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Task11 蛇柄女と対決しろ!

 引き続き、蛇柄着物のバーサーカーとの戦いです。

 人間捨てた動きをするキャラクターが大好きなので、もっと流行って欲しい。


 ゴーグルを外した蛇柄女の目の色は、青緑色に光っていてよく解らない。

 とにかく本気は伝わってくる。


 俺が面接官なら、一次面接は通してやってもいい。

 だが二次面接はどうかな?


「どうした、蛇柄女。俺にお熱になるあまり、周りが見えていないのかい」


 俺が挑発している間にも、リッツは物陰から矢を撃ってくるし、ロナもパンツァー・ファウストをぶっ放してきている。

 もはや俺もろともブチ抜く勢いだが、それもまた一興って奴さ。


「アァォ!」


 上半身をひねって避けるのはいいが、なんという角度だ!

 仕合っているのにこんなポーズとは、人間業とは思えん。


『イナバウアーですって!?』


『片足を上げてるから違いますね』


 そこから軸にしていた膝を曲げて、回転を掛けた跳躍……。

 おまけに、木々で三角飛びをして回るから、まるでピンボールだ。

 お前さんの大道芸はどこまで尖ってやがるのかね。


「クソッタレ、当たれ! この!」


 ロナの丸鋸が虚しく空を切る。


「うぁー! 掠りもしない! ファック! 超ムカつく! 死ね! クソ! あ゛ー!」


 そう気に病むこともあるまい。

 なにせ相手が相手だ。


 トンッ。

 そんな軽い音と、両肩に伸し掛かる硬い感触があった。

 それと、首元に刀が当たっているという認識も。


「んんベロベロベロベロベロッ!!」


 そう!


 奴は俺の両肩に乗っかって、屈んで刀を首に押し付けていた!

 見事だよ、蛇柄女!


 そこまでやられちゃ、流石にお手上げだ!

 こうなったら、銃口をお前さんの首の付根に突きつけてやるしかないじゃないか。

 柔らかい感触が銃のグリップ越しに伝わってくる……


「俺の引き金がお前さんの戯れを終わらせるか、お前さんの自慢の妖刀が俺の首を落っことすか……どっちだと思うかい」


「まぁ別にいいんじゃないの!? 相討ちも戦の華だよォ! ハハハハハハッ!!」


「それもそうだ! ふははは!」


 ……なんてね。

 俺はお前さんの正義を検証するつもりは、これっぽっちもない。

 付き合いきれないから、手品で茶を濁させて貰うぜ!


 パチンッ。

 首筋に這わせておいた煙の槍で、ド腐れ妖刀を押し退ける。


「オォ!? ……ッヒヒヒ!」


 辺りから色々な物が飛んできたのを、俺は咄嗟に横へと飛んで避けた。


 野球ボールくらいの大きさの青白い光が20個ほど、俺と蛇柄女を目掛けていた。

 狙いすました矢は、俺と蛇柄女の頭を貫くような軌道を描いていた。

 手斧は明らかに首を狙っていたし、投げナイフに至っては途中で爆発した。


 いやあ、モテるって辛いね!

 ふはは!


「当たらないヨ!」


 青白い光はホーミングしてくるが、俺は煙の壁で防いだし、蛇柄女もド腐れ妖刀で片っ端から切り捨てる。

 それで出来上がった爆発と土煙は、チャンスと言うには程遠い。

 この手の化け物は底抜けにタフだと相場が決まっているもんさ。


 どうせ飛び道具が当たらないなら、腕っ節で黙らせるまでだ!

 細い顎に一発御見舞してくれるぜ。

 ダーティ昇竜(ウラ)拳!


「へげゥ!?」


「どうだ、酔っぱらい! 少しはしらふ(・・・)に近付いたかよ!」


「ぐわーやられた! もう一発!」


 ふははは!

 気に入ってくれたようで何よりだ。

 続いてパンチ、キック、そして煙の槍を纏ったダーティ・チョップ!


