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ダーティ・スー ~物語(せかい)を股にかける敵役~  作者: 冬塚おんぜ
MISSION11: ソドムとゴモラを呼んでこい
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Task7 クソ野郎どもをたっぷりと可愛がってやれ

グロ展開上等バッチコイお仕置き展開くん『 お ま た せ 』


 ここは屋根のない、半壊した家屋だ。

 柱は残っているから、そこに冒険者共を括り付けてある。


 ちなみにクレフは、煙の槍をケツに刺して運んだ。

 流石の俺様でも、ロナに金輪際相手してもらえなくなるのは少しばかり堪えるってもんだ。

 途中で「う、ぐぅ、これがホントの、ポリコレ棒……」なんて呻き声が聞こえてきたが、無視した。


「――そら、起きろ」


 バケツいっぱいの木片を、クレフのツラにぶちまける。


「お目覚めかな」


「ここは……」


「友愛村の多目的ホール(・・・・・・)だ。弁明をしたけりゃ聞いてやるぜ」


「いや、その、深刻なすれ違いがあったというか……騙されてただけなんです……。

 お願いです、彼女らだけでも助けてやってください、何でもしますから……」


 真面目にやって、それなのかい。

 まったく見上げた自己犠牲の精神だぜ。


「……だとさ。どうするかね。今回はお前さん達に処分を任せてやろう」


 一真と猛英に、俺は肩越しに視線をくれてやった。

 まずは、判断を委ねてみようじゃないか。

 二人共、その手には農具が握られている。


「なんだったら、俺を使っていいから! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!!」


 クレフ、お前さんは黙ってな。


「「やらねーよ!」」


 見事なハーモニー。

 それに対して、ロナは死んだ魚のような目をしながら、紀絵は呆気に取られたツラをしながら、それぞれ小さな拍手をする。


「俺にはタケがいる。浮気は絶対にしない」


 とは一真君の言葉だ。

 いやあ、全国の主婦が羨む一途ぶりだね!


「つーか、センパイ。ゲイは男なら誰でもいいとか思ってんの?

 逆に訊くけどさー、センパイは女を見たら誰彼構わず犯すのかよ? うっわ、ケダモノですか~? コッワ!

 ていうかさ、あんた前世オタクだろ? 俺もそうだけどさ。圧倒的にたくさんいるリア充からすりゃ、底辺なんてみんなキメェからさっさと首吊ってくれねーかなぁッ!!」


 猛英君は言いたい放題だ!

 枯れ葉を集めて燃やすように、ルサンチマンを吐き出した。

 一真少年が、思わずその肩を掴む。


「タケ!」


「だってさァ……うん。わーったよ」


 楽しそうで何よりだ。

 俺はクレフに向き直って、そのツラを拝む。


「だ、そうだ。タイプじゃないとさ。残念だったな」


「一体何が気に入らなかったんだよ……」


「そりゃあお前さん、理解できる筈が無いだろうよ。どうせ前世では(・・・・)引きこもって(・・・・・・・)パソコンしか(・・・・・・)やらなかった(・・・・・・)だろう?」


「あのさぁ……」


 ほら、カチンと来るだろう?

 それこそが、お前さんの過失の本質さ。


 クレフがアルコールで消毒済みならその肩を叩いてやっても良かったが、あいにく糞まみれだ。

 そういう趣味を持つ奴がいるのは否定しないが、俺は遠慮しておこう。


「お前さんはお前さんの守りたい弱者(・・・・・・)だけを護り続ければいい(・・・・・・・・)。相応しい姿に、俺が加工してやる(・・・・・・)


 ズドン!

 ズドンズドンズドン!


