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Taaaaaaask666 マワ周りヲを片ヅケ付カタけろ

 続きを心待ちにしていた皆様、長らくお待たせして申し訳ございませんでした……

 難産アンド難産で、ようやく再びエンジンをかける事ができました。


 旧世界とやらで手に入れたドラゴンテイミングの首輪……こいつをレヴィリスかエンリコ、どっちに付けるか。


 ――『身体のほうは新世界へ。旧世界と新世界とはまた別の、第三の世界から別の魂を取り込んだ。ダンジョンのコアが欠けていたのは、身体が新世界へ行った時に、もう片方の欠片をゲートにしたからなのね』


 レヴィリスがくたばればエンリコもくたばるし、その逆もある……当人にとっちゃあ厄介だ。


 シグネ――もといジークリンデやこの前の闘技場にしゃしゃり出てきたドラゴンもどきのガキを見るに、レヴィリスはいろんなボディに乗り換えができるようだ。

 ……しかも乗り換えボディにされた奴は大半が、人形みたいになっちまうらしい。

 だとしたら――


「――エンリコ。お前さんに首輪を付けるのが一番いい」


 俺が歩を進めても、エンリコは後ずさる事なく見つめ返してきた。

 それでいい。

 だが!



「待ってェ……待っテェぇぇ……」


 背後から呼び止める声がしたから振り向いて見りゃあ、血まみれのフィリエナがゆっくりと起き上がってやがった。

 仕事の邪魔だぜ、もっと寝ていてくれよ。


 フィリエナはどこかで変なものでも喰ったのか、首が変な音を立てながら伸びていく。


「くっ、ぐげっ、け、えぇっ、うっ」


 口は耳の近くまで裂けていくし、眼は増殖して額を覆い尽くした。

 ああ……お前さんも、あの女に何かを喰わされたのかい。

 だが、お前さんのこれまでの行いを振り返ると、助ける気にはなれんな。


「アアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


 その絶叫でツトムの坊やもお目覚めだ。

 フィリエナは、目覚めのキスを迫ろうとしている。


「わああああああああああ!? ば、ばけ、化け物!?」


「ダーリンンンンンンン……」


「く、来るな……来るなぁあああ!!」


 お前さん確か、その女と愛し合っていた筈だったよな。

 形が変わっただけで化け物扱いとは、冷たい野郎だ。


 まあいいさ。


 ズドンッ!

 フィリエナの両脚をブチ抜いてやったら、思い切り転んだ。


「余計な仕事を増やしやがって」


 隣でクラサスの野郎も眼鏡を指で直していた。


「私の仕事も増えた。これはジルゼガットの差し金による概念汚染だろう」


「ご挨拶ね? 私がそういう事をすると思う?」


 ああ思うとも。


「今回だけお前さんじゃないとしたら、誰だっていうのかね」


 人を異形化させる呪いのようなもんを、お前さんは好き好んで使う。

 紀絵もロナも、そうだったろうに。



「アァアアアアアアア」


 叫び声を上げながら突進してくる。

 しゃらくさいぜ。

 俺は瞬間移動で避けた。


 ロナはとっくのとうに動いていて、遠巻きから見ているだけだった。

 利口な判断だ。

 相手にできる奴だけ相手にすりゃあいい。


 俺のターゲットは決まっている。


「受け取れ!」




 カシャン。



 首輪を付けた。

 いや、もっと正確に――こう表現しようじゃないか。


 エンリコは首輪を受け取り、自らの首にそれを付けた。

 世界を守るために、自ら運命の奴隷である事を認めた。

 ――こうだ!



 ジルゼガットにとっちゃあ、おもしろくないようだがね。


 そうか、お前さんは嫌いかね。

 俺だって、あまり好きじゃない。


 だが、知った事か。

 知った事かよ。

 こいつがレヴィリスを嫌っているなら、奴のコレクションのボディから引きずり出す方法をどうにか探して見つけ出すだろうさ。

 そして、それは俺の(・・・・・)役目じゃない(・・・・・・)


「思ったより動きが悪いけど、どうやら本調子じゃないようね? フィリエナ!!」


「アアアアァァァァァァ……」


 ゲップみたいな声しやがって。

 ろくなもんじゃない。

 だいたいお前さんは、仲間がクソ野郎に犯されて、子供まで授かっちまった状況でありながら、それを更に追い込もうとしただろう。


 そこにいるガキは、女を侍らせていた。

 なのに、女のうち一人が腹に授かりものをしたってだけでカンカンと来たもんだ。


 どいつもこいつも似たような事を抜かしやがる。

 不公平にも程があるぜ。


 男がだらしない下半身を許してもらえるなら、女にだって同じようにさせてやるべきだ。

(ちなみに俺はロナと紀絵に他の男を勧めようとしたが、ヘソを曲げてなだめるのが大変だった)



 本当は一緒になりたい(・・・・・・・)だろうが、酔っぱらいのオツムで考えられる事なんざたかが知れているってもんさ。

 おとなしく休んでおけよ。


 ズドンッ!


「オ゛ァ」


 スペシャルバレット“魔女の口付け”で仮死状態にする。

 姿かたちは元には戻らないが、少なくとも動きは止まる。


 もしも感動の再会を果たすには、解呪用の銃弾“王子の口付け”を撃ち込まなけりゃならんが、それを手に入れるのはお前さんじゃあ無理だ。

 残念だったね!!


