Extend2 どこまでも身勝手な復讐
今回は復讐の戦士グレイ・ランサー視点です。
かつて俺――クレフ・マージェイトは、神童ともてはやされた。
雷を纏った鎖。
現地民の英雄よりも遥かに高いステータス。
そして何よりポーズ画面を呼び出して時間を止めている間に各種回復アイテムやドーピングアイテムが使用可能というチート。
あるとき、高校生達が日本から転移してきて。
彼らは、みんなして特別な力を手に入れて。
そのうちの一人……軒田九呂苗が助けを求め。
そして、俺の所に来た。
『私の彼氏、一真君が、友愛村という所に連れ去られてしまったんです……』
思えば、それが全ての始まりだった。
俺は仲間を連れて、チャラ男ヤンキーホモ悪魔のいる友愛村へと向かい。
運命に導かれるままに……などと無邪気に信じながら。
そこで俺は、ダーティ・スーに気絶するまでボコボコにされ。
のみならず肥溜めにまで叩き落とされ。
両脚は切り落とされ。
前髪の生え際は焼かれ。
そして。
――『つーか、センパイ。ゲイは男なら誰でもいいとか思ってんの?
逆に訊くけどさー、センパイは女を見たら誰彼構わず犯すのかよ? うっわ、ケダモノですか~? コッワ!
ていうかさ、あんた前世オタクだろ? 俺もそうだけどさ。圧倒的にたくさんいるリア充からすりゃ、底辺なんてみんなキメェからさっさと首吊ってくれねーかなぁッ!!』
チャラ男ヤンキーホモ悪魔には、なじられ。
ダーティ・スーには……
――『どうせ前世では引きこもってパソコンしかやらなかっただろう?』
ダーティ・スーには…………。
――『お前さんはお前さんの守りたい弱者だけを護り続ければいい。相応しい姿に、俺が加工してやる』
何もかもをメチャクチャにされて、男の象徴を切り落とされた。
気がつけば、俺は全てを失っていた。
赤毛の剣士アマンダ。
金髪の魔術師ベル。
ダークブラウンの髪をした罠魔法師ドロテア。
大盾使いゲルダ。
巡礼者エウリア。
剣客ウィルマ。
みんないなくなってしまった。
俺の手元に残ってくれたのは、返り咲きのフォルメーテだけ。
フォルメーテから聞かされた話によれば、俺が気絶した後に、九呂苗が俺を騙していたという。
一真は恋人なんかじゃなくて。
ただの横恋慕、略奪愛に、俺は付き合わされただけだった。
ボロボロになった俺を、フォルメーテは甲斐甲斐しく世話してくれた。
しかし。
――『残念ながら私達は、これ以上ここにいられないようです。領主様の使いの方が、クレフ様を訪ねてきました。
使いの方はもうひとりの客人――オミサワと名乗る異世界人を連れてきていました。クロエという少女の失踪についてですが、あなたがそれに伴って処罰を受ける必要があると……』
どこまでも、碌でもない。
異世界からやってきた人達を保護区から外に出したという罪状が新たに作られており。
俺はそれに違反したことにさせられ。
罰金と、冒険者ランクの初期化……。
既に友愛村での顛末によって失墜していた俺の名声は……。
これによって悪名へと決定的に転じた……。
踏んだり蹴ったりだったが、それでも世話を続けてくれたフォルメーテは、俺に錬金術師を紹介してくれた。
元の姿に戻れると。
PTSDによって失われてしまったチート能力も、きっと元通りに使えると。
そう言われ、その言葉を信じて手術を受けた。
数ヶ月のリハビリも、織り込み済みだ。
その間に俺はほとぼりが冷めるのを待とうじゃないか。
しかし俺は……手術によって女の身体になってしまった。
額の火傷は消えかかっているし、禿頭も治ったが、錬金術師が言うには……。
――『君の女体化は……どうやら副作用だな。やはり、男の象徴を取り戻さねばならないようだ。両脚も、治癒魔法が通用しない呪いに掛かっている……情報によれば、クロエなる少女に移植されたという』
複数人もの神官を連れた錬金術師の言葉は信じても良さそうだった。
だって九呂苗は、俺の知っている女だ。
なにかに騙されながら、俺を騙して、俺を陥れた結果、俺のアレを移植されるなんて狂気じみた実験のモルモットにされたのか……。
絶対に復讐してやる。
全員に。
リハビリを繰り返す毎日の中で少しずつ身体は勘を取り戻していた。
武器も、錬金術師から出世払いで購入した試作品の“大火球槍”がある。
憎しみを魔力へと変換するというこの武器は、俺と相性抜群だった。
俺がダーティ・スーに負けてから、ちょうど三ヶ月が経とうとしていた。
