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Extend5 追いかけっこはここまでだ!

 今回はツトムくん視点です。


 オッス!

 俺、丹室努務にむろ つとむ


 下の名前を音読みされると黒くて太くて早い20mサイズの人型ロボットを思い出すが、俺は連邦軍のほうが好きだ。

 おっと、いかんいかん。

 余計なことを考えてる暇は無いんだった。


 俺達のパーティは、マキト達のパーティと合同で、ソリグナを追い掛けていた。

 メンバーの名前と種族とジョブは、これ。


 アルファチーム

 丹室努務(つまり俺) …… 人間/双剣士

 フィリエナ・マディス …… 人間/斥候(Fカップ)

 キャトリー・ウィッツバーン …… 人間/魔術師(Aカップ)

 遠江とおえ …… 人間/侍(推定Cカップ)


 ブラヴォーチーム

 マキト・ツガワ(もうどう考えても転生者と確信する他ない) …… 人間/魔術師

 イスティ・ノイル …… 人間/騎士(推定Cカップ)

 リツェリディエル …… エルフ/弓士(推定Aカップ)

 ブロイ …… ドワーフ/戦士

 リコナ・ベルルコア …… 猫人/斥候(推定Bカップ)


 くそっ、ブラヴォーチームのほうがバランスいいぞ……!

 職業的な意味でも、種族的な意味でも!

(ただ、ドワーフが男なのがなぁ……惜しいなぁ)


 そんな俺達は、ソリグナを攫ったダーティ・スーがオークの群れと戦ってる所に出くわしてしまったのであった。




 経緯としては、こうだ。


 人身売買の線を疑って中央物産店に潜入したら、逆に街の衛兵にしょっぴかれ。

 店主のマセリクと話をすれば。

 人身売買じゃなくて単なるピザの具材の取引だった事が判明……意味わからん……。


 ――『誰だよ、そんな迷惑なデマ流した奴は……』


 ――『店長~! この葉っぱはなぁに?』


 ――『医療用ポーションの原料だ。冒険者ギルドの認定証を持った錬金術師にしか卸さないから、もし盗んでたら投獄どころじゃ済まされないぞ』


(ちなみに護衛のチンピラ達は始めこそ不満たらたらだったが、行商人がその場で作ってくれたピザを試食したらみんなして機嫌を直してた。実に現金な奴らなのであった)


 一日遅れでの出発だったから、キャトリーの魔獣ファミリアであるジャイアントタイガーで急いで追いかけたが、それでもかなり時間食うなコレ。

 普通に四日も掛かったじゃねーか!

 ザッケンナコラー!


 道中も、今までの魔物狩りを中心とした依頼とは、かなり毛色が違った。

 これみよがしに、釣り上げたであろう大木が辺りに土煙を飛ばした状態のまま置かれ。

 冒険者なら普通は隠すよねコレってなるのを、思いきりそのまんまにし。


 もしかしてダーティ・スーって馬鹿なのか?

 ……いや、敢えて俺達を誘い込んでるって可能性も無きにしもあらず。


 その後に見つけた野伏せりトカゲの死体なんて、常軌を逸していた。

 形跡からして明らかにおかしい。


 頭と胴体を引きちぎられてたり。

 燃やしたまま引きずられてたり。

 鋭利なトゲの塊を何度も叩き付けたり。

 そういうのしかしていない。

 なんかもう、殺し方が完全に普通じゃないのだ。


 熟練の冒険者でも野伏せりトカゲを相手にすると命を落とす事が多い。

 だがここにある死骸はどれも、余裕を見せて、嬲り殺しにした形跡しか見つからない。

 ひえぇこっわ、サイコパスかよ……。

 反吐の出るような光景に湧き上がる怒りを押さえながら、俺は。


 ――『なぁ。この殺し方。もしかして衛兵の言ってたナボ・エスタリクってダーティ・スーの事なんじゃね?』



 そこから少しの沈黙を挟んでエルフのリッツが口を開いた時の顔が、鮮明に思い出せる。

 これまでずっとおしとやかな印象だったリッツが、眉間に皺を寄せ。


 ――『……ナボ・エスタリクは……あんな人ではありませんよ』


 そういう意味じゃなかったんだよなぁ。

 ナボ・エスタリクとダーティ・スー……俺はどっちとも会ったことないから解らないが、こういう考え方だってできるだろ。


 ――『あいつが、なりすましてる可能性だってある』


 ってな!



 また一つ追い掛ける理由が出来たな。

 が、結局それが的外れな当て推量だった事に気付かされるのは、もう少し後になってからの話であった。



 別にソリグナの中古確定がショックとかそういうんじゃないんだ。

 だいたい髪色からしてビッチっぽかったし。

(そりゃあ多少はショックだが、現実の女ってそういうもんだろ? 俺は詳しいんだ!)


 子持ちの訳アリ人妻とか俺の趣味じゃねーんだよなぁ……つーか誰だよ相手。

 清純派の童貞であり健全な男子高校生の俺の、胸の高鳴りとかそういうのを奪っていったクソ野郎のご尊顔を、是非ともひと目拝んでみたいもんだ。

 ウェイ系パリピが言葉巧みに持ち上げてお持ち帰りしちゃったのかな?

 半島から転生者でも来たのかな?


 まさか、ダーティ・スーの仕業か?


 は~~~~……(クソでか溜め息)

 誰にせよ、いつか見付けてボコボコにしたろ。




 ―― ―― ――




 そして、ソリグナ達に追い付いて今に至る。


「ヴォアァア!」


 ガトリングガンを持ったオークが吠えてる。

 恰幅のいい緑色の身体で、豚鼻に下顎の牙。

 異質なのは、眼帯とベレー帽と、何よりも。



 ――ガトリングガン。



 ズドゥドゥドゥドゥドゥドゥ――チュチュチュンッ!


