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裏切り傭兵の変革記  作者: 綿鳥守
1章 旧魔術派の傭兵として
4/6

4話 実地戦闘です!




『旧魔術派 南支部 周辺の森』




レードの指導のおかげか、はたまた二メアの素質のおかげか定かではないが、ここ何週間の訓練でだいぶ動きが様になってきたということで、2人は本物の戦闘をしようと森に来ていた。


「さて、支部の近くとはいえ、この辺にも現魔術派の密偵やら何やらが来ることがある・・・らしい?」


「ちょっと・・・レイ先生!何で疑問形なんですか!うぅ・・・緊張してるのに」


「そんな固くなるなよ?俺よりも魔術センスがあるんだから、いけるだろ。それとなく」


「・・・はぁ、ゆるい」


それなりに二メアはレードと時間を共にしてきたが、この男がいつまで経っても変わらないことに気付かされたのは、とうの昔である。


講師の時みたいになれとは言えないが、もう少し緊張感を持って欲しいと何度も願い出たものの、ことごとく『無理♪』と言われて、二メアはついに折れた。


「・・・お、来たかね」


「えっ・・・」


レードは二メアの腕を引くと、背のある木の後ろまで静かに移動。


レードが何を思ってそう言ったのかは、顔がフードの下に隠れているため、分からない。


「隠蔽で姿を消しているな。痕跡ダダ漏れだし、申し訳程度感がはんぱねーよ」


「魔力の痕跡・・・」


「分からないか?ここから22メートル東に3人・・・いや、4人の魔術士がいるはずだ」


「まだ感覚がつかめていないので、よく分かりませんが、察知出来るものなんですか?」


小声でレードに聞く二メアは足が震えているが、何とか精神状態は保っている。


ただ、すぐさま魔術を使えるかというと微妙だろう。


「あぁ、慣れればな。まぁ、隠蔽破りはそのうち出来るようになる・・・それよりも、今回は初の『殺し合い』だ。遊びでも訓練でもないから、そこんとこ頼むわ」


「は、はい・・・」


レードは『よし』と頷くと、腰に付けてある特殊なウエストポーチから、先端に何か塗ってある細長い針3本と透明な丸いカプセル状の容器を2つ取り出す。


「それは?」


「毒針と汚臭玉だ。どっちにも事前に衝撃波を設置してある。時間差起動で起動するとちっとばかり、侵蝕率が増大するが、リターンがあるしな」


「・・・」


レードは軽い口調で説明をしているが、完全に手つきは暗殺者としかいえない慣れさだ。


ただの傭兵とは聞いていたが、二メアの想像する傭兵とは異なるものに自然と背筋が寒くなる。


「まぁ、そうなるのも無理はないな。傭兵のイメージってほら、剣とか使って戦う感じだし」


「気付かれずに、その、殺害するってことですか?」


「そうだな。俺は基本的に隠密行動主義だし」


