表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『男女比 1:30 』 世界の黒一点アイドル  作者: ヒラガナ
二章 南の島の黒一点アイドル
51/343

設立宣言!

50話記念!

本日は二話投稿します。こちらは二話目です。

「それにしても、俺がいた場所の空気が売られているなんて、にわかには信じられませんね」


国が違えば常識も違う。

戦国時代を開きそうなファン組織の争いについては何とか受け入れたが、空気売りの部分だけは「そういうものかぁ~」で流せなかった。流してはいけないと思った。


「特段おかしいことじゃないですよ。ほら、みんなのナッセーのリハーサルに向けて、あたしと一緒に踊ったことがあったじゃないですか」


武道場で幼女たちが野獣化しない方法を検討した時のことか。

音無さんは一緒に踊った、と言っているが踊ったのは俺だけで、あなたはヨダレ垂らして「ぐるるる」唸っていただけだよね。


「三池さんの匂いって、とてつもない多幸感を生むんですよねぇ。傍にいるだけで、高級店のマッサージを受けて高級レストランで食事して高級ホテルのベッドで眠るような」


俺、一回人間ドッグに行って身体をよく調べた方がいいかもしれない。変なものが体外へ流れている可能性がある。


「三池氏をじかぎするに勝る幸福はなかなかない。それが叶わなくても残り香を含んだ空気を採取する価値は十分にある」


「タクマさんを直嗅ぎ、か。ごくり」

「お姉ちゃん、何か入れ物持ってない? この際、タッパでもいいや」

「しまったわね、近くのコンビニに売っているかしら」


周囲の反応を見るに、俺の匂いに商品価値があると認めるしかない、非常に残念だ。


「それで、孤高少女愚連隊のみなさんが中毒状態になっていると?」


「はい、タクマさんに迷惑をかけるなんてどうしようもない奴らで、ほんとすみません」


「なってしまったものは仕方ないですよ。でも、中毒症状かぁ……タバコみたいに禁煙出来ないものですかね?」


中毒の原因者として何か言わないといけないと思い、簡単なコメントを口にする。


「拓馬はんの空気を定期的に摂取したっちゅうことは相当重い中毒や。禁タクは禁煙よりずっと難しいで」


禁タクって何だよ、と真矢さんの言葉に内心ツッコミを入れていた俺は「ん?」と、言いしれぬ不安に襲われた。


待てよ、真矢さんは何て言った?

定期的に俺の空気を摂取すると相当な中毒……そ、それって!


「ま、真矢さん。どうして禁タクが難しいってハッキリ言えるんですか?」


訊くのが怖い、けれど訊かないでずっと恐怖を感じるのはもっと嫌だ。


真矢さんが、頬に手を当てて恥ずかしげに言った。


「そら、うちも拓馬はんの中毒者やからや」


「もちろんあたしもです!」

「むしろ中毒でない者は人としてまだまだと言わざるをえない」


ダンゴたちも続く。

三人の表情は中毒宣言しているのにどこか誇らしげだ。


ちくしょおおおおおおお!!

俺は頭を抱えた。


そうだよな! 

パックに入った空気を吸っただけで中毒になるなら、ずっと俺といる人たちが中毒にならないわけがない。ってことは――


「じゃ、じゃあ南無瀬組の他の人も……」


「三池氏、思い出して欲しい。漁業組合の仕事を受ける前日、三池氏が夜中におにぎりを握った時。どうして南無瀬組の諸君が勤務の休憩時間にここへ戻って来たのか」


「た、たしか風呂に入って着替えるためって」


「わざわざ勤務の休憩時間に南無瀬邸まで戻り風呂。それもあれだけの多人数で、まったくもって不自然。彼女たちが帰ってきた本当の理由は、三池氏の空気を吸引するため」


なぜ、真実というものは俺の心を鋭利に切り裂くのだろうか。


思い返してみると、俺がここに住むようになってから何日も姿を見なかった人はいない。

黒服の南無瀬組だから勤務体系がブラックで長期休暇が認められていないのかな? 

