1、女神に喧嘩に喧嘩を売る。
主人公はたった3日の徹夜で死んでしまいますが、そこは普段の食生活や睡眠不足が足りなかった事によるものとしてください。
11月25日、俺の学校ではもう直ぐ期末テストだ、中学3年生の期末、それは普段テスト対策をしないバカな奴でも多少は本気を出す。何せこのテストは自らの進学先に大きな影響を与えるのだから。
俺はそのバカだ。学年成績も63人中のケツから15番目位、4分の1より下。
その事で親に散々叱られ、スマホはおろか、テレビさえロクに見させては貰えてない。1日3時間以上ゲームしないと禁断症状が起きる依存症な俺はそんな生活が嫌になってきていた。まぁ、元々は成績が悪い自分のせいなのだが・・・
今日もテレビもスマホも無い自分の部屋で頭から煙が出るほど勉強している。4日前までは取り敢えず教科書とワークを広げてボサッとしていればよかったが、テスト週間に入った途端に親の監視が付いた。結局、その日寝るのが許されたのは夜中の2時半だった。
俺はベッドに入り、
「はぁ~親うぜえ・・・ゲームしてぇ・・・」
言ってから目を瞑った。
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時間が経つのは早い。もう明るくなっている。
「宮下俊成さん、起きてください。」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「母さん?もう朝?」
「起きてください。」
ベッドから重い身体を無理矢理起こして目を開ける。
「・・・・・・・・・・どこ?」
見ると俺はローマ時代の神殿みたいな所にいた。
「起きましたか、宮下俊成さん・・・残念ですが、あなたは先ほど亡くなってしまいました。あなたの人生は終わったのです。」
目の前にいる少女は唐突にそう告げた。
もし女神なるものが実在するならば多分、この人のことを言うのだろう、テレビでよく見る安いアイドルとは比較にならないほどの完璧な美少女。子猫を想わせる金色の目、流れるような美しい金髪。
年の頃は俺と同じくらいだろうか?胸は少し小さいが、それ以外は完璧と言っていい。
「誰?」
「私の名前はルーナ、女神です。あなたは昨日の夜、ストレス性心筋梗塞で亡くなられて・・・」
少女は俺の目をしっかりと見て聞いてきた。
「あの、思い出しましたか?」
俺は必死に何があったかを思い出そうとする。
-えっと・・・母さんの監視の下夜2時半まで勉強させられて・・・独りで愚痴りながら寝て・・・-
「夢か・・・」
俺は再びモーフと布団を被って目を瞑った。
「えっ・・・ちょ!?宮下さん?宮下俊成さん?起きてください!」
眠い。夢の中なのに何故かとてつもなけ眠い。
「あの、少し眠らせていただけませんかね?」
「いや、あなたは寝ている間にストレス性心筋梗塞で亡くなられて。」
少女が戸惑った感じで言う。もし、本当の女神ならこんな態度はとらないが、夢だったら何やってもいいのだ。
-妙にリアルだ、それに身体も自由に動かせる。-
「そ、そうです夢なら身体は自由に動きません!」
少女が俺の考えている事に対して答える。
-ああ、これが噂に聞く明晰夢ってやつか・・・本当に動くんだ。-
「宮下さん、明晰夢ではありません、現実です。」
-うるせーなぁ、なんなんださっきから・・・ちっとも眠れやしな・・・あ、やべえ、トイレ行きたい、しかもコレは大の方だ。-
さっきから煩い少女に苛立ち始めると共に強い便意を感じ始めた。
「あの・・・トイレならそちらに・・・」
-トイレ貸してもらい・・・待てよ、此処は夢の中だもし此処でスッキリしようもんなら15歳で脱糞する事になる。何が何でも我慢しなければ・・・-
「あの!いい加減起きてください!!ここは夢の中じゃありません!
