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2 撤収作戦

 蒼穹を切り裂いて、一匹の鋼鉄の鳥が空を飛んでいた。

 全体的に丸みを帯びた特徴的な形状の双発航空機。

 大日本帝国陸軍一〇〇式司令部偵察機である。

 とはいえ、垂直尾翼に書かれた識別番号は、海軍第十一航空艦隊のものであった。

 発動機の轟音を南溟の空に響かせながら、機体は南下を続けていた。眼下に見えるのは、眩しいほどの蒼さを湛えた珊瑚海である。そこに、断片的に雲が浮かんでいた。

 高度六〇〇〇メートルを飛ぶことしばし。

 機体の進行方向に、青々とした緑に覆われた島影が見えた。高空から見れば、まるで海に一滴の緑色の絵の具を垂らしたような小ささである。


「機長、まもなくヌーメア上空に差し掛かります!」


 操縦桿を握っている搭乗員が、もう一人の搭乗員に声をかけた。一〇〇式司偵は二人乗りであり、一人が操縦者、一人が偵察員を務める。


「おぅし、こっちもカメラの準備は万端だ。敵機の襲撃だけには気を付けろよ!」


「了解です!」


 操縦員はスロットルを一気に開き、機体の速度はあっという間に時速六〇〇キロを超える。発動機からの轟音が、頼もしく響き渡る。

 機体は写真撮影のため、徐々に高度を下げている。

 一〇〇式司偵は、写真撮影の際が最も危険な状態であった。それは目標上空を直線的に飛ばなければならないためで、迎撃側としては対空砲火の照準を付けやすいのだ。


「ヌーメアに突入します!」


「おう!」


 鷹の如き俊敏さで、一〇〇式司偵はニューカレドニア島ヌーメア上空へと突入した。

 途端に、湾内にいる無数の艦艇たちが目に飛び込んでくる。そして、一〇〇式司偵のヌーメア突入に一瞬遅れて、湾内各所から対空砲火が打ち上げられた。機体の周囲で砲弾が炸裂し、南の空に不釣り合いな黒煙の花が開いていく。

 対空砲火の衝撃に機体を揺さぶられながらも、一〇〇式司偵は湾を高速で横切っていく。

 すでに設定のなされた一号二型自動航空写真機が動き出し、シャッターを切り続けている。


「こいつは凄いな」


 撮影は自動でシャッターを切る写真機に任せ、機長は双眼鏡で湾内の様子を確認する。

 眼下には、所狭しと連合軍艦艇の停泊する湾が見えた。


「戦艦に巡洋艦、あれは輸送船か、空母か……?」


 輸送船と空母の誤認は、日米両軍が度々犯す戦場の過誤であった。とにかく、潜水艦からの情報通り、ヌーメアに連合軍艦隊が集結しつつあることだけは確かなようだった。

 風防から見える景色が、濃い緑を湛えた山の斜面に移り変わる。ヌーメア上空を通過したのだ。


「高度戻します!」


 ヌーメアの連合軍泊地を航過したのは、ほんの数瞬のことだ。しかし、そのわずかな時間が搭乗員にとっては己の生死を左右する決定的なものなのだ。

 機体の針路が、ガダルカナル島のある北へと変わる。


「妙ですね」


 上昇を続けていく一〇〇式司偵で、操縦士が呟く。


「ああ、電探を持つという米軍にしては俺たちへの対応が遅すぎる」


 機長は後部座席に備えられた無線通信機の電鍵を叩きながら応じた。万が一撃墜されて写真が持ち帰れずとも、少なくとも自身の見た情報だけは第十一航空艦隊司令部に届けようとしているのだ。


「もっと迎撃があると思っていたが」


 本気で死を覚悟してヌーメアに飛び込んだにしては、拍子抜けするほどの結果であった。


「罠、ですかね? あるいは、敢えてあれだけの戦力を我が軍に見せつけて、こちらを威圧しようとしているんでしょうか?」


「判らん」機長は首を振った。「取りあえず、そういう判断はうちのお偉いさんがするだろうよ。俺たちは、とにかく写真を司令部に届けられればいい」


「宜候、了解です」


 やがて、一〇〇式司偵はぎらつく太陽の照りつける南洋の空へと消えていった。






 けたたましい空襲警報が、ヌーメア市街に鳴り響いていた。


「おい、どういうことだ!」


 市街にあるアメリカ軍南太平洋方面軍司令部で、ウィリアム・F・ハルゼー中将は部下に報告を求めていた。


「申し訳ございません! レーダーで捉えた機体は、ジャップの航空機であったようです!」


「貴様! 真珠湾で同じ失態があったことを忘れたのか!」


 ハルゼーは怒りのあまり、報告に来た防空担当の士官を怒鳴りつけた。

 一九四一年十二月七日(日本時間八日)、ハワイのレーダー基地は日本軍の大編隊を捉えておきながら、それを本土からやってくるB17の編隊と誤認するという事件があった。報告と確認を怠ったが故の失態であった。

 それと同じことを、ヌーメアのレーダー基地は犯したのである。ハルゼーが怒りを抑えきれないのも無理はなかった。


「問題は、ジャップの偵察機の来襲で島全体が殺気立っていることです」


 参謀長であるマイルズ・ブローニング大佐が口を挟んだ。


「本日午後には、ハワイからノックス長官やニミッツ長官が飛行艇にて来島します。誤って撃墜するような事態になれば、大変なことになります」


 日本軍機をレーダー員たちが見逃してしまった理由。それはこの日、一九四三年一月二十八日、南太平洋の戦局全般について現地司令部との意見調整のために、太平洋艦隊司令部や統合作戦本部から多数の人間たちが飛行艇に乗ってやって来る日であったからである。


「ったく、何て間の悪いジャップだ」忌々しげに、ハルゼーは吐き捨てる。「おい、貴様!」


「はい!」


 いささか青ざめた顔で、レーダー基地の士官は返答する。


「今度は間違えるなよ。レーダーに写った目標の敵味方識別は厳密に行え」


「アイ・サー!」


 その士官は敬礼すると、逃げるような足取りで司令部を退出した。


「まったく、いくら何でも(たる)んでいやがる」


 どかりとハルゼーは椅子に腰を下ろした。


「ヌーメアがジャップの爆撃機の航続圏外だからって、安心していやがるのか? レーダーに写る影が全部味方に見えるとは、とんだお花畑野郎だな」


 厳密にいえば、ヌーメアは日本の一式陸上攻撃機の航続圏内である(一式陸攻をガダルカナルに配置した場合)。しかし現状では、ヌーメアを一式陸攻が空襲したことはないため、ハルゼーを始めとするアメリカ軍関係者はそう判断していた。


「各部署に、再度、気を引き締めて任務に当たるよう伝達いたします」


「うむ、そうしてくれ」






 その数時間後。

 ヌーメアの港に、四発の大型飛行艇PB2Yコロナードが着水した。対潜哨戒や海難救助など多彩な任務に活躍するカタリナ飛行艇と違い、もっぱら輸送任務に使用されている飛行艇であった。