もうこれで話は終わりというばかりに、レードは静かに東の方角へ歩みを進める。


「(私は後ろから見てればいいのかな)」


二メアはレードの指示がないため、判断に迷うが、1人でいるのは怖いということで後をついていく選択を取った。


しばらく二メアはレードの後ろ姿を観察していたが、唐突にその様子が変わる。


レードは誰もいないと思われる場所にいきなり1本の針を投擲すると、続けて2本の針を高速で投擲。


ブシュ!ブシュ!と肉が裂ける音を聞いてしまった二メアは思わず耳をふさいでしまうが、目はしっかりとその光景を映していた。




「さて、3人駆除完了。あと1人か」


レードは猛毒針で殺害した男たちから目を離すと、まだ見ぬ魔術士を探そうと辺りを警戒する。


「フードの傭兵。君が巷で噂の魔術士か」


「うん?あんたは」


レードの正面から堂々と現れた1人の若い男は何やら嬉しそうに、こちらを見つめる。


「ニヤつくなよ、気味が悪いなぁ・・・俺は別に有名人じゃねーぞ?」


「いやはや、失敬。僕は現魔術派に所属する『導士』の『ネック』だ。よろしく」


「また現魔術派かよ・・・お前ら暇なのか?色んなところに湧きやがって。後さ、自慢しなくていいぞ?階梯とか」


「ふふ・・・そんな口を叩いていられるのも、今の内だよ?僕はこれでも・・・」


ネックという男が何やらまた言う前に、レードは左手に隠し持っている汚臭玉を素早く投擲し『吹き飛べ』と呟くと、衝撃波が起動。


加速力を乗せた球体はそれ自体にも運動力が働き、直撃したら打撲以上のダメージは見込めるはずだ。


レードは不意打ち後に、殺傷武器を使おうとしていたが、ここで違和感に気付く。


「困るなぁ・・・そういう卑怯なことは」


「おいおい・・・」


完全に不意を突いたはずなのに、ネックはニヤニヤと笑いながら、高速起動したのか、土の基礎魔術『土壁』で攻撃を防いでいた。


「僕は土の魔術を得意としていてね。君みたいな武器と魔術を併用するタイプはやりやすいんだ。まぁ、単純な運動能力ではそういうタイプには追いつけないが、高速起動っていうものがそれを相殺してくれる」


「なるほどな、どうりで俺の攻撃を防げるわけだ。土の魔術は物理にめっぽう強いしな。あー・・・こりゃ面倒なやつだぞー・・・『消えたくなる』」


「ふふっ・・・流石に僕としても・・・」


目の前で敵が姿を消したことで、口を閉ざしたネックは、特段慌てることも無く、右手を横に振るう。


「風よ・刃となって・周囲を刻め」


その瞬間、ネックの右手からやや離れた位置に出現した緑色の魔法陣から、突風が発生し、周囲の木々を1つ残らず切り刻んだ。


「目の前で消える魔術。なかなか常人では考えつかないことをやるね、フード君。ただ、今の風の中級魔術である『風車かざぐるま』は自分の周囲一帯を無差別に殺傷する魔術。いくら姿を消していたとしても、意味がないよ」