あとトイレはそこの廊下を曲がった先にありますから!」
-嗚呼、やべえよ、本格的にやべえよ、いつになったらこの夢覚めるんだよ!?嗚呼どうしよ・・・何かあの子の顔もウ○コに見えてきたわ。-
この美しい部屋も自らのことをルーナと名乗る少女の顔面もソレ色に見えるほど便意と苛立ちがピークに達していた。
「ねぇ!アンタっ失礼にも程があるでしょう!
私は人の心読めるのよ?女神の顔をウ○コ呼ばわりするとか全世界相手に宣戦布告したのと同じくらい愚かな事なのよ!?」
「ああああああ!!ちょっと黙れよ巻糞ババアっ!!テメェがトイレの神様ってならその証拠見せみろよ!」
「誰が巻糞ババアよ!それにトイレの神様なんて一言も言ってないわよ!
いいわ、見せてあげましょう、女神の力であなたの恥ずかしい過去を言い当ててみせるわ!」
「ああ言ってみろよ、巻糞女神!」
もはや売り言葉に買い言葉で何も進まない。
巻糞女神は何やらノートのような物を開いてそれを声に出して読み始めた。
「あれは8年前、あんたが小学2年の12月5日、幼なじみの篠原優月ちゃんと公園で鬼ごっこして走ってる最中にお漏らしして小便撒き散らしながら数十メートル走った挙げ句、それを隠す為にクソ寒い時期に公園の汚ったない噴水に自分からドボンしました・・・
更に、実はその事を優月ちゃんは知ってて噴水ダイブは結局意味なかったのよアハハハハハっ、超ザマぁーー(嗤)」
自らを女神と名乗るイタい子は顔をクチャクチャにしながら嗤い転げた。
そろそろ殴っていいかな?ねぇ殴っていいよね?
「おい、あんま調子こいてんじゃねぇぞ!ペチャパイがぁー!!!」
「あんたが始めたんでしょう!この成績底辺ドキュソ野郎!」
「よーし、ちょとこっち来い、そのウ○コ臭漂う汚い顔面に一発かましてやるよ。」
「何回ウ○コって言えば気が済むのよ!語彙力無さ過ぎでしょ・・・・・もういい、分かったわアンタ異世界に送ってあげる・・・」
「は?え?マジ異世界いけんの!?」
異世界聞いて夢でも少し興奮する。
「剣と魔法の異世界でゴブリンにでもぶっ殺されるがいいわぁーー!!アーハハハハハッ!」
もはや女神ではなく魔王か悪魔の顔で言うと、トイレの神様は靴底をカツンと鳴らした、そうすると床に俺を囲むようにして魔法陣のようなものが浮かんだ。
巻糞女神がもう一度靴底をカツンと鳴らすと身体がフワッと浮いてどんどん上昇していく。
「死んで此処に戻ってきた時に土下座して『すみませんルーナ様一生あなたの下僕として働きます、』って言ったなら許してあげない事もないわよぉー」
「誰がするかぁ!!名前覚えたからなぁ次合ったらミンチにしてやっから首洗って待ってろクソビッチぃぃい!!!!!」
俺はそいつが見えなくなるまで中指を立てて叫び続けた。
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目を覚ますとベッドの上にいた。
「ああ、やっと目が覚めた・・・」
嫌な夢だった、あんな夢もう二度と見たくない。もう一度見ることがあればその日は疫病だ。
そんな事を考えていると、隣から声が聞こえた。
「お目覚めですか?」
「お母さん、もう六時半?・・・・・・・ッ!!!!」
ベットの隣に立っていたのは煩いお母さんではなく、整った顔立ちに艶のある黒髪、ビー玉のように綺麗な紅い目、透けるような肌、スラッと背が高く、黒色のパリッとしたスーツのような服を着た男性。
街にいる安っぽいチャラチャラしたイケメンとは訳が違う、男の俺でも美しいと思うほど完璧な容姿のだ。
「これは・・・・・・・夢だッ!!」
俺はもう一度毛布を被って目を瞑った。