリボックの手を取り、振り回す様に握手をする。
その人好きする友好的とも言える様子にリボックは頬を染める。
見た目通り、女性慣れしてないのだろうなと俺は思った。
「えと……アンナテルさん。そ、それで良い返事を頂けることで良いのかな」
リボックはアンナテルの勢いに少し狼狽したかの様に言う。
(完全にペースを握られているな)
俺は会社の、ある若い女性従業員のことを思い出す。
容姿も良く陽キャで、意味深げな態度で男を手玉に取るまさに小悪魔のお手本の様な女性だ。
俺はあまり接点がなかったので数回くらいしか話しをしたことないが、その誘い込みは見事なもので社内の有望株と浮世の噂が絶えない様だった。
この娘からは直感でしかないが同じ様なニオイがした。
「う~ん。わたしとしては別にいいのだけど、ラテアとジーノはどう?」
二人の意見はアンナテルに「良いんじゃない」とのことで任せる様な感じだ。
まあ、取り敢えずこれでパーティの頭数は何とかなりそうなので一息と言った所だ。
尻に敷かれないといいけどな。
その後、俺達は交流を深める為に菓子を買い中庭で話しをすることになった。
ちなみに菓子とお茶代はリボックとロディの懐から出ている。
俺は……オケラ状態なので二人に貸しにしてもらった。
(バイト探さないとな……)
ゲームのガネメモではアルバイトのコマンドはあったがほとんど使用したことはない。
バイトするくらいならダンジョンで稼ぐのが手っ取り早いからである。
交流会は終始楽しく進んだ。
ノリは完全に合コンである。
昔、人数合わせとATM役割で数回参加したことはあるが、アルコールの力を借りて何とかついていけた様なものであった。
今回はアルコールは流石にないので、シラフで童○男三人組(勝手に断言)が場を盛り上げられるはずはなかったのだが、そこは女子三人組が巧く盛り上げてくれたのだ。
俺も健康な男である。
女の子との楽しい会話で久しぶりに盛り上がってしまうことになってしまった。
「――――――――――――トーヤくーん」
女の子三人組との会話を楽しんでいた俺の耳に、遠くから透き通る様な美声の大声で、何処かで聞いた様な声が聞こえる。
うん、空耳だな。
「トーヤ、君のことを呼んでいるのじゃないのかい」
俺は現実逃避をしようとしているのに、リボックは大きなお世話に聞いて来る。
「トーヤ違いだろう。よくある名前だからな」
俺はしらばっくれることにした。
今は新パーティ結成の親睦会の最中だ、アリア……頼むから空気を読んでくれ。
俺は心中で念を飛ばすことにするが、そんな能力は無い俺の願いもむなしく。
「―――――――――トーヤくんってば! 」
また遠くからアリアの美声がこれでもかと響く。
ここはいつからオペラハウスになったんだ……。
「やっぱり君のことじゃないのかトーヤ」
リボックはまた俺に確認をしてくる。
心中でうんざりしながら俺は心頭滅却……精神を統一する。
「"トーヤくーん"と言う語源の意味には春の陽気を表す意味もあるとか、ないとか、つまりは春の陽気を満喫している叫び声だろう」
正直苦しい言い訳だったが、リボックは一応納得した様だ。
「遠目でも凄い美人だと分かるから、確かにトーヤの知り合いと言うより春の陽気を満喫しているとするのがまだ納得できるね」
おい!どういう意味だよ!!
俺は失礼な奴だなと思うが、親睦会の続きをすべく新たに気持ちを切り替え女の子達に話し掛ける。
「それで君たちの出身のベルデアって良い果物が採れるのだね。今朝ベルデア産の果物のジュースを飲んだんだ」
「ウチの家、果物農家だからもしかしたらウチの農家の果物かも知れないね」
「――――――おーい、トーヤくーん。聞こえないのー」
「トーヤって見た目怖そうだけど、イイ人だね。こう見えても人の見る目には自信があるんだよ」
その言葉に俺は感動すら覚える。
どいつもこいつも、ホラ吹きとか、お父さん(童○)とか、おっさんとか、更には老獪まで……
ようやく正当な評価が下された訳だ。
ホントウダヨ、ボクワルイ、トーヤジャナイヨ
「―――トーヤくん!」
「ねえトーヤ、さっきからアリアが何回も呼んでいるけど、何で返事をしないの」
流石にティコが見かねて俺に声を掛けてくる。
ああ……分かっているんだ。分かっていたのだよ……つまりはあれだ摂理には逆らえないと言うやつだ。
所詮この世は弱肉強食、弱いフラグは強いフラグに喰われるってな。
例え摂理であろうとも、働きたくないでござる!!!と言うが如くフラグ喰らいの摂理に反発する。
だが……
「トーヤくん」
現実は非情である。
最強のフラグ喰らいは、か弱いフラグを喰らい尽くさんとその牙を剥き出し襲って来る。
流石にこの距離で聞こえない振りは出来ないので、しぶしぶ後ろを向きアリアの姿を目に納めるが
俺は目を疑った。
確かにそこには学園の制服を着たアリアがそこに立っていた。
ゲームのCGイベントのイラストよりも制服を着こなした麗しいアリアが、そこに居た。
まあ、それは良い。
問題はアリアの後ろに続く30人近い野郎共の存在だ。
見たところ共通しているのは、上質の制服を着ているので貴族、またはそれに準ずる富豪だろう。
アリアがこれらの男を引き連れ、勝ち誇った顔をしていたら俺は即座に無視を決め込んだろうが……
その表情は本当に困っている表情をしていたので、俺は取り敢えず事情を聞いてみることをする。
「一体なにが……」
俺が言葉を言い切る前にアリアは俺に駆け寄ると
あろうことか俺にしだれかかるように身を任せて来やがった。
「この人です!私が、私が……」
「将来を誓った、お方はこの人です!!」
春真っ盛りの暖かい陽気の季節、1人の少女の告白によって俺は思い出した。
フラグ喰らいにフラグを喰われる恐怖を……
意図せずエンディングを観せられる、かったるさを……
一週間ぶりになります。
やっぱりプロットがあると書きやすいので、週イチが何とか出来ました。
話によってはまた詰まることもあるかもしれませんが、暫くはこの調子で頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。




