後日談
後日談です
凛の手術が成功してから凡そ半年。俺はとおる十字路の電柱の側でそわそわしながら待ち合わせの時間がくるのを待っていた。もうそろそろのはずだが…
「あ、いたいた。おまたせゆうくん、待たせちゃったかな…?」
「いーや、全然。俺が緊張して早くきただけだから」
「もう、まだ慣れないの?まあ、私もゆうくんのことはいえないけどね」
と言い合いながら、手を繋いで並んで歩き始める。凛は制服に身を包んでいて、たいそうかわいらしい。
凛の手術が成功してから1週間後、無事凛は退院し、また1週間ほど経ってからうちの学校に復学してきた。なんと凛は名目上、元からうちの学校に在籍していた。とてもラッキーなことだ。しかも、クラスも俺と同じ。これはもう運命ともいえるディスティニーである…すいません、調子乗りました。
そうして、晴れて同じクラスで勉強することになった。復学してきた頃は少し騒動もあったが。今思うと懐かしい感じがする。
その騒動というのも、凛はいわなくともわかるが美少女だ。復学してきた頃はそれはそれはたいそう男子に喜ばれていた。しかし凛が、クラスでの自己紹介の際に俺を指差しながら
『私はゆうくん…宮田優司くんと付き合っています。別れるつもりも、他の子に渡すつもりもないので』
といってきたのだ。男子は絶望し、女子も若干なにかを諦めた感じの表情をしていた。特に香帆里はすごかった。あのあとの休み時間、俺と凛とを引き連れて屋上にいったからなぁ…まあ、今では凛と香帆里は大の仲良しなのだが。最初の頃はすごい剣呑そうな雰囲気だったのになにがあったのやら…
「ゆうくん?聞いてる?」
「ああ、ごめんごめん、なんだっけ?」
「もう、ちゃんと聞いててよね。えっとね、今日お母さんがうちにこないかって」
「凛の家に?」
そういえば凛の手術後、凛の両親に物凄い感謝を伝えられたものだ。付き合ったと報告したときも、むしろ付き合っていなかったのかといわれたぐらいだ。あの人たちには色々と助けられていたから、認められるのは嬉しい限りだ。
「そうそう、なんかね、ゆうくんの家族の人とも仲良くなりたいから、みんなできてくれって」
「マジか…母さんも退院して、親父も帰ってきたとはいえ、急だな」
そう、続々と朗報が舞い込んできたのが、母さんの退院と親父の帰還である。凛の手術の後、何故か母さんまで元気を分けてもらったのは回復の傾向に向かい、つい最近退院した。それに伴って親父も帰ってきたのだ。しかも、今度は長期間居られるらしい。この前、久々に家族水入らずで食事をしたばかりだが…
「うん、長い付き合いになるんだから、今のうちに仲良くしとこうって…」
自分でいって恥ずかしいのか、顔を赤くする凛。それを見ているこっちも恥ずかしくなってくる。
長い付き合い…もちろん、いわれなくともそうするつもりではいるが、存外恥ずかしい。
「そっか、じゃあ家族のグループで提案してみとくよ」
「うん、よろしくね!」
凛がとてもかわいらしい笑顔で頷く。かわいい。
と、話しているうちに学校へついた。学校全体でも贔屓目抜きでトップレベルのかわいさをもつ凛は、よく人目を惹いて注目される。注目されるのは少し恥ずかしいが、それでも手を離すつもりは毛頭ない。
「おっ、お二人さんおっはよ〜!朝からお熱いねぇ」
「ばっか香帆里、からかうんじゃねぇ。恥ずかしいんだから」
「ふふっ、ゆうくんはほんとに恥ずかしがり屋だね。香帆里、おはよう」
「うん、おはよ〜凛!」
ほんとにこの2人は仲がいい。何があったのか、俺たちを屋上につれていってほんとうに付き合っているのか言及されまくった挙句、凛と2人きりで話がしたいと追い出され、1時間目が始まる間際に帰ってきたかと思えば、剣呑は雰囲気はどこへやら、めちゃくちゃ仲良くなってたからな。いやまあ、仲良いのはいいことだが。
「くっ…そんなことよりほらいくぞ。ったく、見せもんじゃねぇぞ俺らは…」
「まあまあ、いいじゃないか、ゆうくん。その…私たちの仲を見せ付けちゃえば」
「ほんとにお熱いねぇ。私が勝てなかったのも頷けるというもの…」
などと談笑しながら、クラスは向かう。教室に入った瞬間、向けられるのは羨望と憎悪の眼差しである。そりゃまあ、俺みたいなやつが学校のツートップともいえる人物を両手に持っているようなものだからな。まさしく、両手に華である。
「おうおう、クラスまで手を繋いじゃってまあ。それなのに両手に華とは羨ましいなこのやろう」
そういいながら近づいてくるのは泰隆だ。羨ましいとかいっておきながらその飄々とした態度からは微塵もそんな気持ちを感じられず、むしろからかうようなものだ。
「うるせぇよ。別にいいだろ、手繋いでたって」
「そうそう、この2人はとっても仲がいいんだもの!もっとからかってあげなきゃ!」
「なんでその発想に至った!?」
「なるほど…このこのぉ〜見せ付けてくれちゃって〜☆」
「なんでお前も乗っかってるんだよ!?」
朝からなんでこんな騒がなくちゃいけないのか…え、見せ付けているせいだろって?ちょっと何いってるかわかんない。
とは思いつつ、もうそろそろ手を離さないとな、と手を握る力を緩める。凛もこちらの意図に気づいたのか、少し惜しみながらも手を離して自分の席は向かった。
凛がいるとやはり、楽しい。もちろん、今までだって泰隆や香帆里といると楽しかったのに変わりはないが。それでも凛と一緒なら、もっと楽しいと思える。だから、
―――こんな日々が続いたらいいと心から願っている。
後日談は(多分)まだ続きます
最後のはフラグじゃないです。ほんとうです(迫真)