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32話︰学園編 運命の会合 その1

 

 春の穏やかな日差しが俺の心を癒して行く。


 人生とは色々あるものだ……苦しみもあり、また楽しくもある。


 俺は……トーヤは今、人生の僅かな幸せに浸っていた。


 ここは俺が今日から通う学園の中庭であり、俺はベンチに座り入学式が終わり、入学の諸注意の会が始まるを待っていたのだ。


 ちなみにこれから始まる入学式には俺は参加しない、むしろ出来ない。



 簡単に言えば、学園の生徒は3つの分類に別れる。



 一つは、貴族の子弟、またはそれに準ずる資産家の子弟などの学舎の貴族院。


 もう一つは、高い才能を持つ者達の技能を伸ばす天才達の学舎であり、将来の国立大学進学者達の大学附属。


 そして俺が入学することになる一般の学舎、名無し。



 身分制度がキッチリしているのは、流石ファンタジーだなと感心した。


 本当に感心したのだ、身分制度万歳だ。


 はっきり言って、貴族のボンボンや天才君達と一般人が混じって学ぶとなると絶対ロクなことにならない、むしろ余計なトラブルが絶対起きる。


 貴族や天才共に一般人の気持ちなど分かるはずはないのだ。まあ、逆もまたしかりなのだが……



 で、ここまで言えば分かり易いのだが、入学式なんて贅沢なものは貴族だけのものらしい。


 聞いた話しだと、式典の後お茶会が開催されとても豪勢な式などだそうな……


 いわゆる夜会だな、そしてそこで派閥が出来上がりと言った流れなのだろうなと想像する。



「ねえ、トーヤは入学式に参加したいの?」



 ベンチでのんびりしていた俺に1人の妖精さんが話しかけて来る。


 俺の相棒のティコだ。


「いいや……入学式に参加したい様に見えるか?」


 俺はティコが何でまたそんなことを聞いて来たか不思議に思う。


「だって、トーヤの入学する一般学舎の説明会は、中刻1つ(午後1時)からなのに、今は日刻8つ(午前8時)だよ。 何でこんな朝早くから学校に来ているの……」


 そう言ってティコは軽く欠伸をする。


 まあ、確かにティコの言う通り学校に来るのは、中刻(午後12時)を少し過ぎた辺りに登校しても良いのだ。


 だがそれには色々と理由があるのだ。


 まず第一は……あのフラグ喰らいのあの娘、アリアだ。





 それは、学生局から部屋を紹介してもらい、王都で過ごす部屋に引っ越した当日のことだ。


 俺は荷物はあまりなかったが、引っ越しの荷解きも終え、部屋で今晩の夕食はどうしようかと考えていた所に……



 ――コン、コン



 部屋のドアがノックされ俺は引っ越しのテンションで、誰かも確認せずに無警戒にドアを開けてしまった。


 開いたドアの隙間から見えた人物は



 ――アリアだった。



 その日、俺は思い出したのだ……



 アリアにフラグを喰われる恐怖を……



 俺は、アリアとの好感度調整を行うつもりで冷却期間を設ける為、引っ越し先を伝えず、暫く顔を会わせないつもりだったのだが……


 放置を行い好感度調整を行うのはガネメモの常套手段である為である。


 だが、アリアは教えてもいない俺の部屋まで押しかけて来たことにより、背中に冷や汗が一筋流れる。


 アリアの言によると、部屋の場所は学生局で聞いたとのことだ。


 個人情報保護法仕事しろ!と心の中で叫んだが…… ここは異世界なのでそんな法律があるのかどうかも怪しい。


 それからアリアは毎日の様に訪ねに来る様になって、何かと俺の世話を焼こうとして来るのだった。


 ティコは訪ねて来るアリアにとても喜んでいたのだが、俺は何か昔プレイした悲しみな向こう側へ船で行ってしまいそうなゲームの内容を思い出していた。



 そういえば、ガネメモのイラストレータの ”サブスケ ”さんが「アリアはヤンデレの素養があるな」と言っていたが……



 あれは傍目から見ていると楽しいのであって、自分が対象になってしまうのは本気で勘弁してほしかった。


 なので俺は実力行使を行うことにしたのである。



 どうせアリアのことだ。


 学園物の王道、ヒロインが主人公を起こしに来て、一緒に学園に向かおうとするだろう。


 それこそインターホン越しに「トーヤちゃーん!」とか言い出し、東に鳩が飛びそうな勢いで!!



 なので俺はアリアの裏をかくことにしたのだ。


 教団の朝のお勤めの時刻を調べ上げ、迎えに来るであろう時刻前に登校してしまう…… まさに完璧な作戦だ。


 俺は汎用型主人公みたいに早起きが出来ない人間ではなく、それ所か早朝会議や早残業は日常茶飯事なので、早起きは得意なのだ。


 アリアの魔の手から逃れる為に、お勤めから予想した時刻から換算した時刻に学園に登校したのだが、ちなみに今日は昼からなのは知ってはいたが、アリアが何時頃、部屋に来るのか分からなかったので安牌な時刻に登校してしまった訳だ。




(さてティコに何て言ったものか、正直にアリアと関わらない為と言っても、かえって説教されそうだしな)