 港から内火艇が出され、搭乗者たちを移乗させていく。

 桟橋で待機しているハルゼーら南太平洋方面軍司令部の者たちが、やってきた飛行艇の搭乗者に向けて一斉に敬礼した。

 海軍長官フランク・ノックス、太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ大将。

 合衆国の戦争指導を司る、重要人物たちであった。


「出迎えご苦労」


 ハルゼーたちに答礼しながら、ニミッツたちは桟橋を過ぎていく。それに、南太平洋方面軍司令部の者たちが続く。


「統合作戦本部の決定については、すでに聞かされているかね?」


「ええ。ニミッツ長官から連絡を受けています」


 ノックスの問いに、ハルゼーは答えた。


「ならば話が早くて助かる。とはいえ、私が決定に関わったわけではないがね」


 自嘲を込めて、ノックス長官は言った。

 彼は海軍長官ではあるが、文民であった(陸軍軍人としての経歴はある)。海軍の実際の指揮権、日本でいうところの統帥権は海軍作戦部長のアーネスト・キングが握っており、両者の関係は必ずしも円滑とはいえなかったのだ。

 そして、ノックスは統合作戦本部への出席権を持たない。統合作戦本部は、議長のウィリアム・リーヒ海軍大将、海軍作戦部長アーネスト・キング大将、陸軍参謀総長ジョージ・マーシャル大将、陸軍航空軍総司令ヘンリー・アーノルド大将の四名で構成されており、合衆国の戦争指導はこの四人とルーズベルト大統領が中心になって行っていたのである。

 やがて一行は用意された車に乗り込み、会談場所である南太平洋方面軍司令部へと向かっていた。

 そしてこの日、連合国の対日戦略を左右する重大な決定が南太平洋方面軍司令部に通達されることになったのである。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 ブーゲンビル島南部のショートランド泊地に、珍しく空母が入港していた。

 アイランド型の艦橋はなく、全体的に平たい印象を与える小型空母、大鷹であった。本土から第六駆逐隊の護衛の下、航空機輸送のためにやって来たのであった。

 飛行甲板上にはずらりと九九艦爆が並べられており、艦内格納庫にも機体を満載していた。艦内にも、搭乗員や整備員を乗艦させている。

 一九四三年初頭、空母大鷹は海軍機の輸送任務を、雲鷹は陸軍機の輸送任務を分担して行っていた。

 大鷹に搭載されたこれら九九艦爆は、内地で訓練に従事していた第五五二航空隊の所属機であった。一九四三年一月初めに訓練を完了し、ソロモン戦線への進出を命じられたのである。

 先日も七五二航空隊の一式陸攻がマーシャル方面から配置換えとなってラバウルに進出しており、第十一航空艦隊の兵力は徐々に増強されていた。とはいえ、ソロモン戦線に配備された航空部隊は損耗と補充を繰り返しており、現状では米軍の弱体化によって辛うじて補充が損耗を上回っているだけである。

 昨年のような熾烈な攻防戦が起これば、第十一航空艦隊は短期間で戦力を消耗してしまうだろう。

 第十一航空艦隊の優位は、米軍に反攻作戦を行うだけの力がない現状での一時的なものであったのである。


「まったく、GF司令部も人使いが荒いものだ」


 ソロモン諸島の鬱蒼とした緑を見つめながら、大鷹の艦橋で篠田太郎八艦長は苦笑と共に呟いた。

 大鷹は昨年九月、トラック島沖で米潜水艦の雷撃を受けて損傷した。修理自体は十日で終わり、その直後に篠田大佐は着任したのだが、それからは横須賀、トラック、マニラ、シンガポールを行き来する任務が続いていた。

 まさしく、日本の勢力範囲を東奔西走していたのである。


「まさかラバウルを通り過ぎて、ショートランドまで来ることになろうとはな」


「何ともまあ、地の果てといった感じを受けますな」


 傍らに立つ航海長も、艦橋から見える景色に苦笑を浮かべていた。


「ラバウルはまだ市街地があった分、まだ港町といった風情がありましたが、こことは何とも……」


 これまで大鷹が航空機輸送のために帰港した場所は、トラックやマニラ、シンガポールなど都市や港として整備された場所であった。

 ショートランド泊地は、周囲をブーゲンビル島やショートランド島といった大小の島々に囲まれた地であった。これまで大鷹が訪れた港と比べれば、殺風景な印象を受けるのだ。

 停泊している重巡鳥海を始めとする艦艇群には頼もしさを覚えるが、周囲の光景との落差が激しい。これが瀬戸内海の島々を背景にしているならば、絵にもなろうが……。


「第八艦隊や水雷戦隊の連中は、こんなところで戦っているんですな。まったく、頭が下がりますよ。本艦にも、しっかりとした航空隊を載せてくれれば、彼らの助けになれるんでしょうが」


「おいおい、航海長。この大鷹は最大速力二十一ノットの鈍足空母だぞ。あそこに見える霧島なんかと比べても圧倒的に遅い。連中には連中なりの役割があるように、俺たち特設空母には特設空母なりの役割がある。例えこの大鷹が直接彼らの助けとなれずとも、この大鷹が運んできた航空機と搭乗員は必ず、彼らの助けになるはずだ。そのために、俺たちはここまでやってきたのだからな」






「隊長、我々に引き続いて五五二空の連中もやってきたそうですよ。一旦、バラレ基地に降ろした後、ガ島に進出するんだとか」


 ブーゲンビル島ブイン飛行場の搭乗員宿舎で、一人の搭乗員がそんな噂話を持ち帰っていた。


「へぇ、そいつは結構な話じゃねぇか」


 部下から隊長と呼ばれた男、第七五二航空隊の野中五郎少佐は、侠客じみた特徴的な口調で部下の話に応じた。


「ってことたぁ、俺たち第二四航空戦隊の、戦闘機以外はほとんどこっちに集まっているってことだな?」


 第七五二航空隊と第五五二航空隊は、ともに第二四航空戦隊の麾下部隊であった。


「と、いうことでしょうな。いや、今から腕が鳴りますよ」


「まあ、そう急くんじゃねぇよ。こちとら、まだこっちに来て日が浅いんだ。他の陸攻隊の連中との連携訓練やら通信の調整やら何やら、やんなきゃなんねぇことが沢山ある。出撃は、それが終わってからだな」


「了解であります。ときに隊長、何をお書きになっているので?」


 野中は、現地で作られた粗末な机の上で海軍罫紙に何かを書き込んでいた。海軍罫紙を使っているということは、家族などへの手紙ではないだろう。


「ああ、これは陸攻隊の新戦法についての意見具申書だ。先にソロモンに進出していた陸攻隊の連中から話を聞いてな、米軍の対空砲火も馬鹿になんねぇらしいし、夜間雷撃の効率を上げるためにも今まで通りの雷撃法じゃあ限界があるからな。まあ、採用されるかは判らんが」


 そう言いつつも、野中は熱心にペンを動かし続けていた。

 後に「車掛かり戦法」と名付けられる陸攻隊による飽和攻撃、その発案はこの一人の陸攻隊隊長によって成されたものであった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「一部の者はすでに聞き及んでいることと思うが、大統領閣下はガダルカナル島からの撤退を決断された」