そろそろと思い、実行に移した。
かねてより考えていた事を。
俺は、俺のモノを取り戻す旅路の傍ら、俺を裏切った女共とダーティ・スーに制裁を加えるのだ。
――『よくも俺を裏切ったな』
初めは、アマンダ。
奴は他の男のいるパーティに所属していた。
結局この手のバカ女は、強い男であれば誰でもいいんだろう。
――『あ、あんた、誰!? 女から恨みを買った覚えは無いけど!?』
――『もう忘れたのかよ? 軽いのは尻だけじゃなく、頭もなんだな。だったら俺が中身を詰めてやる。俺はグレイ・ランサー』
俺は槍を構えた。
――『……かつてクレフ・マージェイトだったモノだ!』
――『クレフ……それで、何の用さ?』
――『あのとき友愛村で俺を見捨てた。そして今は、他の男に靡いた……その尻軽さを修正してやる』
とはいえ、こんなビッチは俺の女にはしてやらないが。
――『嘘だろ、そんなんただの逆恨みじゃ――』
何度も殴り。
胸ぐらをつかみ、壁に叩きつけ。
そしてその無駄に長い髪を焼いて短くしてやった。
もちろん、フォルメーテは協力してくれた。
他の男どもを目の前で吊し上げ。
――『クレフ様を裏切った報いを受けてもらいましょう』
一人ずつ殺して周り。
――『う、嘘だ……あんたまで!? フォルメーテ!』
――『そういえばあの時、あなたはダーティ・スーに降参しようなどと言っていたわね……どこまでも身勝手で、嫌な女だわ』
――『だ、だって……!』
俺の槍の石突きは、焼きごてになっている。
これをアマンダの背中に当ててやった。
――『ああああああああッ!!』
慈悲はない、インガオホー。
俺を裏切った末路がどのようなものかを、たっぷり教えてやった。
本当なら犯してやりたかった。
股間に、あるべきものが無いから、犯せなかった。
だから代わりに、調教に調教を重ねて、ペットにしてやった。
――『反省したか?』
――『はいぃ……アマンダは、あなたさまの奴隷です……』
ベルとドロテアとゲルダは、三人でパーティを組んでいた。
他の男に靡かなかった事は評価に値する。
……とでも思ったか!!
こいつら、町で俺の悪評を広めていた。
それを聞いていた町の連中だって、かつて俺が友愛村に行くと決めた時に何もしてくれなかった。
――『ベル、お前は利用されてるだけなんだろ? ほら、かわいいお嬢ちゃん』
――『はぁ!? なんでベルだけ露骨に態度変えるわけ!? もしかしてロリコンなの!?』
ドロテアが吠える。
――『うるせぇ。ロリコンで何が悪い? ホモよりマシだろガイジ』
――『今そのホモとかガイジとかいう言葉は厳しく罰せられるって知らないの!?』
――『目撃者を仲間に引き入れるか、さもなくば殺しちまえば罪なんて無いようなもんだ。かつて、お前らが俺を見捨てたようにな!!』
俺を売り飛ばす事で安寧を得ようとしていたならば、味わってもらおうじゃないか。
売ってはならないものを売った、その代償を。
町を片っ端から焼いて、滅ぼした。
女子供も老人も、容赦はしなかった。
アマンダにも協力してもらった。
――『さあ、やれアマンダ』
――『え、だって、まだ、子供……』
――『だからどうした。奴隷なんて生易しい事はしてやらないさ。そのために、フォルメーテにはネクロマンシーを習得させたんだからな! 動いてるから死体じゃない。ほらハッピーは消えてないぞ?』
住 民 共 は 皆 殺 し だ !
そして生き返らせ。
使役し。
逃げ惑い隠れ潜んだあの女共へと、差し向けてやった。
激しく抵抗していた三人組も、守るものを失った事で戦意が消えたらしい。
すっかり従順になったこいつらも、再びパーティに加えた。
反省したか?
ならば良し!
それからオミサワなる教師を出し抜き。
奴の生徒達のうち、恵まれない容姿ゆえに女から疎外されている奴を何人か、同志として迎え入れた。
さて。
次の獲物、エウリアとウィルマは、きっとこの会場にいる。
そう思ってここにやってきたが……思わぬ収穫があった。
それは、ダーティ・スー。
何が何でも、お前の首を獲ってやる!
そのために俺はプライドをかなぐり捨てた。
なんだって利用してやるつもりで、ビヨンド召喚のスクロールを手に入れた。
お前の正体を掴んだ以上、対策はさせてもらう。
そうさ。
お前は踏み台なんだ。
クロエに植え付けられた俺のアレを取り戻すためのな!
ロナ「すごい……どこからどう見ても逆恨みでしかない……」




