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Task7 面倒な喧嘩をまとめて片付けろ

 ダーティ・スーの書き溜めがついに底を突いたため、頑張ってもう一度書き溜めを作りまくって投稿いたします。


 さて、インタビュー開始だ。

 何から訊いてみようかね。


「今のお前さんは、元の記憶を完全に取り戻したかい」


 トントン。

 手の甲――つまり“NO”か。


「継承の儀とやらが何なのかご存知かい」


 トントン。

 これも“NO”と。

 厄介な間抜けだ。

 それが何を意味するかも解っていないのに、それを実行しようとするとはね。

 もちろん俺も知らんが、ろくでもない事なのは確かだろう。


「元の世界に帰りたいと思うかい」


 ……。

 可哀想に、手の平と手の甲、どっちで叩くべきかを必死に考えてやがる。

 いや、それともお前さんの中に幾つかある自我が回答権を巡って喧嘩でもしているのかね。


 ――トントン。

 手の平……つまり“YES”か。

 どの自我がそう答えたのかは気になるものの、訊いて解る問題でもあるまいよ。


「黄金郷がどこだか解るかい」


 これは手の甲。

 地道に探り当てるのが一番良さそうだ。



 ロナと紀絵は、あの鉄棒女とやりあっている……経過は順調らしい。


「紀絵さん!」


「ええ! ――極光纏い(グランツ)輝ける吹雪(シュネーシュトゥルム)!!」


 光に弱いと解かりゃ、そりゃあフラッシュを何度も焚いて目眩ましをするよな。

 まったく見事な連携!

 俺の出る幕は無さそうだ。


 デカブツは制服さん連中が……おやおや!

 ちょいとばかり制服さん連中のほうが押され気味ってところかね。

 さっき飛行船がオシャカになった時に見かけた巨大な槍は、どうやらデカブツの得物だったようだ。

 インタビューは一時中断だ。


 ズポッとね。


「んぐっ――ぷぁっ! 乙女の口になんてもの突っ込むんですか! じゃなくて! どうしてこんな真似を!」


「頼み事を素直に聞いてくれる相手じゃないと思ったから、手を突っ込んでやったまでさ」



 さて、と。

 デカブツのほうに向き直る。


「おい、デカブツ。お前さんの大事な生贄がフイになっちまうのが嫌なら、さっさと協力しやがれよ」


「御子様、なんと痛ましいお姿か……! おのれ闖入者め……卑劣な真似を! ふんぬっ、ええい、邪魔だぁ!」


「俺は黄金郷とやらに案内してさえもらえりゃ、あとはどうなろうが知ったこっちゃない。

 お前さん達の儀式が成功して、この小娘が人間じゃなくなっても……ああいや、既に人間をやめちまっているのか」


 いずれにせよ、間抜け共は脅しに屈しないつもりのようだ。

 藻掻いて拘束から脱しようとする保護者気取りの槍使いも、制服さんを次々と蹴散らしてこっちに一目散なデカブツも。

 それじゃあ面白くない。


 ――バキッ


「ッ、うあ゛ああああああぁぁぁぁぁァアァァあッ!!」


 小娘の立派なツノを右側だけへし折ってやった。

 どうやらここにも痛覚があるらしい……ありがたいことだ。

 てめえらの軽率さを後悔しやがれ。


「この場において少数精鋭が許されるのは俺様だけだ。数も力も劣るお前さん達が立派に抗えば、それだけ小娘の傷が増えるぜ。

 次は翼を壊す。槍使いを見ていて俺の腹が立ったら左側を引っこ抜く。デカブツを見ていて俺の癇に障ったら右側を穴だらけにする」


 そして奴らは動けなくなった。

 定番の人質戦法、恐れ入ってくれよ。


「ああ、忘れていたがそこの鉄棒女。お前さんも……ふはは! 随分と無様を晒してやがるな!」


 ロナの翼手に全身を握られて、身動きが取れないようだ。

 あれじゃあ影法師を呼び出しても、まともに扱えまいよ。


 というわけで、シグネを腕に抱えて見せて回る。


「そら、誰でもいいから吐けよ。黄金郷のを。さもなきゃ――」


 ――ガブッ、ボリッ。


 シグネの奴……噛み付くだけの胆力ガッツはあるらしい。

 左腕が少しだけやられちまった。


 問題は、こいつの顔がトカゲともワニともつかない形に変形しつつあるという事だ。

 まだ俺様とやり合うつもりかね。



「帰ら、な、キャ……私、ワタシ……」


 お前さんも怪物に成り果てるクチと来た。

 首から下を、白い鱗の集合体が傘状に広がって覆っていく。


 取り込まれるのは御免だ。

 俺は小娘を蹴飛ばして、翼と尻尾をバスタード・マグナムで何度か撃ち抜く。


 ズドン、ズドン、ズドン!!