 ヌーメアの南太平洋方面軍司令部にて、ニミッツ太平洋艦隊司令長官はそう宣言した。

 わざわざ「大統領閣下」と言うあたり、本国においてどのような議論があったのかが判る。統合作戦本部では制度上、議長と三人の大将によって作戦計画が決定されるが、実質的に仕切っているのはキング作戦部長とマーシャル参謀総長であった。

 大統領による決定が必要だったということは、キングとマーシャルの意見が噛み合わなかったことを意味する。恐らく、キングは最後までガ島撤退に反対したのだろう。

 今、会談の場にいるのは、ニミッツ、ノックス、ハルゼーの他に、南西太平洋方面航空隊司令ジョン・F・マッケーン海軍少将、デビット・ペック海兵准将、南太平洋陸軍司令官ミラード・ハーモン陸軍少将ら南太平洋戦線を管轄する将官らとその参謀たちであった。


「南太平洋方面軍司令部では、物資輸送のための新たな作戦計画を立案、作戦準備中とのことであったが、それらはすべて撤退作戦に切り替えてもらうこととなる」


 ハルゼーがブローニング参謀らに立案を命令した、戦艦部隊による再度のガ島突入作戦。それは当然、上級司令部である太平洋艦隊司令部にも伝わっていた。


「幸い、作戦準備のために南太平洋に分散していた艦隊兵力はヌーメアに集結しつつある。これらを活用し、ガ島に孤立する海兵隊将兵三万の救出に当たってもらいたい」


「ガ島突入作戦は、ハルゼー提督の命により、撤収作戦への切り替えが可能なよう策定してあります」


 発言したのはブローニング参謀長であったが、口調はいささか慇懃無礼なものとなっていた。

 ソロモン戦線での苦闘を実際に体感している彼ら方面軍司令部にしてみれば、本国の決定は遅きに失している感を拭い去れないのだ。

 日本軍によるい号作戦発令以来、ガダルカナルだけでなく南太平洋戦線全域が危機に陥っている。そのような軍事的、精神的重圧の中で、司令部の人間たちは肉体的、精神的に消耗しつつあった。

 そうしたところに、いままでガ島の維持を命令していた本国が一八〇度方針を変えたという決定。

 もともと短気な性格をしているブローニングとしては、我慢ならないところであった。何故、もっと早く決定しなかったのかという苛立ちがある。


「なるほど、南太平洋方面軍の先見の明に、太平洋艦隊司令長官として感謝する」


 一方のニミッツはブローニングの怒りを察しつつも、温和な口調でそう述べた。現在進行形で気難しい上司キングと扱いづらい部下(ハルゼー、ターナー、スミス)に挟まれているニミッツにとって、部下に多少無礼な態度を取られたところで気にするようなことでもない。

 ある意味で、苦労人特有の人間関係調整能力の高さのなせる技であった。

 とはいえ、そうした人格者ニミッツとは違い、ノックス長官の方は露骨に不快な表情を見せていた。大統領の側近の一人である彼にしてみれば、大統領命令が下った以上、南太平洋方面軍司令部としてはそれに従順に従うべきだと考えているのだ。ブローニングの、ある種の反論じみた言葉は文民統制を基本と考えるノックスにとって腹立たしいものであった。


「では、後ほど南太平洋方面軍の腹案を説明してもらうとともに、作戦の詳細を我が太平洋艦隊司令部との図上演習によって詰めていこう」


 ニミッツはブローニングとノックスが衝突しないよう、会話の主導権を握りつつ話を進めていく。


「さて、ガ島からの撤退後の南太平洋戦略について、方針を話させてもらおう」


 彼は集まった将官を見回して言った。ガ島撤収は、所詮は戦術行動に過ぎない。それも含めて、南太平洋での対日戦略をどうするのかが問題なのである。


「諸君には苦労をかけると思うが、統合作戦本部は本年四月頃のトーチ作戦再興を目指し、陸海軍ともに準備を進めている。そのため、最新鋭空母エセックスを始めとする空母機動部隊を太平洋に回すことは出来ない。北アフリカには旗幟を鮮明にしていないフランス艦隊がおり、イギリスがマルタ島以東の地中海の制海権を失っている現状ではイタリア艦隊も警戒しなければならない。現状は、北アフリカのフランス艦隊を枢軸軍に合流させないこと、イギリスの政治的・軍事的窮地を救って我が連合軍陣営の協力体制を万全のものとすることを重視しなければならないのだ」


「また、ソ連には昨年十一月にトーチ作戦を実施する旨を伝えてしまったため、それが延期となったことでスターリンの対米英不信感が増大している。これを解消するためにも、トーチ作戦は実施しなければならんのだ」


 ノックス長官がニミッツの発言に付け加えた。彼がそれ以上発言して会話の主導権を握られる前に、ニミッツが再び口を開いた。


「こうした状況に鑑み、本年八月までは太平洋戦線で守勢に回ることが決定された。その頃には、エセックス級二番艦ヨークタウンⅡも戦力化出来、またインディペンデンス級軽空母も四隻ないし五隻が戦列に加わることが出来るはずだ」


「ニミッツ長官、少しよろしいでしょうか?」


 挙手をしたのは、ハルゼーであった。会談の場であるので、流石に普段の大雑把な口調は改めている。


「何だね?」


「これは機密に属する情報かもしれませんが、例の艦、BB-67の建造決定が大統領命令で成されたことで、以後の航空母艦の竣工時期に影響が出る可能性はありませんか?」


 その言葉を聞いて、ニミッツは苦い表情を浮かべた。


「ああ、君の懸念する通り、すでに竣工間近な艦はともかく、来年に就役を予定していた艦の竣工は遅れる可能性がある」


 BB-67。

 それは、アメリカ海軍が合衆国最強を目指して設計した戦艦、モンタナ級一番艦モンタナに付けられた番号であった。

 太平洋戦争の開戦に伴って、他の艦種の建造が優先されたため建造命令が下りていなかったのだが、ガダルカナル沖海戦(第三次ソロモン海戦のアメリカ側呼称)で最新鋭戦艦四隻を失うという大損害を受けた結果、ついに昨年十二月初め、大統領命令によって建造が開始されたのである。現在は恐らく、フィラデルフィア海軍工廠にて竜骨の据え付け作業が行われていることだろう。


「ガダルカナル沖海戦の結果、ジャップの最新鋭戦艦に対抗する必要があるとのことで、二年以内の竣工を目指すよう大統領からの命令が下っている」


 ハルゼーはニミッツの返答に唇をねじ曲げて不満の意を表していた。

 来月、つまり四三年二月にはアイオワ級戦艦一番艦アイオワが竣工するが、彼女は起工から竣工まで二年五ヶ月かかっている。それをさらに短縮するというのだ。

 そして、例え期間内に竣工出来たとしても戦力化は一九四五年以降になるだろう。

 そのような戦艦に頼るくらいならば空母の建造を優先すべきだと、航空主兵主義のハルゼーは思う。

 ガダルカナル沖海戦のような戦艦同士の決戦は、あくまで偶発的状況が引き起こしたものだと彼は考えている。両軍が航空兵力を消耗してしまったからこそ、合衆国もジャップも戦艦に頼ったのだ。

