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36話︰学園編 トーヤ冒険者になる? その1

 

「……以上が入学に対しての説明となる。本来なら各自の質問となるのだが」


 俺は言い淀んだ教師の挙動に疑問符を浮かべる。


「先生は、今年のある新入生と保護者が”不慮の事故!”で破壊、もとい壊してしまった所の片付けに戻らなければならない」



 そう言って屈強な体つきの担任の教師は、頭痛を抑えるかの様な表情をしながら教室を後にした。



 入学説明会において俺ことトーヤは、学舎の教室において自分のクラスの担任から入学の説明を聞いていたが、担任は説明もそこそこに教室を後にする。


 恐らく不慮の事故とやらの対応で忙しいのだと推察する。


 忙しい中、わざわざ時間を作って頂きありがたいことだ。


 仕事においての唐突なトラブルでの対応は経験がある為、トラブルを抱え頭痛を堪えた担任を気の毒に思った。


 その破壊された箇所は人だかりが出来ていたので、すぐに分かったがその光景はまさに重機で荒したかの様な酷い有様だった。


 あれの後片付けは相当な苦労だろうなと思う。



 さてこの後は担任からの宿題。


 パーティーメンバーの組み合わせの時間だ。



 何を言っているのか俺自身もいまいち分かっていないので、説明会での内容を整理することにした。


 まず俺が通う学科は《冒険者学科》と言う、異世界物のお約束みたいな学科だ。


 そこはその名の通り冒険者と言われる者を育成する所である。


 とは言え、冒険者と言うのは広義的な意味である為に学科内容は様々な授業で別れる。



 まずは《ハンター》


 これは主に魔物を討伐する職業になる。


 内容は主に戦士系や攻撃系魔術師などの人間が戦闘技術や対応能力を磨く授業となる。



 次に《レンジャー》


 こちらは野外活動を中心に行う職業になる。


 内容は主に貴重な植物などの採集者や魔物の解体者、または野外活動においての水の確保や適切な野営設置、応急手当などの医術系の授業が中心となる。


 雑用が多い様だが、野外活動においてやり手のレンジャーが居ると居ないとではパーティにとって生存能力や効率などが段違いなので重要な役目だ。



 最後に《エクスプローラー》


 先程説明を受けたことなのだが、王都郊外に通称 ―創造神の試練― と呼ばれるダンジョンがあり、世界にいくつか点在する試練のダンジョンからは、様々な資源や財貨が手に入る資源鉱とのことだ。


 だが内部は危険な罠や魔物が組織立って行動しており、まさに虎穴とも言える場所だ。


 その内部の進行において安全を図るのがエクスプローラーの仕事だ。


 主な授業内容は価値のある鉱物やアイテムの鑑定、罠などの発見方法、マッピングやダンジョンの魔物生態、ダンジョン内での情報収集方法とその活用法、はたまたはポーター(運搬)の育成などもある。



 授業は選択制でどれを受けても良いとのことだ。


 戦いに自信がある者はハンターの授業ばかり受けても良いし、裏方で仕事したい者はレンジャーやエクスプローラーを半々齧っても良いしそこは自由だ言うことだ。


 そしてそれらの連携を行う訓練の一環として、擬似的なパーティーを組むようにとの担任の宿題が出ることになった。



「さてどうしたものか」


 昔から班を作ってくださいと先生に言われた時は余るのはいつものことだ。


 あれ……目から雪が、花粉症かな…


「トーヤ、君は何で泣いているんだい?」


 俺の机の上に居たティコがいつものことかと言うかの様に問いてくる。


「いや、古傷が痛むのだよ。悲しい過去がな」


 ティコが理解したかの様に頷き。


「トーヤは昔から集団を作ろうとしたら、いつも仲間外れだったね。 そうだった、そうだった」



 ティコさん…そう言葉にされると更に抉れるから止めて……


 トーヤの記憶を思い返してみると、本当にいつも最後までボッチだった様だ。


(いかん!リアル、異世界と同じ様に行動してどうするんだ)


 俺は変わらなければならない。


 あのシュウみたいに……は無理だろうけど、せめて高校デビューくらいはしないと!


 それをいつするか?今でしょう!! 


 よし、作戦名”今から俺は!”発動だ!


 とりあえずテキトーに考えた作戦名を実行に移すため、俺はまだパーティーメンバーが決まって居なさそうな所に自分を売り込みに行くことにした。




「どうしてこうなるんだ……」


 人手が必要そうな所に俺は自分を売り込んでみたが、どこも相手にしてくれなかった。


 ちなみ売り込み先の対応はどれも塩対応で、まるで不審者に対する態度の様だった。


(異世界に来ていじめに合うってどういうことだよ!! 顔か!顔がだめなのか!!)


 こればかりはどうにもならない為に俺は落胆するしかなくなる。


 ※ただしイケメンに限る。とここまで実感出来るとは、夢も希望もないとはこのことである。




「ちょっと良いかな?」


 黄昏ていた俺の前に二人の男子が並ぶ。


 二人とも凡庸な男子で良かった。


 これがシュウの様なイケメンだったら、今の俺は何をするか分からなかったからだ。


「何か用か」


 正直機嫌が悪かった為に、乱暴な口調で言ってしまったが二人共に特に気にしていなさそうだった。


「先ほどからパーティに加えてもらおうとしていた様だけど、君が声を掛けていた所は無理だよ」


 その言葉に俺は疑問符がついた。


 その俺の表情から、声を掛けて来た二人組の片割れのメガネ君(仮)が答える。


「あれらのパーティは王都組の派閥だからね。 君は…間違っていたらすまないけど、見たところ辺境出身者だろ」


 その言葉に俺は首肯する。


「ああ、俺は辺境出身だけど」


 俺は自分のその言葉でピンとくる。


「もしかして、出身地で派閥が出来ているのか」


 俺のその言葉にメガネ君が「正解」と短く告げる。



 俺は内心でメンドクセーと悪態を付く。


 出身地で差別するって、どこの村社会だよ!