 この強烈なプラズマ弾頭の前には、どんなに強靭な鱗でも焼け焦げるってもんさ。


「ううあああああAAAAAAAGGHHH!!!」


「シグネ、駄目だァ! 戻れなくなっちまうぞ!!」


 ほら、パパもお勧めできないってさ。

 だが聞いちゃいない。

 身体はゴボゴボと音を立てて大きくなっていく。

 しまいにゃドラゴン顔が二つも生えてきて、三首のドラゴンの出来上がりだ。



「ワタシは……ジーク……リンデ……! ウゥウウオォオオ!!」


 などと言って、シグネあらためジークリンデはデカブツに突撃した。

 攻撃する相手を間違えちゃいないかい。

 いや、ある意味じゃあ間違いでもないか。


「御子様!? 否、此処は儂が受け止めるまで!」


 巨大な槍を構えて、受け止める姿勢だ。

 勝手に怪獣大戦ごっこをやるのは構わんが、まだくたばってくれるなよ。


「ぬぐおぉ!? や、焼ける!?」


「シグネ! 駄目よ! 正気に戻って!」


「お前の旦那さん……エンリコさんが待ってるぞ! 戻ってこーい!」


 必死の呼びかけも、聞こえちゃいない。

 お決まりの展開には欠伸も出ないね。



「ほら、チビ助。ありゃあ、お前さんの友達だろう」


「……」


 鉄棒女、お前さんはシグネから受け取ったんじゃあないかい。

 ポップコーンを。


「そこで伸びてやがれ。暴走させた本人が、てめえでケツを拭くさまを! ふはははははは!!」



 煙の槍をサーフボード代わりにして、急接近。

 それから、ドラゴンの顔全部に蹴りを一発ずつ。

 しかし、首が三つじゃあね……せっかく貰った首輪も、どの首につけりゃいいのか見当もつかん。


「大佐殿! どうする。まだ仕返しが足りていないだろう。お前さんからの贈り物、どの首に付けてやろうかね」


「……どうでもいい! さっさと殺すなり何なりして、黄金郷へのルートを探索するぞ!」


「あいよ」


 そこでロナから念話が飛んでくる。


『気ぃ~安く言ってくれますよねぇ~……』


『言わせておけよ』


 パチンッ。

 煙の槍をそれぞれの首に巻き付けて、締め上げる。

 さて愛しのドラゴンちゃんは、どんな声で啼いてくれるのかね。


「うあああああああァアア! あぅぅ、っぐううう――!?」


 ふはは!


「そらよ」


 パチンッ。

 空中に、大量の煙の槍を作る。


「悪いがお前さん達じゃあ勝負にすらならん」


 素人と老いぼれ、それも殆ど飯抜きと来りゃあまともな動きなんざ無理だ。

 犬に空を飛ぶ事を期待するようなもんさ。


「じゃ、休憩しようぜ」


 ――パチンッ。


 通り雨のようにザラザラと、煙の槍は降り注ぐ。

 もちろん、これでも加減してやったんだ。

 出力をフルにして食らわせたら、ミンチになっちまうからね。


 ズシン……と重たい音を立てて、双方ともオネンネだ。

 どうやって起こすかどうかはさておいて、ジークリンデはちゃんと人間の身体に戻った。

 

 まったく、手間のかかる連中だ。


「首輪を使うまでもなかったな。保健所送りにならないだけありがたいと思えよ」


 デカブツは尚もダウン中。


「ろくに整備もされていないダンジョンで迎え撃とうなんざ、割れた木皿にスープを入れるようなもんさ」


 魔法使いの女と、その彼氏ちゃんは拘束を受けている。

 槍使いに至っては、グロンド・ブリスコッド大佐殿が腹癒せに何度も殴っていた。

 貧乏残党軍が相手なんだから、もうちっとばかり粘ってくれるかと思ったが、どうやら丁寧な接待が必要なたぐいの戦力だったらしい。


「派手に騒いだのが仇になったな。おかげで俺達に居場所が筒抜けだった。喧嘩してくれてどうもありがとうよ」



 ジークリンデの襟首を掴んで、鉄棒女の目の前まで運んでくる。

 さあ、黄金郷のルートを開拓だ。


「選べ。お前さんのダチ公が紙吹雪になるか、それとも道案内するか」


「……」


 カチッ。

 バスタード・マグナムを、ジークリンデの顎に当てる。


「終わったら、何もかも好きにすりゃいい。ただし、変な浅知恵を働かせてみろ。こいつと知り合ったことを後悔する羽目になるぜ」


 観念した鉄棒女は、ゆらりと立ち上がって鉄棒を捨てた。

 後ろでロナと紀絵が武器を構えて、警戒している。


 いくらなんでも骨がなさすぎる。

 この世界は、枯れてやがるのか。


 ……まさかね。




 ちなみにダーティ・スー達の介入が無かった場合、エンリコ達一行が武器狩りの翁&ノヴァ・ディーとでダークソウルやブラッドボーンばりのボスバトルが繰り広げられていました。

(翁が倒れて、ノヴァ・ディーの武器が本気モードになる的な)

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