「痛いか! もっと味わえよ!」


「んんんむにゃむにゃ……もう食べられないよ……ッヒヒヒ!」


 つくづくイカれてやがるぜ、この女は!

 最高じゃないか。


 俺は、こいつの胸ぐらを掴む。

 そして、頬を殴る。

 何度も、何度も!


 相手も負けちゃあいない。

 俺様のハンサムな顔に引っかき傷が次々と!

 なかなかやるじゃないか。


「ケェェェェエエッ!」


 迫りくる刀!

 俺はダガーでそれをパリィだ!

 煙の槍を歪ませて、絡ませたら後は強く引っ張るだけだ。


 そらよ!

 妖刀がカランカランと音を立てて転がっていく。


「見たかよ、蛇柄女! ご自慢のエモノが、あのザマだぜ!」


「イッヒヒヒ! ヒヒヒヒ! あーむ……」


 噛み付いてきやがるとは、また熱烈な歓迎ですこと。

 なら、奴の左右のこめかみを両側から殴ってやるまでだ!

 喰らいやがれ!


「ギヒッ!?」


 拳で頭を挟み込んだまま、宙返り、そして奴の顔面から着地だ!


「へげッ、アッハァ!! ッヒヒヒ!」


 痛いかい、ふははは!

 鼻血が地面に滴り落ちてやがるぜ!

 強い奴が相手だと、遠慮する必要がないのがいいね。


 さて、周りは大丈夫かね。

 ロナは援護をやめて周辺の警戒に移っている。

 他に警戒中なのは、リッツくらいか。


 後のメンツは近くにいない。

 ソリグナの護衛をしてくれているなら、それはそれでいい。

(伏兵と仕合ってやがる場合、俺は蛇柄女とのデートを中断する必要がある)