ネックは得意そうに独り言をこぼすが、もうフードの魔術士の気配は感じられない。


いくら無属性の中級魔術『肉体強化』や防具を付けていたとしても、風の魔術は防げないだろう。


自分の魔力で威力が跳ね上がっているのを知っているネックは、今までもそういった防護系のものを、やすやすと貫通させてきた経験から、確信している。


余談だが、風は炎や水のようにど派手さはない代わりに、汎用性が高いため、好んで使う者も多いのだとか。


「(ま、僕は圧死させられる土が好きだけど)」


けらけらと余裕をこいて笑うネックだが、本来ここに来たのは、旧魔術派の南支部を壊滅させることである。


運悪く仲間が少し減ったが、元よりコミュニケーションは取っていないため、どうも思わないというのが正直な感想だ。


「雑用係が減るのは痛いんだけど、まぁ、別にね」


少し休憩してから進もうとしていたネックは、そこで前方に魔力の反応を感じたのに気付いた。


「ふむ、フード君ではないということは、旧魔術派の奴か。丁度良い、南支部への道案内を頼もう」





「やぁ、お嬢さん」


「あっ・・・」


遠くで観察していた二メアはレードとこの男との戦闘を見ていたため、こいつが敵だというのは理解できる。


しかし、今先ほど放っていた風の魔術。


周囲の木を残らず破壊していた魔術を持つ、この男に恐怖以外の感情は消え失せてしまう。


「君は旧魔術派の子かい?まだ幼いらしいけど」


「・・・」


「黙っていちゃ、分からないなぁ・・・」


困ったように眉をひそめる男は柔和な態度で応じてくる。


「でも、この辺りにいるってことは旧魔術派の子でしょ?うん、そのはず」


「・・・」


「口を割らないなら、少し痛い目に合わせるけど良い?」


「っ・・・!」


わずかに後ずさりした二メアは、すぐ後ろが木であるのに少し遅れて気付いたせいか、後頭部をゴツンと当ててしまう。


「怖がらせちゃってごめんよ。ただ、僕も仕事だからさ」


ネックがニヤリと笑って二メアに近づこうとしたその時、不意に後ろから何かの魔術が飛んでくる。


「・・・」


首を横に傾けて、それを回避したネックはゆっくりと後ろを振り返る。


「生きていたのかぁ・・・でも、どうやって?」


「水矢だけは完璧だと思っていたんだが・・・くそっ」


先ほどから姿が見えなかったレードが悔しそうに歯噛みしているが、ネックは無表情だ。


「僕の魔術をどうやって回避したのかと聞いている」


「俺が自分の手の内を明かすと思うか?ないない。それを言うなら、俺の水矢をどう察知したのか知りたいね」


「・・・苛つくよ、君」


「よく言われるわ」


その会話を皮切りに、レードはウエストポーチから毒針を抜き出し、ネックは素早く暗示詠唱を開始する。


「『土よ・前方に』」


「っ!」


前方から土を圧縮した岩石のような物体が飛んできたため、レードはとっさにしゃがんで回避したが、その隙に新たな魔術を詠唱してくる。


「『風よ・荒れろ』」


体勢が不安定なレードの足元に緑色の魔法陣が現れたかと思うと、その場から上方向に突風が吹き荒れる。


「ぐっ!」


凄まじい風のせいで、体が7メートルほど宙に浮いてしまったレードはまずいと判断し、とっさに暗示詠唱をしたが、同時にネックは追撃を行う。


「これでおしまい。『炎よ・包め』」


完全になすすべが無くなっているレードを囲むように、唐突な爆炎が空中で展開し、辺りの気温が一気に上昇した。


「今のは炎の上級魔術『炎爆えんばく』。詠唱短縮したから、威力は落ちてるけど問題ないか」


誰に言うまでもなく、ネックはそう言うが、二メアが近くで見ていることが分かると、自慢げに近付く。


「どう?一応僕は導士の階梯だから、土と炎の上級は使えるんだ。惚れ惚れするくらいの戦い方だろう?」


「レイ先生・・・」


「うん?フード君と知り合いなの?あー、そりゃ申し訳ないことを」


「うっ・・・なんで・・・」


「泣くなよー・・・傭兵なんて死んでなんぼの仕事だろ?それに加えて派閥にいる魔術士なら、いつ死んでも文句は言えないさ」


いきなり目の前で、恩師が死んだと知った二メアは何も言えずに涙を流す。


それを見ているネックは、久々に上玉を見つけたと心の中で言うと二メアの肩を叩く。


「ほらほら。僕はこんなに強い魔術士なんだ。見たところ君じゃ僕に敵わないだろうし、素直に言うことを聞いてくれないかな?僕としても君みたいな可愛い子を傷つけるのは忍びないし。あ、ならさ。今から派閥移動とかどう?これなら君も僕と同じ派閥だから、余計なことを考えなくていいし。それに僕も君を妻にしたいと思っているんだ。悪くないと思うよ?わりと僕も派閥の中では位が高いし」