 メガネ君の説明では、昔は出身地など気にすることなくパーティが組まれていたが、ある時を境に仮パーティはそれぞれの出身地で組むようになったとのことだ。


 その理由を聞いてみたが、流石にそこまでは知らないとのことだ。



「で、僕はリボック、こっちの無口なのはロディと言うんだ。ちなみ君と同じく辺境のローデシア出身なんだ」


 えーと、先ほどから俺に話し掛けてくれたメガネ君がリボックで無口なのがロディか……覚えた。


「俺はトーヤだ。辺境ではあるのだが、ウインシニア出身でな」


 俺のその言葉に二人は驚く。


「ウインシニアって随分遠い所から来たんだね。船でも二月(ふたつき)はかかるのに」


 トーヤの記憶では確かにそれくらい掛かっていたな。


 ちなみに船賃のお金の半分くらいは、この世界の親父の酒代に消えてしまったので、足りない分は船でバイトしながら来たのは内緒だ。


「もし良かったらトーヤ、僕たちのパーティに加わってくれないかい」


 まさに渡りに舟な提案で嬉しく思う。


「今年は辺境出身者が少ないみたいなので、人集めに苦慮していてね」


 あ、そう言う事情か


「ああ、よろしく頼むよ」


 それでもこのままボッチはつらゲなので、俺は即答でメンバーに加わることを了承する。



「では、改めて僕はリボック。履修予定の教科は、魔術が少し使えるのでハンターとレンジャーを半々で履修するつもりなんだ」


 続いてロディもその重い口を開く。



「……ロディだ。履修はハンターのみだ、斧を使える……」



 以上の様で、そう言ってまた無口になる。


 俺の番だな。



「トーヤだ。 荒事は苦手でな履修はレンジャー3、エクスプローラ7くらいで履修するつもりだ。裏方専門で申し訳ないがよろしく頼むよ」



 俺のその言葉でリボックが意外そうな表情になる。


「へー珍しいね。辺境出身者がエクスプローラを重点的に履修するなんて、大半はハンターかレンジャーなのに」


 考えてみればそうだな。


 辺境にもダンジョンはあることはあるが、辺境の民が常に相手をするのは天然の要害とも言える自然や獰猛な魔物だ。


 故に辺境出身者がエクスプローラを履修するのは故郷に帰らない者などになるが、そもそも学園に来ようとする者が故郷を捨てると言う選択肢はあまりない。


 簡単な話、学園の授業料は一部の特待生を除けば非常に高額である為だ。


 一応、学生課の学費ローンの様なもの(日本の奨学金制度に近い)もあるが、それは王都の住民が主に受ける制度だ。

 

 王都の一般人はそれを利用し、学園に通う者も居るが辺境の民はどうなるか。


 分かり安いのは借金だが、生活の苦しい辺境でその選択肢はほとんどない。


 なので多くの場合は領主の推挙で人選されることが多い。


 事実、俺も学費は領主に出して貰ったクチだ。


 そして領主が学生に投資するのは、考えなしのことではない。


 学園の知識を持ち帰ってもらい故郷の発展に寄与してもらう、いわば投資だ。


 なので、辺境出身者が宝の持ち腐れになるエクスプローラーを履修するのはあまりない。


「トーヤは故郷に帰らないつもりかい」


 リボックは事情までは聞いて来ないが、俺が軽い気持ちで言っているのか確認する意味を込めている様だ。


「いや、今の所は卒業したら帰る予定だけど、エクスプローラー履修は目的があってのことでね」


 黒の少女攻略の為にはダンジョンで手に入る、あるアイテムが必須なのだ。


 その為に俺はエクスプローラーを重点的に履修することにしたのだ。


 ちなみにハンターは履修するつもりはない。


 能力値オール5の俺が多少の訓練を積んだ所で何がどうなる訳でもないからである。


「事情は人それぞれだし、その目的と言うのは聞かないでおくよ。それに王都で実戦訓練が積めるのはダンジョンしかないし、そう考えたらエクスプローラー履修のトーヤが居ると助かるよ。 最悪、あぶれた王都出身者のエクスプローラーを探さないといけないと思っていたからね」


「……リボック……この3人で行くのか」


 ロディは言葉少なめにリボックに問いかけるが


「あと、2、3人欲しいな。他にも声を掛けて見よう」


 どうやら成り行きでリボックがリーダーとなる様だ。


 発足者はリボックなので別に異議はない、そもそも面倒な役を受けてくれて助かる。


 その後、俺達三人はクラスの一通りに声を掛けたが成果は得られなかったので、他の生徒に声を掛ける為に教室を後にした。


 メンバーは生徒であるなら同じクラスでなくても大丈夫なので、他クラスに活路を求めたのだ。


 脱ボッチで浮かれて忘れていたのだ。


 その後、俺は再び思い出すことになる……


 フラグ喰らいに支配される恐怖を……



いつもお読み頂いている読者の皆様お久しぶりです。

新規にブックマークを登録して頂いた方々初めまして。

久しぶりの投稿になり申し訳ありません。

本来ならもっと早めに投稿するつもりではあったのですが、HDDのデータが消えたことによるプロットの消失で記憶を掘り起こしながら書いていたのですが、あまりに内容が酷く感じたのでプロットを再び書いておりました。

お待たせしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

今回これと別に外伝のIFストーリーも続けて投稿致しますので、よろしければこちらもよろしくお願いします。


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