 数え切れない程の弾丸で、足元の泥がえぐれて飛沫を上げていく……のが、スローモーションで再生された。

 この世界へ来た時に与えられたチートは、反射神経の強化も含まれてる。

 俺は咄嗟に飛び退き。

 銃弾を避け。


 そして、ダーティ・スーは。

 ……――あっれぇ~、避けようとしない!?

 オイオイオイ。

 死ぬわコイツ。



 ……。

 …………。

 ………………――!


 だが、違った。


 キンッ。

 何だか灰色のよくわからないモヤモヤが、弾幕を根こそぎ包み込み。


「二つほど、欲しいものがある」


 モヤモヤに包まれた全ての弾丸が、オークの両腕目掛けて……、

 反 転 !

 殺 到 !

 ――……ヒュルルルルッボボボボボボッ。



「……逃げ道と、そのオモチャだ」



「ヴォオッ、オッ、オォオオオオオッ!!」


 苦悶の呻き声を上げながら、ガトリングオークが倒れた。

 両腕の肉は抉れて、骨が見えている。

 ほう、反射ですか。

 流石ですね。


「ありがたく頂戴するぜ」


 オークの横に落っこちたガトリングガンを、ダーティ・スーが収納魔法か何かで格納した。

 おかしいな……収納魔法は転生者や転移者しか使えない筈だろ。

 女神さまが言ってたぞ。

 なんで、こいつが……?



「悔しかったら、イカした義手でもこしらえて貰うこった」


 馬車が動き出す。


「……じゃあ、露払いはよろしく頼むぜ、坊や達」


 ダーティ・スーは、その方角へと走る。

 俺は、ダーティ・スーの前に立ちはだかった。


「待ちやがれ! ソリグナの身柄を返してもらうぞ!」


「断る、と言ったらどうなるのかね」


 ダーティ・スーが銃を向ける。

 俺は両手のそれぞれに持った剣をクロスさせる。


「力づくでも連れて帰る」


「理由を聞かせて貰おうじゃないか。何故そこまでこだわる? 本人が逃げたいって言った。俺はただ護衛しているだけだぜ」


「信じられるかよ? お前に連れて行かせたら、何に悪用されるかわかったもんじゃない」


「俺を言い訳に使うなよ。ここで言うべきなのは、お前さん自身がソリグナをどうしたいか(・・・・・・)だろう」


 はいクソー。

 さてはアンチだなオメー。

 いちいちいちいち癇に障ることばかり言いやがって。

 俺だって気持ちの整理が付かないんだよ。

 相手が誰なのか、同意の上なのか、それすらも解らない。


「……このっ!!」


 突く!

 だが、剣を掴まれる。


「お前さんが育児を肩代わりでもしてくれるというのかい」


「は?」


 こいつ大丈夫か?

 話が飛躍しすぎだろ。

 なんで子育ての話になるんだよ。


「ほら、言ってみろ。それとも、言えないくらい曖昧な気持ちだったのかね? ふはは! 奴に会えば気持ちが固まるとでも! ふはは、ははははは!」


「黙れ」


 誘拐犯のサイコパスが正論の皮を被った詭弁で論破しようとしてんじゃねぇよ。

 くそっ、剣が掴まれたまま抜けない!

 片手だけだろ!?

 なんつー馬鹿力だ……!


「……ほら、早く動けよ。俺のバスタード・マグナムがお前さんをいたぶりたくてたまらないそうだ」


 仕方ない、手放すしかない。

 残ったのは、左手の剣だけ。

 多分、俺が背を向けて逃げても、こいつは気にも留めないのだろう。

 けど、それは癪だ。


「――っ」


 だから、ダーティ・スーを無視して馬車を追い掛ける事にした。


「……閃光脚せんこうきゃく!」


 両足に紫電を纏い、加速する。

 遠江が数匹のオークを切り伏せている、その横合いを走る。


「え!? ツトム、ちょっと!?」


「ツトムどの!?」


 フィリエナと遠江の呼び止める声には、振り向けなかった。

 悪いな……俺の独断専行を許して欲しい。

 どうしても、ソリグナ(あいつ)とは顔を合わせなきゃ気が済まないんだ。

 馬車へはあっという間に追い付いた。


「――ソリグナっ!」


 呼びかける。

 荷台に乗っているんだろ……頼む、答えてくれ。


「ソリグナさん、隠れて」


 知らない女の声。


「え、ええ!」


 そして、ソリグナの声。


「くそっ……うわ!?」


 ――ヒュウゥン、ドゴォ!

 ロケットの弾頭が飛んできたから、急いで横に跳ぶ。

 RPG! RPG!

 脳内でふざけてる場合じゃなかった。


 追い掛ける。

 ひたすらに、追い掛け。

 追い掛けて、そして追いつき。


「このっ!! ソリグナを返せ!」


「あんたはお呼びじゃないんですよ!」


 またしても放たれるRPG!

 いや、これは違うぞ……パンツァーファウストだ!

 第二次世界大戦の火器なんてどこで買った?

 さっきのガトリングオークといい、どう考えてもファンタジー世界の範疇を軽々と飛び越えてるよな?


 はぁ~(クソでかため息)。

 お前ら何処の漂流物だよ?

 見た目は廃棄物っぽいのに。


 ……弾頭が飛んで筒だけになっていた筈のパンツァーファウスト。

 だが、弾頭がフッと復活した。

 何あの復活……なんか気持ち悪い……。


 さぁて、まずは。

 あの薄気味悪いパンツァーファウストサブカルクソ女を止めないとだな。




 花粉症で目がかゆいので、どなたか防護魔法を教えて頂きたく存じます……

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