 銃弾で両足をぶった切って、トングで切断面に“軍神様のご加護”と呼ばれていたアクセサリーを押し付ける。


「ぎゃああぁぁあぁああァァ! あぁぁあああッ!!」


 瞬時にアイテムを使える特殊能力を持っているらしい。

 或いは時間を止めるなりしてやがるのかね。


 どっちにしろ、動けないなら脅威にならん。

 ちょいとばかりタフなだけさ。

 そして俺も俺で回復薬をクレフに与えて、死なないように気を使っている。


「もちろん、こいつも切り落とそう」


 悪い女に惑わされるのは、そいつ(・・・)があるからさ。

 可能性を生み出す物が無くなれば、可能性に振り回される事も無い。

 つまりは去勢だ。


 煙の壁を薄く展開して上下に二つ並べて、それで挟み込む。

 これは名付けるとすりゃあ“煙の断頭台”って奴さ。


「おえェ、残酷」


「カズ、俺ちょっと気分が……」


「向こう、見てよう」


 それでいい。

 別に構わんさ。


 そら、とどめだ!

 さらば、股間のロベスピエール!

 転がっているアレは、ナターリヤの部下共に拾わせる。


「あ、あ……」


 顔も一部、焼いてやるとしよう。

 特に、髪の生え際は焼け跡を念入りに入れてやる。




 ……はい、一丁上がり。

 両膝から下と股間の大事な臓器が切り飛ばされた、見るも無残で立派な勇者の成れの果てだ。


「庇護、寵愛、憐憫を一身に受け入れ、見下す側から見下される側に墜ちた愉悦をたっぷり味わうといい」


 なあに、少なくともお前さんの心の中では、身を挺して他の連中を庇ったつもりなんだろう?

 そのありがたい真心がしっかり伝わっているなら、クソまみれのお前さんを抱えてでも連れ帰ってくれるだろうよ。

 取り巻きの女共がね。


「ああ、そうだ」


 ナイフを逆手に持って柱に――耳の横を掠めるように突き刺す。


「間違っても復讐なんざ考えない事だ。少しでもそのそぶりを見せやがったら、今度こそ俺がお前さんに“馬鹿に付ける薬”を処方してやる事になるぜ」


 ……聞いちゃいねえ。

 泡吹いてやがる。




 さて。


「――他の女共」


 そう言って俺が視線を寄越せば、奴らはそれぞれ違う面構えを見せてくれた。

 怯えきって、何処かの誰かに救いを求める奴。

 希望を捨てず、反抗的に睨む奴。

 俺と目を合わせる事を拒む奴。

 既に何もかもを諦めて反応すらしない奴。

 周りを責めるように見回す奴。

 誰かが足りない気はするが、この段階で助けに来ないならそれまでだ。


 こいつらの名前には興味がないし、今更それが意味のあるものとも思えん。

 だから一括りに“他の女共”と呼ぶ。


「お前さん達も、まあ許してやろう。そこのシスターが協力的だったお陰で、お前さん達は俺の機嫌を損ねずに済んだのさ」


 ……意外だろう?

 目に付いた獲物は片っ端から遊んでは壊して、壊しては捨てる――なんて噂を耳にしているなら尚更そう感じる筈だ。

 事実、クレフで遊んで捨てたのを目の前で見せつけてやったのだから。


「だが、クロエ。お前さんは例外だ」


「ち、違うんです、私も、私は騙されただけなんです! だから――」


 ――ズドン!


「ひぅ!?」


 柱の根元に届く銃弾は、木片をクロエの足に当てた。

 騙されてする事が、教会とグルになって弱い者いじめかい。

 御大層な正義の味方もいたもんだ。


「わ、わかった、えっと、字見君(・・・)、臣澤先生の居場所が知りたいんだよね!? 私、知ってるから! 言うから!」


「は……? 復讐したけりゃ行って来いって事かよ? とんっだ薄情者だな!」


「ひぅっ!? な、なんで!? なんでエウリアさんが許されて、私は駄目なの!?」


「エウリアさんだっけ? その人は、こっちに攻撃しないようにみんなを止める為だろ?

 お前は、自分が助かる為に仲間売ってるべ?

 そんくらい理解しろし! 馬ッ鹿じゃねーの!? マジで!