 合衆国が大量の空母を就役させてジャップの航空部隊を圧倒すれば、二度とそのような奇妙な状況は起こらないだろう。

 本国の大艦巨砲主義者は何も理解していないのだと、ハルゼーは内心で憤慨した。


「さて、話を南太平洋戦略に戻すが、我が軍のガ島撤収はオーストラリア政府に重大な懸念を呼び起こす可能性があるとして、国務省とイギリスはかの国の政府と交渉を続けてきた」


 オーストラリアを連合国陣営から脱落させないこと。

 これが、アメリカとイギリスの共通認識であった。オーストラリアが日本に対して単独講和を決意してしまえば、それだけで連合国陣営には軍事的・政治的打撃となる。

 英領インドで反英運動が激化し、北アフリカのフランス軍が旗幟を鮮明にしていない現在、連合国陣営の劣勢を印象づけるようなことは何としても避けなければならなかった。


「そのためガ島撤収後、エスピリットゥサントのB17を中核とする第四航空軍は、オーストラリア防衛のためオーストラリア本土へと配置換えとなる。南太平洋の航空隊は、基本的に基地防空のための戦闘機隊と対潜哨戒のための飛行艇や爆撃機のみを配置することになる。船団航路に関しても、日本軍航空隊の航続圏外となる迂回コースを取らせ、被害の極限に努める。日本軍に対しては潜水艦を用いた通商破壊作戦を行う以外、積極的な作戦行動は取らず、艦隊兵力の温存に努めるものとする」


 あまりにも消極的過ぎる作戦方針に、南太平洋戦線を預かる将官たちはニミッツに険しい表情を向けた。

 潜水艦を用いた通商破壊作戦はすでに行っており、新規の作戦行動ではない。

 この作戦方針は、合衆国がジャップに敗北していることを自ら認めるようなものであった。状況は、真珠湾攻撃後よりも悪い。あの時は、空母部隊が健在であったため、太平洋各地のジャップの拠点にゲリラ的な空襲をかけるという作戦がとれたが、現在の太平洋戦線に存在する空母は三隻の護衛空母だけである。

 さらに問題なのは、合衆国の魚雷は深刻な不調を抱えているため、通商破壊作戦が思ったほどの効果を上げられていないことであった。兵器局による魚雷の改良作業が行われているが、ガ島攻防戦の激化によって一時的に改良作業が停頓しているという。

 理由は言うまでもなく、潜水艦によるガ島輸送作戦が実施されたことである。ドラム缶やゴム袋に物資や食料、医療品を詰め込んでの潜水艦輸送を行っているのだが、それでは効率が悪いということで、兵器局は潜水艦に搭載する物資輸送専用の運貨筒の開発を始めていたのだ。

 運貨筒は何種類か開発されているが、その一部には魚雷を改造して目的地手前で潜水艦から発進させる形式のものもある。これの開発のために、魚雷の改良作業は停頓してしまったのだ。

 今月、その自走式運貨筒がようやく実用の段階になり、現在本土の工場からヌーメアに輸送中とのことだったが、それが届くよりも撤退作戦の決定が早かったようである。

 完全なる時間と労力の浪費であった。

 そして、ガ島への輸送作戦に潜水艦を投入した結果、四三年一月末の時点で八隻の潜水艦を喪失している。この損害もまた、対日通商破壊作戦に暗い影を落とすことになるだろう。

 少なくとも、今年いっぱいは潜水艦作戦における問題が解決されることはないだろう。


「現状、合衆国が置かれている状況は、昨年よりも悪化している」


 ニミッツは、噛んで含めるような調子で説明を続けた。


「今は、忍耐の時なのだ。いずれ我が国は優勢な艦隊兵力を以って日本海軍を撃滅することとなる。しかし、それは今ではない。どうか、理解して欲しい。あの悪夢のような真珠湾攻撃とその後の苦境を乗り切った貴官らであるならば、この試練もまた乗り越えられるものと信じている」


「……判りました。ニミッツ長官がそうおっしゃるのであるならば」


 ハルゼーが苦痛を耐えるような声で、そう答えた。

 彼はこのドイツ系移民出身の太平洋艦隊司令長官の心情を察していた。ニミッツは約二ヶ月に一回、意見調整のためにキング作戦部長と会っている。ガ島撤収反対派のキングに、根気よく説得に当たったことだろう。彼にとっても、対日侵攻作戦の後退は苦渋の決断だったに違いない。

 結局、南太平洋戦線を預かる他の将官たちも、大統領命令とあっては異議を唱えることも出来ず、以後の会談内容はガ島撤収後の対日戦略の調整となった。

 ここに、合衆国によるガ島撤収作戦は実行の段階に移されることとなったのである。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 一九四三年一月三十一日。

 ヌーメアに戦艦、巡洋艦、輸送船多数集結中―――。

 その情報が第十一航空艦隊からもたらされた時、横須賀の連合艦隊司令部は緊急の作戦会議を開くことになった。


「これは、米艦隊撃滅の好機です!」


 声高にそう主張したのは、先任参謀の黒島亀人大佐であった。


「米艦隊には機動部隊は存在せず、一方で我が方はい号作戦のためのソロモン諸島に航空戦力を集中しております。これはまさしく、マレー沖海戦の再現が狙える状況です。この好機を逃すべきではありません!」


 会議室の上座に座る山本五十六連合艦隊司令長官は、腕を組んで瞑目している。宇垣纏参謀長も、ソロモン諸島の地図に目を落としたまま、普段と変わらぬ無表情を貫いている。

 ひとまずは、参謀たちが議論するに任せるようだった。


「私は、そうは思いません」


 黒島の意見に反対したのは、樋端久利雄航空甲参謀であった。


「米艦隊に機動部隊は存在せずとも、特設空母が南太平洋で確認されており、エスピリットゥサントの航空隊も存在しています。敵艦隊の上空が丸裸であるはずがなく、徒な航空攻撃は我が軍の航空戦力の消耗を早めるだけの結果に終わります」


「樋端中佐、貴官はいささか消極的過ぎる!」黒島は攻撃的な口調で言った。「通商破壊作戦も効果的ではあろうが、米国世論に打撃を与えるためには、やはり艦隊の撃滅という成果が必要なのだ。輸送船が沈むのと、戦艦や空母が沈むのでは、米国民に与える影響が段違いであろう。それに、敵艦隊兵力をここで漸減しておかなくては、山本長官の望む中部太平洋での決戦において我が方が戦力的優位に立てなくなる恐れもある。そのためにも、今ここで、例え旧式戦艦であろうとも、米艦隊を撃滅しておかなくてはならんのだ」


