2
メイがいてくれることで本当に1人になるということは免れたが、だからといって全てうまくいく訳ではない。あくまでもメイはサブキャラクターでしかない。幾ら私に大きな影響を与えようと物語のヒロインは私ではないので大きく扱われることはない。そう、私はどう足掻いたところでヒロインにはなれない。
ヒロインになりたかったのかと聞かれるとそういう訳でもない。確かに向かう先が死という私の運命と比べたらヒロインの方が全然いいかも知れないが、王子に惹かれて王子もヒロインに惹かれたがために嫌がらせを受けたり小言をよく言われるようになる。正直私には意味がわからない。まず王子のこれっぽっちも惹かれてない。ああ言うタイプは敵にしたら絶対に面倒臭い。小説では少しの描写と結果のぶぶんし書かれていなかったがヒロインを手に入れる為に色々とてを尽くしていた。ときにはその権力も使って。爽やかで人気だとか言われていたがああいうことを平気でするようなタイプを爽やかだとは言わない。ああいうのは腹黒いと言う。
短い間とはいえ関わりは持ちたくない。それに関わりを持たなければ最悪の展開も少しは防ぎやすくなる筈だ。
…そういえば、今の私は果たしてあの腹黒王子と関わりを持っているのだろうか。ちょうど見た目的には婚約を結んでいるか結んでいないかの分かれ目辺りだと認識しているが実際確認はまだできていない。
「ねぇ、メイ」
「いかがなさいましたか?」
「少し頭が混乱しているみたいなんだけど、今私は何歳…?」
「お嬢様はもうまもなく10歳の誕生日を迎えられますが本当に大丈夫ですか?」
「そう、ならまだ婚約者はいない…よね」
「えぇ、ですがライズ殿下と婚約されるのだと仰っていられましたが…」
「え⁉︎誰が」
「お嬢様です」
これはギリセーフなのかアウトなのかわからない。いや、まだ正式に決まっていないのだからセーフだろう。交渉することはできるのだから。
「メイ、お父様とお話することは出来るかしら」
「え、えぇ」
「なら、いつならいいか聞いてきてもらえる?」
「畏まりました」
そういって困惑しながらもメイはお父様の元へ向かった。
困惑するメイをみて確信を得たが、この家の家族関係はあまり芳しくない。その原因は私。
私の髪色は雪のような白銀の色をしている。父親の髪色は落ち着いた茶色で母親は赤みがかかった茶色をしている。常識的に考えれば私のこの色が生まれてくる訳がない。先祖帰りなのではとも思われたが先祖にこの髪色はいなかった。
そこで父親は母親の不貞を疑った。いや疑ったと言うよりか決めつけた。母親の不貞によって私が生まれたからこの髪色なのだと。母親は何度もそんなことはないと訴え続けたが信じてもらえなかった。母親は父親のことを誰よりも愛していたし逆もまた然り。だからこそ許せなかったのだろう。
その後母親は体調を崩しがちになり、原因の私とも会うのを避けるようになった。父親は母親も私もいないものかの様に扱っている。なので一緒に食事どころか会話すらまともにしていなかった。
それでも離婚したり不貞をしたりしていないとういことはお互いにまだ気持ちはあるということあのだろう。オリヴィアが悪役令嬢になった原因の1つでもあるので出来るのならば和解して欲しい。私にどうにか出来る問題なのかわからないけど。
そもそも不貞を疑うきっかけになったこの髪色だがなぜこの色なのか思い当たる節が無いことはない。この国は魔力、魔法と言うものが存在している。魔法には属性があり大きく分けて7つある。火・水・雷・風・土・氷・そして聖。聖属性を扱えるものはほぼいない。なので希少価値が高い。そしてそれぞれの属性にそれぞれ愛し子というものが存在している。愛し子とは言葉の通り精霊に愛された子だ。その属性の精霊に愛されているため魔力が他の者より各段に高い。聖属性の愛し子は聖女として国に大きく関わってくる。その聖女がヒロインのサラである。
愛し子はその魔力の高さから容姿に大きく変化をもたらす。聖女に共通するのは瞳が黄金であるということ。歴代の聖女は誰一人漏れることなく黄金の瞳をしていたらしい。勿論聖女は他の部分も変化することもあるが瞳の色だけは皆その色をしていると言われている。聖女以外の愛し子もその魔力の高さから容姿が大きく変化している。しかし聖女とは異なり変化の仕方は皆異なる。なので愛し子だと認識されずにそのまま生涯を終えるという可能性も0とは言えない。
このことと、オリヴィアの魔力の高さから推察するに恐らくオリヴィアも氷属性の愛し子だったのだろう。そうすればこの髪色も納得がいく。しかし物語のなかのオリヴィアは権力に溺れて能力を高めようとはしていいなかった。それでは宝の持ち腐れだ。幾らもとの魔力が高くとも鍛錬をしなければ精霊と意思疎通もできなければうまくその能力を使いこなすことも出来ない。
最悪の展開を防ぐためにも魔法の練習もしたほうがいいのかもしれないな。いや、絶対にしよう。宝の持ち腐れなんて勿体無い。その力があれば運命も少しは変えられるのかもしれないのだ。少しでも可能性があるのならそれを試さないなんてことはしたくない。