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Task6 どんちゃん騒ぎにお邪魔しろ


 ロナの背中の翼手でブルドーザーごっこを続けていたら、あっという間にダンジョンの奥まで到着だ。

 どうせ要塞として再利用するわけでもあるまい。

 だったら、少しでも風通しを良くしちまうのが一番手っ取り早いってもんさ。


「ぜぇ……はぁ……人使い荒くないですか? 魔力消費、半端ないんですけど!?」


「ご苦労さん。茶でも飲んで休んどけよ」



 ここで紀絵が張り切って、収納空間からタンブラーを取り出す。


「お茶ならわたくしが淹れましてよ。はい、チョコミントカフェラテ!」


「うっは。茶じゃなくてカフェラテじゃねぇか。っていうか紀絵さんチョコミント好きなんですか?」


「あら。ロナさんは、あまりお好きではなくて?」


「あの味ちょっと苦手なんですよね」


「ごめんあそばせ。わたくし、他に何も用意できませんわ。斯くなる上は先生のお酒を強奪するしかなくてよ」


「よし、それだ!」


 ふはは!

 勘弁しろよ、俺の酒だぜ!


 さておき、俺もここらで一服決め込もう。

 掌大のガラスの瓶を懐から取り出して、そいつの蓋を開ける。

 風味豊かなウィスキーの香りが漂ってくる。


 が、それをロナが引っ手繰った。

 本当にやるとはね!


「んぐっ、んっ――ぷは。あんま美味しくないですね、これ」


 文句を言いながら投げて寄越してきたのを、もちろん俺は華麗にキャッチする。


「人様の酒を引っ手繰っといて、大したツラの皮だ」


「ツラと言いながらケツを撫でるとはいい度胸だこの野郎。アナルバイブをブチ込んでやろうか」


 お互い尻を撫で合いながら言うセリフでもあるまい。

 まったく、正気を疑われちまうぜ!


「その辺で終わらせてくれるか」


「どうした、大佐殿。笑わないのかい」


「これが笑っていられるか! 私は余裕のある時しか笑わん主義だ!」


 今のうちに喚いておけよ。

 いずれ開いた口が塞がらないまま、彫像と相互理解を深める事になるぜ。




 さて。

 ダンジョンの奥のほうに到着だ。


「どうだい、制服さん」


 俺じゃあ目立ちすぎるだろうから、ここはひとつ、プロの軍人さんに活躍の場を与えてやらないとね。

 そう、気配を察知するのは俺にもできるが、気配を消すとなると、本物の玄人が相手じゃあちょっと自信がない。

(特に、あの槍使いは頭痛の種だ)

 そこで、制服さんの隠密能力を頼ってやったのさ。


「どうだい」


「揉めているようだ」


 制服さん共が確認して、俺が腹をくくる。

 実にシンプルな役割分担だ。


 得られた情報は沢山ある。

 シグネと呼ばれたあのガキが記憶喪失だった事。

 ファーロイスの生まれらしいという事も、そうだ。


 そして“継承の儀”とやらを今にも始めそうって事も!


 それじゃあ突撃開始と決め込もうぜ。


「――ごきげんよう、俺だ」



 ひれ伏せ。

 全ての人でなし共よ、俺にひれ伏せ。


 そのガキの身体は俺達のものだぜ。

 黄金郷の扉を開く鍵かもしれん、という可能性が少しでもあるならば、俺達が独占する。

 誰が、何と言おうとも!



「チッ、参ったわね、このタイミングで――」


 ――ズドンッ。


 杖を構えようとした女の右手の付け根に風穴を開けてやる。

 どうせ治せるんだから、ちょっとくらいの傷みは我慢しやがれよ。


「よくもフェニカを!」


 ズドンッ、ズドンッ。


 彼氏かい。

 だが無力だ。

 両足を撃ち抜いてやりゃあ、膝から崩れて地面とキス。

 オー!

 可哀想に!