「敵兵力の漸減というご意見には賛成ですし、まったく迎撃作戦を行わないと主張したいわけでもありません」


 一方、樋端は理性的に言葉を重ねる。


「問題は、我が軍戦力の消耗を抑えつつ、敵をいかに撃退するかということです。航空兵力の消耗は、それこそ中部太平洋での決戦において我が軍に悪影響を及ぼします」


 そこまで言って、樋端は他の参謀たちを見回した。渡辺安次戦務参謀を始めとする彼らは、どうも黒島と樋端の論戦に巻き込まれたくないような顔をしている。

 内心で溜息をつきつつ、樋端は続けることにした。


「また、今回の米艦艇のヌーメア集結が何を意味するのか、それを予測する必要があります」


「戦艦を集結させているのだから、我が軍のガ島飛行場砲撃を目論んでいるに違いなかろうが」


 そんなことは議論するまでもないといった口調で、黒島が切って捨てる。


「ですから、それが何を意図しているのかということです。ガ島飛行場を艦砲射撃で破壊して、増援部隊を送り込もうとしているのか、それとも撤退をしようとしているのか、それを見極める必要があります。それによって、作戦構想に違いが出てきます」


「樋端中佐」


 そこで始めて、宇垣少将が口を開いた。


「議論をしたいのであれば、まずは君の見解を述べたまえ」


「はっ。私としては、米軍は撤退を目論んでいるものと思われます」


「根拠は?」


「ガ島の米軍の状況です」樋端は言った。「現地からの報告では、米軍兵士の餓死遺体が発見されているということで、ガ島の米海兵隊はすでに戦力として換算出来ない状況になっています。もし米軍がここに新たな兵力を投入しても、また同じ状況に陥るだけです。何故ならば、先日もお伝えいたしました通り、ガ島飛行場が破壊された程度で我が軍のソロモン戦線の制空権は揺るがないからです。米機動部隊が壊滅した今、敵航空兵力にニュージョージア島ムンダ以北の我が軍飛行場を叩くすべはありません。こうした状況は、米軍側でも理解しているはずであり、故にこそ撤退を目論んでいるものと思われます」


「それは楽観的に過ぎるのではないか?」


 黒島が異論を挟む。


「米軍は三万の兵を飢えさせてでもガ島の保持に拘っていると見るべきではないか? ガ島から撤退などすれば、それこそ米大統領に対する米国世論が厳しくなろう」


「米国の合理性から考えれば、むしろ維持が難しい島に三万もの兵力を貼り付けておく方が問題となります」


「だから、その考えが楽観的だと言うのだ」


「これは楽観ではなく、彼我の兵力や状況から導き出した客観的判断です」


 噛んで含めるような調子で、樋端は言う。


「少し話が逸れていないかね?」


 ここで、山本が口を出した。


「我々が会議を開いているのは、ヌーメアに集結した米艦隊への対処だ。彼らが増援にせよ、撤退にせよ、ガ島を目指そうとするのは明らかだ。まずは、その迎撃作戦について方針を定めるべきだろう」


「申し訳ございません、長官」


 樋端は山本に向かって頭を下げた。


「米軍が撤退を目論んでいるという意見には、賛成だ」そう言ったのは、宇垣だった。「正直、我が軍ですらガ島の維持にはいささか手を焼いている有様だ。それがガ島を封鎖された米軍にとってみればなおさらだろう」


「参謀長!」


 咎めるように、黒島が怒鳴った。


「黒島大佐、貴官はもう少し冷静になったらどうだね?」


 常日頃の無表情で、宇垣はそう注意を与える。黒島は憤慨した様子で椅子に座り込んだ。


「さて、とはいえ黒島大佐の言う通り、米艦隊に打撃を与える好機であることには違いない」


 宇垣はそう言って、黒島の顔も立てることにした。

 先任参謀と航空甲参謀が対立し合う状況は、参謀長として見過ごせない。ある程度、間に立って意見を調整する必要があった。


「ただ、航空兵力を刹那的な決戦に投入して消耗することもまた、忌むべきである。今、ソロモンに必要なのは、継続的に戦うことの出来る戦力だ。その観点から、迎撃作戦は練るべきだろう」


「戦力の維持という観点からは、ツラギの甲標的部隊を使用すべきかと思います」


 すでに腹案があったのか、樋端は淀みなく意見を出した。


「米艦隊が飛行場への艦砲射撃を目指すならば、必ずシーラーク水道で直進しなければなりません。それはまさしく、雷撃の好機です」


 甲標的とは、日本海軍が開発した小型潜水艦である。外洋航行能力は低いが、こうした局地防衛戦ならば威力を発揮してくれるはずであった。


「私も、樋端中佐の意見には賛成です」


 いささか渋々といった口調で、黒島が同意する。


「問題は、甲標的の数です」樋端が言った。「現状、ツラギに配備されている甲標的は八基ですので、搭載出来る魚雷は十六本。甲標的の視界が非常に狭いことと、照準が艇長の目視頼りという点から、高い命中率は望めません。突入を図る敵戦艦の数が多ければ、防ぎきれなくなります」


「となれば、第十一航空艦隊と第八艦隊にも迎撃を命ずるしかあるまい」


 宇垣が、黒島と樋端の両名を交互に見ながら言った。この点に関して、二人に異論はないようであった。


「ただし、陸攻隊による昼間雷撃は禁止するよう、第十一航空艦隊に命ずる必要があるかと思います」


「それでは夜間雷撃となり、攻撃の効果が十分に期待出来ない」樋端の意見に、黒島が反論した。「戦艦は輸送船ほど脆くはない。一本や二本の魚雷を命中させればよい輸送船とは違うのだ。ここはある程度の損害を覚悟して、命中率の高い昼間雷撃を行わせるべきだ」


「敵艦隊を撃退するだけならば、魚雷を一本、二本命中させるだけで十分だろう」口を挟んだのは、宇垣だった。「それだけで、戦艦というものは照準を狂わされる」


 砲術の専門家らしい意見であった。


「それでもなお敵が突入を図るようならば、甲標的と第八艦隊に迎撃させる。航空隊の損耗を抑えるためにも、従来通り、夜間雷撃を行わせるべきだ」


「一つ、よろしいでしょうか?」


 樋端は議論をまとめようとする宇垣に向かい、挙手した。


「何だね?」


「米軍が撤退作戦を行う場合、戦艦による艦砲射撃で我が軍飛行場を封じた後、輸送船を突入させるものと思われますが、恐らく、輸送は複数回にわたって行われるものと思われます」


「理由は?」


「単純に、数と時間です」樋端は続けた。「ガ島の米軍の兵力は、捕虜などの情報から三万とされています。その兵力を一気に撤退させられるだけの海岸を、ガ島の米軍は確保出来ていません。また、撤退作業が昼間になれば、ニュージョージア島ムンダ以北の我が軍の航空機の妨害を受けてしまいます。そのため、撤退作業は夜間に行うものと思われます。このことから、米軍のガ島撤収作戦は複数回にわたって行われるものと考えたのです」


「ふむ、理にかなっているな。それで?」


「第八艦隊には、米戦艦の迎撃に加わらせないほうがよろしいかと思います。第八艦隊に戦艦は霧島しかおらず、後は重巡を中心とした水雷部隊のみです。米戦艦部隊と正面からぶつかれば、損害は避けられません。そのため、米戦艦の処理は航空隊と甲標的に任せ、第八艦隊は輸送船団の捕捉、撃滅に当たらせるとともに、撤退作業の妨害を行わせるべきです」


「なるほど」


 宇垣は頷いた。そして、黒島の方を見る。彼は樋端の米軍が撤退を意図しているという意見に反対しており、何か反論があるかと宇垣は思ったのだ。

 だが、黒島はいささか納得いかないような表情を浮かべつつも、何も言わなかった。単にへそを曲げているだけか、あるいは迎撃作戦の詳細を樋端に先に言われてしまったのかもしれなかった。