と思っていたが、真の理由は中毒状態で南無瀬邸から離れられなかったからか……


音無さん、椿さん、真矢さん。

三人も同様だ。一応、不定期ながら休暇は与えられているはずなのに、彼女たちは街へ買い物に出ることもなく俺の近くにいた。

それは重度の中毒者だったから、なのか。


なんてこった! 本当になんてこった!

中毒は孤高少女愚連隊のことだと、対岸から見ている気分だったがまさかこっち側の方が甚大な感染流行パンデミックになっていたとは!


「拓馬はん、うちらのことはそない深刻に思わんといて、本望やから。あっ、男の陽之介兄さんに影響は出てないから大丈夫やで。それに既婚者の女性も無事や。女性は結婚すると旦那しか目に入らないようになるさかいにな」


そ、そっか。

おっさんとアッーな仲になったり、既婚者と昼ドラばりのドロドロ展開になることはないと。

多少心が軽くなったが、ヤバい事態に変わりはない。



「中毒の対処法、絶対に見つけましょう!」


俺は吠えるように言った。

いつの日か俺は日本に帰る。

その時に南無瀬組を始め、世の女性たちが禁断症状に陥ったらこの世界が世紀末状態になっちまう。


「あちきらのことをガチに考えてもらって、タクマさんには感謝しかないです」


姉小路さんが感激したように言うが、すんません、私的な理由がアリアリです。


「中毒の件も大事やけど、今はファン同士の争いを止めることが重要や」


そうだった。俺の空気を売るバイヤー組織や暴力的な団体を制御しないと根本的な解決にならない。南無瀬領の治安がどんどん低下してしまう。


「それについて、是非とも、た、タクマさんにはファンに向けて落ち着くようメッセージをお、送って欲しいのですが」


お姉さんがたどたどしくお願いしてくる。

なるほど、俺が仲裁すれば効果は――


「悪い方法やないけど弱いで」


が、俺をマネージメントする真矢さんは納得しなかった。


「みんな考えてみ、拓馬はんの活動はまだまだ序の口や。これから大きな仕事が増えていけば、ファンは興奮して拓馬はんへの想いを強くしていく。強い想いは柔軟性に欠けるんや。思想の相違によるファン同士の争いは、今後も必ず付き纏うで。その度、拓馬はんに落ち着くようメッセージを送らせるなんてナンセンスや」


「じゃあどうするんですか?」


姉の意見をバッサリ斬られたことで、委員長さんが少しムッとしながら尋ねた。


「今、ファンがにらみ合っているのは、拓馬はんのファンコミュニティが無法地帯やから。せやからみんな自分たちの主張だけを言い合って対立し、従わない者には力で応対しとる……前々からファンの問題は南無瀬組に届いとった。それでな、うちと妙子姉さんで考えた解決策があるんや」


一度言葉を止め、真矢さんは全員を見渡した、今から言うことをよく聞くように、と伝えるように。


「ファンを一つにする、絶対的な秩序をつかさどる機関を作ればええねん」


「機関……まさか!?」


俺の驚きに、真矢さんは笑顔で大きく肯いた。


「せや! 作るで、拓馬はんの公式ファンクラブ!」


50話&200000文字突破しました!

第1話を投稿して2か月半。

気力が折れずに書き続けられたのも、読者様の反応あってこそです。誠にありがとうございます!


さてこの作品、当初は100話くらいで完結すればいいなぁ~と思っていたのですが。

50話の時点でまだ二章の半分。

不知火群島国は、東西南北の島、そして中央の島を合わせて5つの島からなっております。

その中の南の島の話だけで50話。いったい完結するには何話必要になるか……

気長にお付き合いくだされば幸いです。


感想、ブックマーク、評価。本当にありがとうございます。

読者様からの反応が作者のやる気になり、それが作中の女性陣のる気に繋がり、最終的に主人公が泣きを見る、という仕様になっております。


今後とも本作品をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 旦那いたのに理性失った人がいたような。
[一言] 主人公さっさとやられて下さい、然るべき人に
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