「・・・(炎よ・剣へ)」


「嬉しくて何も言えないって感じか?ふふ・・・僕も嬉しいさ」


二メアが小声で暗示詠唱しているのには気付かないで、ネックは笑顔で手を差し伸べる。


「んじゃ、これから現魔術派の支部まで行くけど、何か・・・」


ネックが背後を見せた瞬間、二メアは『炎剣』を起動させ、右手に持った炎の剣で斬りかかる。


「分かりやすい・・・んだよねぇ!」


ネックはそれを分かっていたとばかりにサイドステップで避けると、暗示詠唱を開始する。


「『風よ・前方へ』」


素早く右手に魔法陣を展開すると、二メアに向かって突風を放つ。


「きゃっ!」


魔術による直接的なダメージこそ少ないが、あまりの風で後方に吹き飛ばされた二メアはいくつもの枝に腕と足を切り裂かれ、出血をしてしまう。


「ま、そんなところも可愛いさ。反抗できないように、ゆっくり調教すればいいだけだし」


「いた・・・い。うぅ」


「うーん?まだ魔術士としてはひよっ子か?君。そんな傷で弱ってちゃなー・・・」


ネックは左腕を押さえてうずくまる二メアに近づき、抱き寄せようとするが、それを拒むように彼女は後ろに下がる。


「あはは。嫌われたもんだ」


「そうだなー。女に対して魔術撃つやつは引かれるだろ」


「・・・フード君、しつこいね」


またもや少し離れたところで茶々を入れるレードは若干の擦り傷や打撲はあるものの『火傷』した後は見当たらない。


「また回避かよ・・・!どうやって!」


「二度も言わせんなよ・・・ったく、これだから上級魔術を使えるやつは困るんだ。範囲と威力おかしいし、派生もばんばんしやがって」


「『風よ・荒れろ・荒れろ・吹き荒れろ!』」


「『逃げる』」


レードの周囲で今度は無数の真空の刃が出現すると、乱雑にその場で回転し、辺りを切り刻む。


それと同時にレードは自分の腹に衝撃波を派生させた『離脱』という魔術を起動させ、その場から離れる。


勢いを殺せず、木に衝突してしまうが、魔術をくらうよりは軽傷なのは明らかだ。


「なるほど。自分に衝撃波を当てるとかいう意味の分からない魔術で、僕の攻撃を凌いでいたわけか・・・くっくっ・・・面白い!」


「いつつ・・・まぁ、目の前でやればバレるか。そう、この自爆移動でお前の魔術を避けてるってわけ。あ、でも真似すんなよ?かなり骨と体に来るからな」


「あはは!するわけないだろう!そんなバカな事をしなくても、魔術には遠距離から相手を封殺できるという利点があるんだ。わざわざ自分が移動しなくてもいいわけだよ!」


「普通はそうだろうな・・・だが、俺は違うんだよ」


レードは自嘲気味にそういうと、ネックの方に向き直る。


「その近くにいる女はお前のか?」


「うん、そうだ。僕の妻になる女性」


「ちょっと!レイ先生!何を!」


「何をって・・・そもそもお前と俺は初対面だろ?やめてくれよ、そういう逆ナン」


「せ、先生・・・」


レードは両手を知らないというように顔の横で振ると、ネックに告げる。


「俺がお前に勝ったら、そこの女をもらってもいいか?戦力差は明らかだが」


「はは!良いよ別に!まぁ、無理だとは思うけどね。フード君は防戦一方だけど、僕は攻撃を止めていない。これがどういう意味かは分かるよね?」


「もちろん・・・たぶん、認識の違いはあるとは思うけどな・・・『吹っ飛べ』」


またもや急に右手に隠していた針を投擲すると、レードは続いて暗示詠唱を開始する。


「それは効かないって!『壁』!」


土壁を高速展開させたせいで、衝撃波で加速した針はカキン!と弾かれてしまうが、レードの狙いはそれではない。


「『光を盾に』」


ネックから西に位置していたレードは『幻影』を起動させ、彼の視覚範囲外に行き、さらに距離を取る。


「だからさ!気配とか、姿を消しても意味ないんだって!『爆破』!」


レードのいた位置から消えた位置を予測したネックは炎爆を短縮詠唱させ、辺りを炎の海に変える。


「ったく・・・これで流石に」


「生きてるんだなーこれが」


「っ!」


無属性の基礎魔術『防炎』である程度のダメージは落としたが、ところどころ火傷をしているレードはいつも着ている灰色のローブが破けているのは気にせず、ピースサインを決め込む。