 ちょっと相撲をしながら、念話で様子を確認だ。


『ロナ、紀絵。周りに邪魔者はいないかい』


『あたしの視界は、今のところ大丈夫です。

 紀絵さん、クソリーダーのお仲間は何かしら動きありません?』


『いいえ。特に何も。マキトさん達と一緒に目的地に向かっていますけど、怖いくらいに平穏ですわ。

 クソリ……えっと、ツトムさんが足を刺されて、やや狼狽えているようですけれども……』


『ロナ。引き続き中継役を頼んだ』


『了解』


『もしお前さんが望むなら乱入してくれても構わんが』


『冗談でしょ。あの蛇柄女と勝手によろしくやって下さいよ。腹に一刺し、グサッと』


『そうさせて貰う』


『じゃあ、紀絵さん。ツトムご一行様が少しでも怪しい動きを見せたら、後ろからグサッとやっちゃって下さい』


『ええ。よろしくてよ』


 順調らしいね。

 悪くはない展開だ。

 ……さて。


 足を掛けて、蛇柄女を背中から叩き付ける。


「俺を足止めするつもりだったなら、無駄な足掻きだぜ。それとも、赤ん坊もろとも腹を刺すつもりだったのかい」


 ナボ・エスタリクと名乗って俺達の目の前にやってきたなら、後者と思うのが筋だ。

 が、そう思わせておいて本隊が事をしでかす場合もある。


「どっちもだよ!! でもやーめた!!」


 目から青緑色のビームを出してくるが、俺は煙の壁でそこらの木々に反射させた。

 変なスパーク音がする割には、木々が燃える気配はない。


「周りにいる奴全員追っ払って、サシで仕合おうよ! そっちのほうが絶対に楽しいって! イヒヒヒヒヒヒヒッ!!」


 それこそ願い下げだぜ。

 何処に、いかにもイカれたいくさ馬鹿の誘いにノコノコと乗っかる馬鹿がいる。

 そうやってデートをしちまったが最後。

 財布の中身(こっちの計画)をスッカラカンにされるのがオチってもんさ。


 この蛇柄女を放っておけば、こいつは間違いなくソリグナに追い付いて目的を果たすだろう。

 だからなるべく俺が押さえつけて時間稼ぎをするつもりだった。


 認めたくはないが、こいつの実力は俺と同等またはそれ以上だ。

 並外れたタフさと、度胸という文字をバラバラにして骨の髄に打ち込んだみたいな恐れ知らずの猛進ぶり……。


 そしてイカレ具合は俺よりも上だ。

 正義を検証するまでもなく、こいつはてめえを善悪の外側に置いてやがる。

 野放しにすりゃあ、何が起きるかわかったもんじゃない。


 仕留めよう。

 そろそろ、もういいだろう。

 地面に押し付けていた蛇柄女を解放し、脇腹を蹴飛ばして自由にしてやる。


「お互いに、一番の得意分野で勝負しようぜ」


 俺はウイスキーを呷りつつ、ド腐れ妖刀をバスタード・マグナムで指し示す。

 ここまでで傾向は読めた。

 集大成を以て、仕合を締めくくるとしようじゃないか。


「……」


 蛇柄女は、探るような目を向けてきやがる。


「……おい。なんだ、そのツラは」


「ヒヒヒッ、なんでもない――ヨ!」


 突進。

 懲りずに目からビームを撃ってきやがったから、煙の壁で弾く。

 飛び道具で来るなら俺も――ズドン!


 そして外した。

 が、それでいい。

 これも計算の範疇さ。


 ド腐れ妖刀が、俺の腹にグサッと刺さる。

 だが俺の内臓モツは腐らない。


「あれェ~? もしかして、もくもくバリアで内臓まで守っちゃってるのカナ!?」


「大正解だ!! ブッ、ゴホッ……」


 しっかりと抱きとめる。

 熱い抱擁だぜ、お前さんを絶対に離すものかよ。


「今度こそ終わりだ。目を向けられなきゃあ、ビームを当てることもできまい」


 奴の、妖刀を握る右手を引っ掴み、バスタード・マグナムでブッ飛ばす。

 ズドン!

 全身で衝撃を受けて、みっともなく転がって行った!


「ほら、どうだ! 右手を見てみろよ!」


「ヒャアアアお許し下さいませ~なんちて! ッヒヒ、イヒヒヒヒヒッ!!」


「ふははは……ははははははッ!!」


 まったく、何がおかしいのやら。

 何にせよ、この女はもう終わりだ。

 少なくとも、この戦いだけで考えるならね。


「できれば二度と御免だが、この辺で勘弁して貰おうじゃないか」


「……雌恫叉めどうさ


 わざわざ名刺まで懐から取り出して、俺のほうへ投げて寄越してきた。

 手裏剣のように回転してやってきたそれを、俺は左手の親指と人差指で受け取って、眺める。

 なるほど、ケレン味のある西洋かぶれの当て字だ。


「律儀な奴だぜ。きちんと名乗りやがるとは」


「次、会う時に名前で呼んでもらうんだ! 何故なら私は! 惚れちゃった! ッヒヒヒヒ!! 特別待遇だぞ! ソリグナちゃんは狙わないでおいてあげよう! それ以上は無理! 雇い主が誰なのかも、教えなーい! アッヒ! ッヒヒヒヒ!」


「そりゃあどうも。花束は返すぜ」


 名刺を燃やして蛇柄女の口の中に入れる。

 そのまま、バスタード・マグナムで頭を吹っ飛ばした。

 どうせ雇い主の事までは、詳しく教えちゃあくれなかっただろう。

 だが、充分だ。


 ……ややあってから、奴の死体は光の粒になって消えた。

 やっぱりビヨンドだったか。


『ええぇ……変なのに惚れられましたね。あんな奴までハーレムに加えたくない』


『モテすぎるのも考えものだね』


 野伏せりトカゲやらオークやらと来て、間にツトムとやらが横からやってきて、最後に妖怪蛇柄女――雌恫叉だ。

 ビヨンドの相手は、流石に堪えたぜ。


 ……さて、仕事はまだ終わっちゃいない。




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