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『男女比 1:30 』 世界の黒一点アイドル  作者: ヒラガナ
三章 黒一点偶像と少年少女のお見合い性愛闘争
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大事件の始まり

本日は連載二年目突入記念として、五話連続投稿しています。

こちらは五話目です。

熱は引いたはずなのに別の悪寒が、それもかつてないほど強力なやつが、俺の身体を駆け巡る。


嫌な予感じゃない、嫌な確信が「おっ、出番かな?」と頭をもたげる。




ネガティブな感情に囚われた俺は、ガラガラ――


「ひっ!」


と、開いた保健室のドアに思わず悲鳴を上げてしまった。



「あらぁん、やっとお目覚めしたのかしらぁん」

こ、この野太くオカマっぽい声は……


乙姫おつひめさん! なんでここに!?」


心野こころの乙姫おつひめさん。

南無瀬領で絶賛放送中の『みんなのナッセー』のフロアディレクターだ。俺にとってアイドル初仕事からの付き合いで、南無瀬組以外では最も交流の長い人と言えるだろう。


「あっ、そっかぁん。タクマくぅんはオッツーと知り合いなのよねん。はじめましてぇ、わたしは心野 丙姫へいひめ。オッツーの三つ子の妹よん」


へ、へい姫さん?

三つ子って……白衣の上からでも分かる筋肉、それに厚化粧、顎に青髭生やした男より男らしい姿は乙姫さんそっくりだ。

って、三つ子ってことは、この存在感バリ高の人がまだ後一人いるのかよ。


「丙姫殿は保健室の主でござる。夜通しでタクマ殿の看病をしていて、先ほどまで仮眠を取っていたのでござるよ」


そう言えば、スネ川君が言っていたな。

女性なのに男に間違われて襲われるくらいの外見の、医師免許を持つ保健の先生がいるって……


「看病していただき、ありがとうございます!」


「いいのよん。あっ、着替えさせたのは男子たちだから安心してねん。いくら私でもタクマ君の裸を見ると危ないからぁん」


「は、はぁ……」肉食と化した丙姫さんか。金棒持った鬼より怖いな。「そうだ、それより丙姫さんの携帯を貸してくれませんか?」


「携帯? 悪いんだけどぉん、男子たちに持っていかれちゃったぁん」


だ、男子たちに!?

いよいよもって悪寒が最高潮に達しようとする。


そこへ――


「あっ、タクマさん!」


俺が今もっとも会いたく、それでいて会いたくないトム君が廊下から現れた。


「元気になったんですか!? 僕たち、タクマさんの激励を胸に頑張っていますよ!」

尻尾を振る犬のように、俺が座るベッドへ駆け寄ってくるトム君。

目がキラキラ……いや、ギラギラしとるっ。いつものトム君じゃない!


「へ、へえ……が、頑張っているんだ? ち、ちなみにどう頑張っているんだい?」


訊きたくない、でも訊かざるを得ない。

トム君、俺、君を信じているからね。何も悪いことしてないよね?


「はいっ!」トム君は素敵な笑顔で言った。

「手始めに警備室を占拠しました!」


ファーーーーーーーーーー!!


「次に、この交流センターの全ブロックを外から侵入出来ないよう封鎖しました!」


あばばばばばばばばばばばば!!


「そして、タクマさんの言葉通り堂々と自分たちの主張を伝えました。ネットの動画共有サイトを使って『我々は女子との交流に断固反対する。我々の帰省が認められない限り、ここに籠城する』って。世界中に流しました!」


らめえええええええ、もうやめてええええええ!!


「大丈夫ですよ! タクマさんの名前は一切出していませんから、ご迷惑はかけません! これは僕たちの闘争なんですから!」


胸を張るトム君――の横にいたヘイ姫さんがテーブルのリモコンを取った。

それでピッとテレビを点ける。


『こちらは東山院市少年少女交流センター前です。ご覧ください、高さ五メートルはある分厚い門と塀が私たちを阻んでおります』


テレビの中、レポーターの女性が興奮を隠しきれない様子で実況している。


『男子のみなさんが交流センターの籠城を発信してすでに八時間。警察もこの壁の前では手出しが出来ず、時間だけが過ぎています。交流センターは男子を住まわせるために設計されており、その厳重さが仇になったと言えます。これまで男子が起こした事件としては家庭内の暴力事件くらいでしたから、この前代未聞の大事件に関係各所の動きが鈍いようです』


『何か新しい情報は入っていませんか?』ニュース番組のスタジオのアナウンサーが、実況レポーターに質問する。


『……はい、最新の情報としましては、昨日ミスターと名乗る男が交流センターに入ったとのことです。以降、出た記録がないためまだ中にいると思われます』


『ミスターとは、コンテストを延期に追い込んだ男性のことですね。彼がこの事件に関わっているということですか?』


『確定した情報はまだ届いておりません。しかし、彼が男子のみなさんを扇動した可能性はあると思われます』


がっつりミスターが疑われとるぅぅう!!

そういや昨日、交流センターに入ろうとした時にメアリさんと会ったよな。そこから情報が流れたのか……


まだ、ミスターがタクマだとは報道されていないけど、これって時間の問題なんじゃ……

もし俺が首謀者扱いになったら、もうアイドル活動どころじゃないよね。

犯罪者だよね、俺ェ……


「お、おのれえええ!! タクマさんが僕たちを扇動だって!? デタラメ言うなっ!」

テレビに向かって怒るトム君……最初に持った気弱い子豚の印象は粉々になっている。


そうだね、デタラメだね。

扇動じゃないわ……これって洗脳やん。

やっぱり男子たちにBUTTER Projectの熱血ソングは刺激が強過ぎたんだ。


涙目になる俺に、

「見ていてくださいね、この闘争。僕たちが勝ってみせます!」

トム君が男らしく宣言した。





このように、不知火群島国の歴史に残る大事件『東山院市少年少女交流センター男子籠城事件』は、俺が眠っている間に幕を開けていたのであった。



そりゃ闘争だって、男子たちを煽りましたよ。

でも、これってガチな学生闘争じゃないですかやだーーーーーーーーーー!!


次回、他者視点で主人公が寝ていた間の話や、外の状況について説明します。

連載二年目も本作品をよろしくお願いします。

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