 米軍が増援を目論んでいるにせよ、撤退を目論んでいるにせよ、重要なのは輸送船団を攻撃することである。その点では、皮肉にも黒島と樋端の意見は一致しているのだ。


「長官」


 議論がまとまったことを受けて、宇垣は山本に呼びかける。今まで瞑目していた山本が目を開き、一同を見回す。


「よかろう。その方向で第十一航空艦隊、第八艦隊との調整を進めてくれたまえ。渡辺中佐、樋端中佐、すまんが貴官らはただちにラバウルに飛び、両艦隊司令部との作戦計画の調整に当たってくれたまえ」


「はっ!」


 横須賀鎮守府の近隣には、追浜飛行場がある。

 山本の命令書を携えた渡辺安次戦務参謀と樋端久利雄航空甲参謀は、手配された一式陸上輸送機二機に分乗し、一路、ラバウルを目指すこととなった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 二月二日。


「諸君もすでに承知のことと思うが、統合作戦本部および太平洋艦隊司令部はガダルカナル島からの撤退を決定。我が南太平洋方面軍がガ島海兵隊の撤収作業を担当することとなった。本作戦は“クリーンスレート作戦”と命名。実施の時期は二月七日以降、三次に分けて撤収作業を行うものと決定された」


 ニューカレドニア島ヌーメアの南太平洋方面軍司令部の会議室にて、ウィリアム・F・ハルゼー中将は集まった各任務部隊指揮官を務める将官たちに向かって説明していた。


「この作戦は、現状で合衆国海軍が投入出来る最大限の兵力を以て実行されることとなる。各任務部隊指揮官の諸君らには、この作戦の成否が今後の対日侵攻作戦に重大な影響を与えるであろうことを明言しておきたい」


 会議室に並ぶ合衆国軍人たちは、巡洋艦部隊指揮官のウォルデン・L・エインズワース少将、アーロン・S・メリル少将、南太平洋で幾度もの海戦を潜り抜けてきたトーマス・C・キンケード少将の三名、そして彼らの幕僚たちである。


「提督、質問してもよろしいでしょうか?」


 手を上げたのは、メリル少将であった。


「何だ?」


「ガ島撤収作戦を三次に分けて行う理由をお聞かせ願いたい」


「我が南太平洋方面軍司令部と太平洋艦隊司令部が合同で行った図上演習の結果だ」


 ハルゼーら南太平洋方面軍司令部は、一月二十八日の会談の後、ニミッツや彼の幕僚と共にヌーメアにてガ島撤収作戦の図上演習を行っていた。三日にわたる図上演習と作戦計画の調整の後、クリーンスレート作戦は正式に承認されたのだ。

 その間、ハルゼーは南太平洋方面軍麾下の各任務部隊にガ島撤収作戦準備命令を下し、日本軍ガ島飛行場への艦砲射撃作戦のためにヌーメアに集結しつつあった艦艇に出撃準備を進めさせていた。

 ここに三人の任務部隊指揮官が集結しているのには、そうした理由がある。


「三回という結論は、海兵隊を撤収させるための海岸線の長さ、及び夜間に実施するという場所的・時間的制限から導き出されたものである」


「では私からも」


 次に挙手をしたのは、エインズワース少将だった。


「二月七日から作戦実施となりますと、準備期間がほとんどありません。当初はガ島への艦砲射撃を企図していたため現地の海図等の用意やそれに基づく航路の選択などは各任務部隊にて行いましたが、各任務部隊との連携に関わる通信の調整や訓練を行う期間がまったくありません。ガ島の海兵隊が危機的状況にあるのは理解しますが、いささか性急過ぎるのでは?」


 各任務部隊の指揮系統や通信の調整などが不十分だったために敗北したのが、ガダルカナル沖海戦(第三次ソロモン海戦のアメリカ側呼称)である。もちろん、敗北の原因は他にも求められるが、各任務部隊の連携が不十分であったことは否定出来ない。

 エインズワース少将は、再びそうした事態に陥ることを懸念しているのである。


「この時期に作戦を行うのは月が満ちる、つまり夜間の明かりが確保出来る期間であるからだ。これを過ぎれば、次は三月中旬まで待たねばならない。任務部隊同士の連携についてだが、三次にわたる輸送作戦では、基本的に一個任務部隊を基幹として行う。各任務部隊同士の通信の調整などは、最小限で済むように計画してある」


 三人の少将たちは、顔を見合わせた。その顔に厳しい感情が宿っていることを、ハルゼーは見抜いている。

 ハルゼーとしても、作戦の準備期間が短すぎることは認めていた。しかし、作戦実行時期を延ばすことは、ガダルカナルに展開する海兵隊を全滅の危機に晒すことになってしまう。すでに補給の途絶えたガ島では、飢えと病によって仆れる将兵が続出しているのである。彼らを救援する作戦は、一日も早く実行されねばならなかった。

 合衆国は、そうした苦しい状況に置かれているのである。

 そして、そうした現状を正しく理解しているからこそ、三人の将官も反対意見を出すことはなかった。


「では、各任務部隊の編成については、小官の方から説明させていただきます」


 言葉を引き継いだのは、ハルゼーの参謀長であるマイルズ・ブローニング大佐であった。


「今回の作戦では、四個任務部隊を編成、これら部隊によって作戦を実施するものといたします」


 そうして彼が壁に貼りだした編成表に、会議室内にざわめきが広がった。

 編成表には、次の艦隊編成および任務部隊指揮官の名が連なっていたのだ。


第一次撤収隊

  第七十七任務部隊  司令官:ウィリアム・F・ハルゼー中将

【戦艦】〈コロラド〉〈メリーランド〉〈ニューメキシコ〉〈ミシシッピー〉

【重巡】〈ルイヴィル〉

【軽巡】〈ボイシ〉

【駆逐艦】〈オバノン〉〈フレッチャー〉〈ラドフォード〉〈ジェンキンス〉〈シャヴァリア〉〈ストロング〉〈テイラー〉〈ドレイトン〉


第二次撤収隊

  第三十六任務部隊  司令官:ウォルデン・L・エインズワース少将

【重巡】〈インディアナポリス〉

【軽巡】〈ホノルル〉〈リアンダー〉

【駆逐艦】〈ダンラップ〉〈クレイヴン〉〈ウッドワース〉〈ラング〉〈ステレット〉〈スタック〉


第三次撤収隊

  第六十八任務部隊  司令官:アーロン・S・メリル少将

【軽巡】〈クリーブランド〉〈コロンビア〉〈モントピリア〉〈ヘレナ〉

【駆逐艦】〈ド・ヘイヴン〉〈ニコラス〉〈ラ・ヴァレット〉〈ウォーラー〉〈コンウェイ〉〈コニー〉〈ラルフ・タルボット〉〈ブキャナン〉


航空支援隊

 第五十一任務部隊  司令官:トーマス・キンケード少将

【護衛空母】〈ナッソー〉〈シェナンゴ〉

【軽巡】〈ナッシュビル〉〈フェニックス〉

【駆逐艦】〈ラムソン〉〈モーリー〉〈モナハン〉〈デイル〉


「第一次撤収作戦では、戦艦部隊によるジャップの飛行場砲撃を行い、以後の撤収作戦を有利ならしめるとともに、ジャップに我が軍の大規模攻勢が近付いていると誤認させるごとく行動する」


