2話:とっても長いプロローグその2
ガーネット・オブ・メモリアル
西暦1999年12月に発売。
通称はガネメモ(俺命名)、いわゆるエロゲーである。
ジャンルは3DダンジョンRPGで、最大の特徴はエロゲらしからぬ、そのシステムの作り込みである。
製作陣はいわゆるRPGマニアな方々が、これでもかと考えたギミックが仕込まれ成長システムも独特であるので、当時のパソコン系RPGとしては異端なゲームとして生を受ける。
しかしこのゲームはほとんど売れなかったらしい。 もとい正確には" 売られなかった "
製作陣は変なプライドがあったせいか、販売ルートを同人界隈ではなくショップでのみの販売にこだわり、いざショップで販売となると会社には製作の人材のみで、営業も広報も経理などの裏方が居なかったので、販路を開拓出来きず、他メーカーの年末の新作販売ラッシュでショップも取り扱いが出来る状況になかった。
現在ならDL販売やオークションサイトなどを利用した通販などができたのだろうが、1999年当時はネット関係は成長過程の黎明期の時代で結局このゲームは通常の販路に出ることはなく試作品として作られたものが僅かに出回っただけだった。
結局、販売も満足に出来ず会社倒産。
ちなみにこのゲームは自身の初賞与で革新的な10万円パソコン(当時相場20万円くらいがザラの時代)を買ったあと、初エロゲを何に使用もとい何にするかと各店を物色していたら、路上で数人の男たちが必死の顔で売っていたのがこのゲームである(注:路販は違法です)
だが、この時俺は若かった。
若さゆえの過ちで、路上で販売するからには相当ヤバい(良い意味で)エロゲーかもしれないと、見たところこのパッケージはどの店にも並んでいない商品だった。なのでこれは掘り出し物だと勝手に期待し購入した。
価格は9800円消費税はオマケしてもらった。
なお、このゲームはすぐに使用出来るものではなく(ゲームは問題なくプレイ出来たと言っておく)
翌日、ショップにすぐに使用出来るゲームを探して、当時ショップ売り上げ1位の商品を買って、なきゲーの信者になったのはこれが若さか……と振り返る。
一通りの説明をし終わったあと、白蛇は問いてきた。
「それで、このゲームと願い事にどういった関係が」
「えーとだな」
説明している間にパソコンがやっと立ち上がる。
このノーパはOSが950で性能面でもお似合いな性能なので立ち上がりに恐ろしく時間がかかるのだ。
OS980だとゲームは動くことは動くがたまにエラーを吐きプレイが安定しないので、このPCはガネメモ(以下略)専用機と化している。
なお20000以降だと立ち上がりもしなかった。
「説明したいシーンまで、15分ほどかかるから少し待ってもらってもいいか? 」
「ええ、構いませんよ。しかし、初めてですよ」
「え」
「願いを叶える説明をするのにゲームを始めた人は」
俺は苦笑いが自然にこぼれた。
次に会話をしようかと思ったら、ふと気付いた。
「そう言えばお互い自己紹介もしていなかったな」
白蛇が「あっ! そうでしたね」という反応を返してきた。
「いやー いつもは営業(願い事)を早く片付けたくて、事務的に対応することが多かったので名乗ることを忘れてましたよ。 願いさえ叶えてくれるなら誰でも良いと言う方々が多かったですから」
「ではあらためて、俺の名前は高嶺藤也だ」
「私の名前は白世津乃嘉渡鏡と言います」
白蛇が名乗った早口言葉みたいな名前に俺は「え?」と反応してしまう。
正直長すぎるし、言いにくい。
「言いにくいからシロで良いか」
白蛇もといシロは仕方ないですね。と言う態度で頭を垂れるように頷いた。
ちなみに〈ハク〉と言う名前も思い付いたが、神隠しが連想されたのでシロになったのは余談である。
互いの自己紹介も終え、俺はこのゲームの問題の箇所へとたどり着く。
ノーパのディスプレイには、主人公視点で一人の髪が長い(立絵のバストアップだとどこまで長いか分からないが)黒髪の少女が居た。
主人公《君みたいな娘がどうしてこんな牢屋みたいな所に》
少女《分からない。 でも、私はここで貴方を待っていた気がする》
この後、主人公の説得により黒髪の少女は共に牢屋から出ることを了承する。
主人公《君の名前は、これから君のことを何と呼べば良い》
少女《わたしn》
❌ファイルまたはディレクトリ C:game¥gane_memo¥system20458 破損しており読み込むことが出来ません
ガネメモのゲームの画像の上に警告ウィンドウが表示されゲームが強制終了された。
「あの~ ゲーム終わってしまいましたよ」
俺はマウスを持ったまま無言でいたので、シロがどうしましょうと言う感じで聞いてくる。
だがこの時俺の心中はそう、あれだ思い出し怒りが静かに沸き上がってきた。
久しぶりの不満感だったので、沸点はあっさり臨界を迎える。
「ふざけるな!! 彼女の名前を聞く直前でなんでいつも、いつも!! 初心者ビッチ、おでこちゃん、腹黒聖女、ぼたん鍋、便利妖精は問題なくクリア可能なのにこの娘は名前すら聞けないなんて、いつまでこの魚の骨が刺さった感じを味合わないといけないんだよ!!」
俺は、両手で頭を押さえておがり倒したあと、シロが特に気にしたことなく
「壊れているのですかこれは ?」
「いや、壊れているのじゃないんだ。 昔、同人イベントでこの作品のイラストレーターの人に会った時に聞いたのだけど、この続きを作る前に資金が尽きたのとシナリオライターが事故で亡くなったので結局彼女のイベントはボツ案になったとのことだ。 これはデータの消し忘れだとよ…」
シロの俺の思い出し怒りににも特に気にしたことのない態度は俺の怒りを沈静化させた。
そして俺はシロに告げる。
「俺の願いは、彼女の名前とシナリオの結末を知ることだ」
まだ続きます。