「学校の空気を味わいたくてな。ほら、これから3年間お世話になるわけだし」


 ちょっと苦しい言い訳だったが、ティコは納得した様だ。


「そっか、そっか、トーヤも学園の生活が楽しみなんだね。トーヤも子供みたいでカワイイ♪ カワイイ♪」


 何を勘違いしているのか…… まあ、真意を悟られなかったので「まあいっか」と思うことにする。



 ティコと会話していると、俺から少し離れた所に、身なりの良い数人の生徒がヒソヒソ話をしながら通り過ぎて行く。


 どうやら、俺をチラチラ見ているようだがその視線は格好良いとか好意的な視線では無く……



 場違いな人間に対する蔑む様な目だった。



 身なりとこの時刻から察するに、入学式に来た貴族院の人達だろう。


 制服は俺の着ている物と形は似ているが、向こうのが生地も良く金糸や小物によるアクセントも効いていてオシャレな感じになっている。


 蔑む様な視線に俺は気にすることも無く、ベンチでのんびりすることにする。


 実害が出なければ別に貴族な方々にどう思われようが俺はどうでも良いのだ。


 俺は蜜柑でマッサージをし、ある意味ネギトロな劣等生なのだから、貴族から蔑まられるのは仕方ない。


「何か感じ悪いね……」


 ティコが不機嫌そうに言う。


「別に気にしていないさ、どうせ俺とは住む世界が違う人間だからな、それに学園に通う様になれば貴族院とは入り口も学舎も違い距離もあるし、顔を合わすことも二度と無いだろう」


 俺の気にしていない発言でティコは少し心配そうな表情になったが、すぐに「そうだね」と言い。


「そう言えばトーヤ、学園でアリアと一緒のクラスになれるのかな?」


 ティコは話題を変えようと俺に聞いてきたが


「アリアは確か大学附属に通うのじゃないのかな。聖歌呪法の才能自体希少だし、アリアが医学を収めて術と併用すれば、名医になると思うぞ」


 俺のその言葉にティコは残念そうな表情になる。


「そっか、アリアと一緒だったら楽しくなるかなと思ったのに残念だよ」


 俺はそう言ったが実際どうなるか分からないのだ。


 原作のガネメモでは、アリアとはクラスは違ったが学園では普通に顔を合わせていたからだ。


「同じ学園に居るんだ。アリアは貴族ではないし、お互いが会おうと思えば簡単に会えるさ」



 まあ、俺はあまり会うつもりは無いがな。



「そうだね。それに孤児院に行けば普通に会えるから問題ないかな」


 ティコは嬉しそうに表情を明るくする。


 考えてみたら、ティコの友人って俺以外はアリアくらいしか居ないのだろうなと思った。


(だから、寂しいのかな)


 あまりアリアには会わないつもりだったけど、ティコの為にある程度は会うのは良いかと俺は考えることにした。



「おい、お前」


 ティコと会話をしていると、声を掛けて来る人物が居た。


 俺はその男を見た瞬間思ったことは


(キツネみたいな奴だなと思った)


 バックBGMは自慢している曲がぴったりな奴である。


 男はリーゼント様なクセのある髪を手櫛で ”ファサッ ”とし


「消えろ」


 一言、言い放ち


「ここはお前の様な不審者が居る様な所じゃないんだ。痛い目に合う前に消えろ」


 俺はいきなり高慢な言い方をしてきた貴族に(うわー何てお約束な)と言う感じで笑ってしまいそうになった。


 どうやら俺を目障りだと思う貴族生徒達に良い所を見せようとして、俺を追い出そうとしているのだろう。


(正義感というよりは虚栄心と言った所か)


 俺はやれやれと言う様な感じで、ベンチから腰を上げ……


 キツネ貴族は俺の動きに一瞬身構えるが


「分かりました貴族様!(わたくし)の様な無粋者が皆様のお目をお汚ししてしまい申し訳ありません!」


 そう言って俺は相手の反応を見ることもなく、全力で逃げる様にその場を後にした。


 少し離れた人気の無い所で俺は、座れる様な茂みの境のブロックを見つけたのでそこに座ることにした。


「何あれ!あのキツネ男何なの! それにトーヤもトーヤだよ何で何も言い返さずにあんな態度で逃げるのよ!別にトーヤ何も悪いことをしてないじゃない!」


 ティコはご機嫌斜めだ。


 怒ってくれるのは、俺のことを思ってだろうからそう言っているのだろう。


「ティコ、俺のことを思って怒ってくれてありがとう」


 俺はティコにストレートにお礼を言う。


 俺のその言葉にティコは怒った表情を和らげ、今度は心配そうに俺を見つめてくる。


 俺は何であんな態度を取ったのか説明することにした。


「あそこで揉めた所で厄介なことになるだけだったからな。アリアの話の内容から察するに、この国の貴族は思っていたより権力と言うものを持っている。そんな相手に大した理由もないのに抗っても何の意味も無いし、俺が笑われるだけで済むなら安いものさ」


 俺は一呼吸入れ


「本当に守るべきものとは何なのか、それを思えばどんな恥辱にも耐えられるさ……」


 俺はその言葉をティコに対する念話ではなく、口に出して呟いた。



「興味深い言葉だね」



 その言葉は俺の座っていた茂みの裏から聞こえて来た。


 どうやら、反対側のブロックに誰か腰掛けて居たようだ。


 反対側の茂みから1人の男が俺に向かい歩んで来た。


 

お読み頂いた皆様、新規にブックマーク評価してくださった皆様ありがとうございます。


GW前の忙しさと構想が上手く纏まらなくて、時間がかかり申し訳ありません。


仕事の合間に書こうと思ったのですが、思っていたような内容ではなく何回か書き直すことにしましたので思ったより遅くなりました。


次は恐らくGW中になるかもしれませんが気長にお待ち頂ける様、よろしくお願いします。

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