「ハルゼー提督!」


 ざわめきを無視する形で説明を続けたハルゼーに対して、キンケード少将が声を上げる。


「何故、提督自ら艦隊の指揮を執られるのですか?」


 本来、旧式戦艦部隊の指揮官はキンケード少将であった。だからこそ、何故ハルゼー自身が任務部隊指揮官に名を連ねているのかと問うているのだ。


「第一次撤収部隊が、最も危険な任務に就くからだ」


 他の意見をはね除けるような、険しい口調で答えるハルゼー。ある意味で、この猛将らしい理由でもあった。


「ジャップの制空権下にあるソロモン諸島への突入に際し、最大の戦力を持つ第七十七任務部隊は、連中の激しい迎撃に晒されるだろう。故にこそ、私が直接指揮すべきであると考えた。以上だ」


「提督の身に万が一があれば、それこそ南太平洋戦線のみならず、今後の対日侵攻作戦にも深刻な影響がありましょう。どうか、ご再考を!」


「ならん!」


 ハルゼーは厳しい声でキンケードの言葉を一蹴した。そして、決意を湛えた目で一同を見回す。


「諸君が私を指揮官として高く評価してくれていることをありがたく思う。だが、私は方面軍指令官となってから一度も前線に出たことがない。我が合衆国の勇敢なる青年たちが卑劣なジャップによって殺されているにも関わらず、だ!」


「……」


「……」


「……」


 その剣幕に、三人の任務部隊指揮官は何も言い返すことが出来なくなってしまった。


「……では、具体的な作戦計画についてご説明いたします」


 一定の区切りがついたのを見計らって、ブローニング参謀長が口を開いた。


「今回の作戦では、これら任務部隊の他に、ハワイから戦艦テネシー、アイダホを基幹とする艦隊を出撃させ、ジャップの艦隊に対して北方方面から牽制をかけます。なお、二戦艦は改装後の訓練途上であり、練度不足からガ島突入に加わることはありません。また、本国東海岸で再編途上にある空母機動部隊に代わり、キンケード少将の護衛空母部隊が上空援護を担当します。第五十一任務部隊は、エスピリットゥサントの戦闘機隊のエアカヴァーが及ばぬ空域を担当していただくため、ガダルカナル-エスピリットゥサントの中間地点まで進出、常時撤収部隊の上空援護を行います」


「ブローニング参謀、発言をよろしいか?」


 実際に護衛空母部隊を指揮するキンケード少将が尋ねた。


「どうぞ」


「ガダルカナル沖海戦において、空母レンジャーはガ島に接近し過ぎた故に日本軍の索敵網に捉えられ、撃沈された。その戦訓を鑑みれば、レンジャーより航空機搭載能力の劣る護衛空母では自部隊および撤収部隊の二個艦隊の上空援護を同時こなすのは不可能だと思われるが、如何か?」


 ガダルカナル-エスピリットゥサントの中間海域に進出するということは、当然ながら日本の一式陸攻の航続圏内に侵入することになる。キンケードは、自身の任務部隊がまた再び日本軍航空隊の犠牲になるのではないかと懸念しているのだ。

 そもそも、護衛空母に搭載されている戦闘機はF4Fが各十八機であり、その他はSBDドーントレス艦上爆撃機八機、TBFアヴェンジャー艦上攻撃機七機しか搭載されていない。自らの身を守り、さらに友軍艦隊を支援するとなれば、かなりの負担が生じる。


「第五十一任務部隊の上空援護に関しては、エスピリットゥサントの航空隊が行うこととなっています。そのため、キンケード少将には撤収部隊の援護に集中していただきたく存じます」


「なるほど、承った」


 それでも、不安は残る。合計三十六機の戦闘機で、ソロモン戦線に集結した日本の基地航空隊を相手にしなければならないのだ。

 こちらの戦闘機隊がガ島を航続圏内に収められるということは、日本側の戦闘機隊も第五十一任務部隊を航続圏内に収められるということである。日本軍の攻撃隊は、戦闘機の護衛付きとなるだろう。

 かつて、一九四二年二月、空母レキシントンがラバウルを空襲しようとした際、日本軍は護衛戦闘機なしで陸攻隊を出撃させ、レキシントンの戦闘機隊の餌食となったという戦闘がある(ニューギニア沖海戦)。しかし、今回はそうはならない。

 恐らく、今回の撤収作戦はこれまでの海戦以上に厳しいものとなるだろう。

 クリーンスレート作戦。

 つまりは、“白紙作戦”。

 誰の命名かは知らないが、皮肉にしては出来すぎている。

 状況を“白紙”に戻したいという、統合作戦本部の意図か。あるいは、太平洋艦隊司令部か。

 いずれにせよ、その“白紙”には合衆国将兵たちの血が染み込むことになるだろう。

 キンケードは作戦の前途に幾多もの困難が待ち受けていることを覚悟せざるを得なかった。


「また、低速輸送船では敵空襲圏内からの離脱に時間がかかるため、ガ島海兵隊の収容は駆逐艦および高速輸送艦が行うものとします」


 ブローニング参謀長が説明を続ける。

 アメリカ海軍にとって、高速輸送艦とは旧式駆逐艦改造の輸送艦のことを指す。これまでにも、補給の途絶したガダルカナルへの輸送作戦に、駆逐艦とともに投入されてきた。駆逐艦改造のため、通常の輸送船よりも高速で、艦前部には三インチ砲が取り付けられている。とはいえ、日本の水雷戦隊に対抗出来る艦種ではないため、同様の輸送任務についた駆逐艦よりも高い損耗率を出しており、昨年九月には隠密輸送中の高速輸送艦二隻が日本の駆逐隊と遭遇、全滅する被害を出している。

 そのため、ガダルカナル沖海戦に敗北した十一月以降、敵制海権の確立されたガ島への輸送作戦にはほとんど用いられていなかった。


「高速輸送艦に上陸用舟艇を搭載するのは当然としまして、さらに一部駆逐艦にも折りたたみ式浮舟を搭載、以って撤収作業を迅速ならしめるようにいたします」


「もし撤収作業中にジャップの艦隊が現われた場合、その対応はどうするのだろうか?」


「巡洋艦以上の艦艇および、駆逐艦についても予め輸送担当と迎撃担当を決めておき、それらによって撤収作業を援護することとします」


「そのための、戦艦部隊でもある」


 自身の参謀長の発言に、ハルゼーが付け加えた。


「戦艦部隊を出撃させるのは、ジャップの飛行場を破壊するとともに、奴らの艦隊がガ島方面に出撃してきた場合これを撃滅、以後の部隊の撤収作業を円滑ならしめる目的もある」