 ……バラされたから復讐しにいくとか、それこそ“ホモは犯罪者だから悪魔です”って言わせるようなもんじゃん! クソじゃん! なあ!」


「だから、タケ!」


「ごめん、ちょっとキレちゃった」


 後ろから紀絵の「ちょっとかな……?」なんて声も聞こえてくるが、それはそっとしておこう。

 話は大体、ケリが付いたと考えるべきだ。


「お前さんには一つ協力してもらおう」


 クロエの耳元で、そう囁いてやる。

 そして、振り向く。

 ナターリヤも、まだここにいる。


 おこぼれが欲しいのかい。

 ちょっかいを出したいのかい。

 どっちにしろ好都合だ。


「なあ、ナターリヤ。外付けの臓器というのは、研究しているかい」


「ほむ。何度かありますな。

 犯罪者であってもエルフが人間を入手できるような仕組みはありませんでしたから、素体の入手は裏ルート! どうしても手間が掛かりますぞ。

 それがこうしてタダで手に入るとなれば、それはもう重畳! 素敵! 最高!

 ほら、一度そういう臓器を付けると、取り外せませんからな。都度、素体が必要になってくるわけですな」


「なるほど」


 一言で纏めれば「クロエが欲しい」って事だ。

 じゃあ、次はサイアンに訊いてみよう。


「サイアン。お前さん、こいつを解放してやる(・・・・・・)というのは、どうだい」


 飢えていたんじゃないかね。

 お前さんの本来やりたかった(・・・・・・・・)事に。


「え……ご、ご主人様、それって……?」


「こんなに溢れんばかりの恋心を抱いているなら、その矛先をお前さんに向けさせるのさ。

 欲望の受け皿になって、全てを吐き出させてやれ。そして、それにはお前さんもよく知っている臓器があれば捗るんじゃないかい」


 物欲しげな眼差し。

 そして生唾を飲み込む音が、答えそのものさ。


「……は、はい、ご命令とあらば」


 なんて上擦った声の返答なんざ、上辺を飾った建前でしかない。


「これは提案だ。拒否権ならあるんだぜ」


「命令、して下さい。これは、ボクの一存じゃ決められない」


 今更、二の足を踏むのかい。

 まったく、ここまで臆病じゃあもはや職人芸だぜ。


 今までさんざっぱらやってきただろう。

 数え切れない程、ひとさまの人生に首を突っ込んできた。

 そして、その責任をお前さんは、てめぇ自身で背負ってきただろう。

 今になって、それが怖くなってきたのかね。


 デカい失敗がトラウマになったってか。

 立ち直るのに時間が掛かるってか。


「……なら、命令だ」


 仕方のないお嬢ちゃんだぜ。

 お前さん達のあらゆる狼藉は、この俺様が責任を取ってやろうじゃないか。


「こいつの股ぐらに素敵なメンバー(・・・・・・・)を迎え入れて、サイアンが愛し続けろ」


「――! ……はい、ご主人様」


「商談成立ですな、ロナ殿。次回もアーマー・ブレイカーの提供をしますぞ。今回は、あの一発だけでしたからな」


 なるほど、クレフを全裸にした銃弾はナターリヤの発明品か。

 俺のあずかり知らん所で、そんな取引をしてやがったのか。


「そりゃどうも。ってわけで、スーさん。今回ちょっとダシにしちゃったんで」


 ロナは悪びれもせず、軽く右手を上げる。

 いや、目を合わせようとしないのは負い目があるからかね。


「何、構わんさ。それじゃあ、新しいオモチャを持って帰ってくれ。それとチアガール達に、あの金塊(・・・・)で飯を奢ってやってくれるかい」


「同志も人が悪い」


「アレがメッキじゃなけりゃ良かったんだがね」


「金塊だけに一本取られましたな。それでは、今回はこれにて。お前たち、行きますぞ」


「「承知ダー」」


 クロエを縛っていた柱は、ナターリヤの部下共が運んでいく。

 そこにクロエを縛ったまま。


「え、やめ、嫌、嫌! やだ、やだ! 連れてかないで! そんな、やだぁぁぁ――ッ!」


 泣き喚くクロエに耳を貸す奴など、いやしない。

 安心してくれ。

 もしもお前さんのあらゆる悪行がお前さんの言うとおり、誰かに操られた事によるものだったとしたら、その時は俺が責任を取ってやるよ。


 ……仮に、それが真実だったとしたらの話だがね。




 あの時の金塊というのは、MISSION07で貰ったアレです。

 鉛の塊にメッキをしただけなので、本物程の価値はありません。

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