「どうした。これでもう残り4人だぜ」


 槍使いと、シグネと、デカブツと、鉄棒女。

 お互いが喧嘩していた連中だ。

 きっと何一つ面白みのない連携を見せてくれる。


 つまりチームワークなんざコンソメ顆粒の一つまみ程も無いって事だ。

 俺の予想を、果たしてこのボンクラ共は裏切ってくれるのかね。


「そしてこっちは40人と、この最強最悪のゲストである俺様と、可愛い子猫ちゃん達が、しっかりたっぷりおもてなしを堪能するって寸法さ」


「あたし達が可愛い子猫ちゃん達ですって、紀絵さん」


「猫耳のロナさん……“有り”ですわね」


「はいはい、さっさと現実に戻ってきてねー……」


 楽しそうで何よりだ。



「ロナ、紀絵。お前さん達は好きな奴を選んでいいぜ」


「好きな奴って言われても、全部嫌いですよ」


「わたくし、先刻お見えになられた黒髪の子にいたしますわ」


「よりにもよって!?」


「光り物を恒常的に作れるのはわたくしだけでしてよ」


「そりゃそうなんでしょうけど……しょーがない、ご一緒しますよ」


 獲物は選んだな。

 それじゃあ、進軍開始だ。


「うぇーい! JKのガワ被ったアラサーが謎のお化け系黒髪美少女にチャレンジですわ!」


「おーい、紀絵さん。素が出てんぞー……」


「ごめんあそばせ。肩肘張るのが最近、馬鹿らしく思えてまいりましたので。オーッホッホッホッホ!」


「あ、スーさんは残りの3人どーぞ。どうせ余裕でしょ。サクッと片付けちゃって下さいよ、いい加減ダレてきたんで」


「ああ、オーダーよろしく承ってやるぜ」



 群雄割拠の大乱闘デスマッチだ。

 パーッと騒ごう。


 先程おててをブチ抜いてやった女は、杖を抱えながら呆然としてやがる。


「なんなの、こいつら……!?」



「シグネには指一本触れさせないぞ!」


 俺のターゲット、槍使いが立ち塞がる。


「ふはは! 怖いねえ、保護者気取りが踏ん張っちまって! 心配ならもっと大人を大勢連れてくりゃ良かったのさ。

 少数精鋭で子守りなんざ務まるわけがないだろう。カネをケチるからこうなる」


 メニューから大玉スイカを購入。

 投石機で飛ばしたらさぞかし面白いショーになっただろうが、俺はこいつを――


 パチンッ。


「うおぉ!?」


 槍使いの目の前で爆発させる。

 あわやスイカの汁まみれだ。


「隙を見せたな、パパさん」


 パチンッ。

 おまけで煙の槍を使って拘束する。


「――なッ、動けない!?」


「お前さんの小児性愛的な欲求を満たす最高にセクシーでドジで間抜けな灰かぶり姫を、存分にいたぶってやる。特等席で舐め回すように眺めるといい」



 シグネとの距離を詰めて……ドンッと一発、膝カックンだ。

 回し蹴り、ローキックとも言う。


 細っこい首根っこを、俺は左手でしっかりと握った。

 少しでも力加減を間違えりゃあ、あっという間にバッドエンド。

 頼むからおとなしくしていてくれよ。

 お前さんが現在進行系で流している涙が、お前さんを生き存えさせていると認識しろ。


 さあ、シグネ。

 お前さんを特別なショーのアシスタントにしてやる。

 煙の槍を纏った右手の五指を伸ばして――、


「そらよ」


 口の中に突き入れる!


「んぐっ!? むぐ、うぅッ!?」 


 オー!

 えずいてやがる、えずいてやがる!

 ロナが露骨に顔をしかめて目を逸らしたが、こんなのは必要経費だと思って割り切るべきだぜ。

 銃と違ってシンプルだ。


「今から簡単にインタビューをする。イエスなら手の平で、ノーなら手の甲で俺の腕を叩け」


「ふぅ、うぅうウゥ……!!」


 いい目だ。

 まさしくこれは“お前の言うことなんて聞くもんか”と抜かしてやがる目だよ。


「拒否したらさっきのスイカみたいに木っ端微塵になるが、お前さんだって命の大切さくらい理解しているだろう。

 まだくたばる瞬間じゃない……そう思うのなら、答えは決まっている筈だ。さあ、聞かせてもらおうかね、お前さんの答えを」


 トン。

 手の平だ。

 そうだよな、てめえの命は大事だよな。

 初めからそうすりゃいいのさ。


「いいぜ。その賢明あさましさに敬意を表して続けさせてもらうとしようじゃないか」


 さあさあ、地獄のインタビューの始まりだ。

 世に赦しというものがあるならば、俺の狼藉は全て赦されるという寸法さ。

(もちろん、そんな事があってはならない筈だがね)


 ……全ての人でなしに、赦しと祝福あれ。




紀絵「もしや陵辱展開!?」

ロナ「そのポジションはあたしの専売特許だったのでは……」

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