「ここまで防御に長けているとはね・・・驚いたよ!」


「耐久戦は得意だな、確かに」


『でも』と付き加えると、レードはこめかみを指でつんつんと突く。


「お前の侵蝕率って今『90%』くらいだろ?そろそろ派生魔術は控えた方がいいんでね?」


「・・・君はどうなんだ」


「俺?うーん・・・30%くらいかね」


「はぁ?あれだけ魔術を使ってそれくらいだと!あり得ない!」


「いやだって、俺は属性魔術使ってないし。そんなもんだろ」


ネックはレードが何故そこまで侵蝕率が低いのかは知らないが、余裕そうな態度を見るに嘘ではないのが分かる。


現にネックは魔力消費と侵蝕率上昇で体がだんだんと震えているのに加え、額にはびっしりと汗をかいている。


この両者の違いを客観的に見ると、どちらが有利なのかは明白だ。


「くそ!なら、これで最後にしてやる!」


半ば投げやりにネックは叫ぶと、暗示詠唱を開始するが、それに合わせるようにレードも開始する。


「『大地の槌よ・敵を討て』!」


「我が代償は血・形成するは愚直な弾丸・被弾者を氷像へ」


ゆっくりと詠唱するレードに対し、ネックは派生させた土の上級魔術『土撃どげき』を起動する。


ネックの魔法陣から超巨大な土の槌が出現すると、凄まじい勢いでレードの頭上まで行き、振り下ろされる。


頭に直撃したら、人間など潰れるくらいの質量と勢いを増している槌があと少しで、レードに当たるというところで、今度はネックが驚くことになる。


「何だ!その『血の色』は!」


通常の炎の魔法陣の赤色とは異なる『どす黒い』赤色をしたレードの右手にある魔法陣は、この短い時間で完成し、小さな赤い『弾丸』を生み出していた。


「さらば、導士さん」


レードが苦痛まぎれにそう言うと、高速射出された血の色をした赤い弾丸はネックの腹に突き刺さる。


次の瞬間、ネックの身体はまるで氷像になったか如く、瞬間凍結してしまった。


「くっ・・・」


詠唱者が死亡したからか、ネックの放った土撃は間一髪で消滅したものの、レードはその場に片膝をついてしまう。


「先生!」


二メアがレードの傍まで行くと、その異常さが目で分かる。


何の魔術を使用したかは不明だが、超高速かつ敵を一発で死亡させてしまうほどの魔術だ。


一気に侵蝕率が上昇したせいで、体調が悪くなったと考えるのが無難だろう。


「あぁ、悪い・・・今は、ちょっとな」


「私はどうすれば・・・!」


「どうか出来るなら頼んでる。今は静かにしてくれ」


「・・・はい」


軽口ではなく、静かに言うレードは深呼吸を何度かすると、ゆっくりと立ち上がった。


「はぁ・・・」


「あの・・・」


「怖い目にあったよな?大丈夫だったか?」


「はい、傷は痛いですけど、大丈夫です」


「そうか。わりぃな、さっきは。知らないふりをしてて」


「今考えたら、分かります。あそこで私と知り合いと言ったら、人質に取られていたかもしれませんよね。なのに、私は気が動転していて・・・」


二メアは安心したのか、涙声でレードの背中にすがりつく。


「俺は裏切るのが本分だからな。仲間になったやつも必要なら、平気で捨てるぞ?今回はたまたまだ」


「嘘ですよ。それなら、私を置いて逃げれば良かったじゃないですか」


「あー、うるさい。それにくっつくなよ・・・気持ち悪い」


「酷いですよ!傷心している女性にそんな言い方は!」


「女性・・・?そんなのどこに・・・俺の傍にはガキがいるくらいで。あっ、もしかして二メアには見えるのか?こんな森に女が」


レードは二メアがガミガミと後ろで騒ぐのは無視して、旧魔術派の南支部まで足を進める。




「(魔力侵蝕率は75%か。節約してても、まだ『あれ』の代償はでかいか)」


あと少しで支部というところで、レードは手持ちの小道具を確認して、自分の戦闘能力の無さに呆れて溜息を吐く。


「(4属性魔術が使えなくても何とかなるとは思っていたが、今日の戦いでまた痛感したな)」


二メアが嬉しそうに近所の女友達と話をしているのをボーっと眺めて、レードはフードをさらに下げる。


「(潮時か。俺は元より単独行動派だし、二メアとこれ以上交流を持つのは避けるべきだ。流れ者でいる以上、対立する時が来る。その時に無駄な感情があると、殺すことになった際に手間取る可能性が高い)」


レードは『よし』と独り言を小さくこぼすと、シンシアのいるという民家まで進んだ。


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