 果たして戦艦部隊がジャップの空襲を無傷で切り抜けてガ島に到達出来るのかという問題は、誰も口にしなかった。

 すでに、この作戦が相当に投機的なものであることを誰もが自覚していたからだ。

 一九四二年四月に行われた日本への空襲作戦、いわゆるドーリットル空襲も相当に賭博の要素が強い作戦であったが、今回はそれと同等かそれ以上であろう。

 とはいえ、航空兵力を抜きにすれば、ソロモン諸島に展開する日米の艦隊兵力はなおもアメリカ側が優勢であり、まったく成算のない作戦であるともいえなかった。そもそも、ガダルカナル沖海戦に代表されるようなこれまでの水上艦隊によるガ島突入作戦も、相当の危険があることを承知した上で実行されたのだ。

 今更、彼ら任務部隊指揮官にとっては恐れることでもなかった。

 ハルゼーやブローニングが作戦内容の伝達を終える頃には、すでに彼らのガ島突入への決意は固まっていた。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 一九四三年二月になると、それまで一度しか通商破壊作戦のために出撃していなかった日本海軍第八艦隊の通信量が増大し始めた。

 これは、通信を傍受しているアメリカ側にとって、日本海軍の大規模な艦隊行動の前兆を意味している。

 実際、ニューギニアからソロモン各地に輸送船団護衛のために散らばっていた第八艦隊は、ヌーメアに米艦隊が集結しているという情報を得て以来、麾下艦艇にショートランドへの集結を命じていた。

 一九四三年二月現在、第八艦隊に所属する艦艇は次の通りとなっていた。


  第八艦隊  司令長官:三川軍一中将

司令部直率【重巡】〈鳥海〉

第五戦隊【重巡】〈妙高〉〈羽黒〉

第六戦隊【重巡】〈衣笠〉

第十八戦隊【軽巡】〈龍田〉

第三十駆逐隊【駆逐艦】〈睦月〉〈弥生〉〈望月〉

付属【戦艦】〈霧島〉


 第六戦隊には他に重巡青葉が配属されているのだが、第三次ソロモン海戦で大破したため、現在は内地でドック入りを余儀なくされている。

 また、南太平洋の広大な戦域を担当するため、第一、第二艦隊からそれぞれ一個水雷戦隊が派遣され、第八艦隊の指揮下に入っていた。


第三水雷戦隊【軽巡】〈川内〉

 第十一駆逐隊【駆逐艦】〈吹雪〉〈白雪〉〈初雪〉〈叢雲〉

 第十九駆逐隊【駆逐艦】〈磯波〉〈浦波〉〈敷波〉

 第二十駆逐隊【駆逐艦】〈天霧〉〈朝霧〉〈夕霧〉〈白雲〉


第四水雷戦隊【軽巡】〈球磨〉

 第二駆逐隊【駆逐艦】〈村雨〉〈夕立〉〈五月雨〉〈春雨〉

 第二十七駆逐隊【駆逐艦】〈白露〉〈時雨〉〈夕暮〉〈有明〉


 これらの兵力がショートランド泊地に集結し、米艦隊のガ島来襲に備えることとなったのである。

 ただし、旧式艦で構成された第十八戦隊と第三十駆逐隊は、連合艦隊司令部付属艦である水上機母艦日進と共に、ラバウルに留まることになっている。

 多目的に使用できる日進の存在は、ソロモン・ニューギニア戦線の日本軍にとって、戦艦霧島以上に戦略的価値の高い艦であり、絶対に失うことの出来ない艦であった(さらに日進は四三年の九月以降、空母への改装が予定されており、二重の意味で喪失出来ない艦であった)。

 一方で、通信を傍受して第八艦隊出撃の兆候を悟ったアメリカ軍であったが、問題は第八艦隊がどこへ出撃しようとしているのかであった。

 ガ島撤収作戦に際して、アメリカ海軍はハワイからも戦艦部隊を出撃させ、日本海軍を北方方面へ牽制することを意図していた。

 しかし現段階では、アメリカ軍は第八艦隊の目的を正確に把握していなかったのである。


   ◇◇◇


 一九四三年二月六日、現地時間一六〇〇時。

 ヌーメアの港は、南洋の鮮やかな夕焼けと対照的に物々しい雰囲気に包まれていた。港に集結したのは、まるで真珠湾が移動してきたのではないかと思えるほどの艨艟たちの群れ。

 アメリカ合衆国海軍が現状で投入出来る最上の水上砲戦部隊が、今まさに出撃せんとしている。


「ガ島撤収作戦、クリーンスレート作戦発動に当たり、合衆国海軍は諸君らの奮戦に期待するものである」


 艦隊内の放送に、ハルゼー中将の声が流れる。

 彼は今、旗艦と定めた戦艦コロラドの艦橋で、マイクを握っていた。


「そして、私からは諸君らに三つの命令を下したいと思う」


 そこで、ハルゼーは大きく息を吸った。

 司令官の命令を聞き逃すまいと、艦隊将兵たちの間に一瞬の沈黙が訪れる。

 そして、彼は命令を達した。


ジャップを殺せ(キル・ジャップ)! ジャップを殺せ(キル・ジャップ)! もっとジャップを殺せキル・モア・ジャップス! 以上である! 艦隊出撃! 錨を上げよ!」


 この瞬間、ガダルカナルを巡る最後の戦いが幕を開けた。






「発、伊六潜水艦。宛、第六艦隊司令部、第八艦隊司令部、第十一航空艦隊司令部。我、米艦隊ノ『ヌーメア』出撃ヲ確認。時刻、一六一五。艦種、戦艦四、巡洋艦四、駆逐艦十隻以上。輸送船ハ伴ハズ。針路一四〇度。艦隊速力十五ノット。以上」

 ついに米軍による撤収作戦が始まりました。

 作中にもあるように、いささか性急な計画な気もしないではないですが、日本のガ島撤収決定のような組織防衛や面子の問題を考えないアメリカであるならば、迅速果断な行動が出来るのではないかと思ったが故です。

 とはいえ、南太平洋のアメリカ軍が厳しい状況に変わりはありません。


 さて、今回は戦闘シーンがほぼない話となってしまいました。

 他の作品でもそうですが、私は戦闘シーンよりも意志決定に関わるシーンの方を書きたがる傾向にあるようです。

 さらに、モンタナ登場の伏線を入れてしまいました。

 やはり、このシリーズの最後は大和VSモンタナで終わらせたいと思いましたので。

 まあ、そうなるとモンタナの慣熟訓練やパナマ運河を通れないなどの理由で、マリアナでの決戦が一九四五年一月以降にずれ込みそうですが。


 それと、お気づきの方がいると思いますのでネタバレしますが、日本のインド洋作戦と連合軍のトーチ作戦の実施時期が被っています。

 つまり、連合軍はまたしても日本に振り回された結果、トーチ作戦用の機動部隊をインド洋に回さざるを得なくなるのです。インド洋作戦の物語では、再建された米機動部隊と日本海軍第三艦隊の戦闘を予定しています。


 次回はいよいよ撤収作戦のために動き出したアメリカ軍と、それを阻止せんとする日本軍の戦闘です。

 ただし、ガ島の描写には、多少は婉曲的表現にしたとはいえ、一部グロテスクなシーンを入れる予定ですので、その点はご注意下さいませ。

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