「さあ、ツトム。お前さんの命は今まさに、この俺に救われた!

 お前さんが何をしようとしていたのかは知ったこっちゃないが……そうだね。鼻と足が痛くて(・・・・・・・)泣けてくるだろう」


「……くそぉおおああああああッ!!!」


 おお、喉から血を出しそうな声をしてやがる。

 頑張る姿はなんとも可愛らしいじゃないか。


「恨みを持っていた勇者クンといえば、グレイ・ランサーもといクレフ・マージェイトの姿も見かけないが」


「あいつはいじめられすぎてガイジになっちゃったよ」


「ああ、そうかい。いけない口だ。塞いでおこう」


 タオルをツトムの口にブッ込んで、顎を殴る。

 ツトムは白目を剥いて、ぶっ倒れた。

(ちゃんと加減はしたぜ。それに今まで何度も警告してやった筈だがね)



 さあ片付いた!

 状況を確認しようか!




 ―― ―― ――




 マキト御一行様。

 リーダーのマキトが俺に同情したせいで、俺に全員ぶっ倒された!

 何、ちょっと休めば動けるようには加減してやったぜ、俺は。


 旧世界組。

 俺が来た時にはもうボロボロだったし、リーダーのエンリコは憑蝕竜レヴィリスとルーツが同じだったせいでドラゴンテイミングの首輪を通してコントロール役を背負うことになった!


 ツトム&フィリエナ。

 ツトムは死にかけ、フィリエナは概念汚染で怪物になった挙げ句に仮死状態オネンネだ!


 グレイ・ランサー。

 そういや姿を見ていないが、構わんさ。

 正気を失っているなら、そっとしておくか楽にしてやる(・・・・・・)か。

 俺じゃなくても、どうとでもできる。


 帝国騎士団。

 帰りの船がほとんど残っちゃいない。

 事実上の壊滅だ。

 帝都で派手にやられてきた矢先なんだから、無茶はするもんじゃないぜ。


 一方、共和国だ。

 帝国に比べりゃそこまで大損ブッこいちゃいないようだが、ガキどもを持ち帰る余力はどうだろうね。

 行けなくもないが、その辺りはマキトが取りまとめたらいいんじゃないかね。


 いわゆる痛み分けって奴だ。

 この世界を生活圏にしている連中同士、上手く噛み合ってくれりゃあいい。



 続いてクラサスとジルゼガットだが、大人の会議の真っ最中だ。

 尻尾を掴んで馬の脚を縄で括ったなら、やらなきゃならん事なんざ他に殆ど残っちゃいない筈だが。

 茶菓子でもつまみながらゆっくり腰を据えなきゃできない話らしい。


 それもそうだろう。

 クラサスもジルゼガットも、ただでくたばってやるようなタマでもあるまいよ。


 あちこちの世界をタダで飛んで回るジルゼガット。

 そこかしこの世界に空いた穴を塞ごうとしているクラサス。


 おそらく、クラサスにとってジルゼガットは一番、気になる相手だろう。

 真犯人とも重要参考人ともつかない今、じっくり調べなきゃならない。


 だが、それは俺の役割ものがたりじゃない。




 森の奥から、少しばかり派手な身なりの騎士がやってきた。

 鎧の形を見るに、おそらく俺の依頼主……共和国の議会騎士ベラールだろう。

 俺は元気に挨拶してやるとする。


「ごきげんよう、俺だ。お前さんが依頼主かい」


「ふざけるな! ふざけるなよ、ダーティ・スー! 貴様が遊びすぎたせいで、我がグランロイス共和国は莫大な額の被害を被った!!」


 このおかんむりな所を見るに、こいつが依頼主で間違いないだろう。


「だがこの世界じゃあ誰も俺を殺しちゃいない。お前さんは確かにこの短い期間、俺を飼い慣らしていた。タヌキがオオカミを飼い慣らしていたのさ! その栄誉を――」


 ドスンッ。

 足元に手投げ槍がブッ刺さる。

 右足と、左足の、その間に。


「これは警告だ。次は胸に当てる」


「頼むよ、大将。話は――」


 瞬間移動と煙の槍で、ベラールの顔面をボコボコに。

 そして首根っこを引っ掴む。


「――最後まで聞けって、ママから習わなかったのかい!」


 朽ちた倒木に、そのツラをキスさせる。

 何度も、何度も、血まみれになるまで何度も!


「“怪物達”は“適正に管理する”と、確かそういう話だったろう」


「う、うぅ……」


「“人間”を“保護する”の間違いだ。俺のような奴に、それを言わせるなよ」


 マキト。

 これ(・・)する(・・)のがお前さんの役割じゃあないのかい。

 ちょっとブチのめされただけでのんびり休みやがって、情けない野郎だ。



 ズドンッ!!

 そうして依頼主サマは、無事にくたばった。


「あばよ、野郎ども」


 俺とロナの懐中時計は黒い霧を吐き出した。

 元の世界へと帰る時がやってきた。

 いつもとは違う、任務失敗という形でね。


 別に、失敗で構わんさ。

 少しばかりトサカにきていた。

 路傍に酒をぶち撒けるのは、時には気分が晴れるってもんだ。




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