4.モデル登場
「友達とかクラスの子に声を掛けてもみんな警戒して連れて来られなかった」
「気にするな。すぐに見つかるとは思ってはない」
昨日の今日で見つかるとは俺も思ってはいない。
自分が片思いをしているなんて、見ず知らずの人に知らされたくはないはずだ。
もしかしたら、それが思いかけず相手に伝わったり、クラスメイトに知られてからかわれるのも嫌だろう。
もっと嫌なのは、友達が同じ人を好きで修羅場に突入なんてもの考えられる。
ここまで考えて断るやつは少ないだろう。
大概はただ知られたくないからという単純な理由だろう。
ガラガラッ
そんなマイナスことばかり考えているとドアが開かれる音が聞こえる。
入ってきたのは昨日会った女子生徒だった。
名前は確か白岡とか言ったはずだ。
「美術部はこちらですか」
「美術部はここであってるわよ。あなたは?」
花穂がすぐに対応にあたる。こういう来訪者への対応も花穂の役目だ。
「1年の白岡清です。青木さんに呼ばれてきたのですが」
花穂はなんのことかわからないようだった。
俺は昨日の簡単に白岡にもモデル探しを手伝いをお願いしたことを説明した。もちろんいじめのことは伏せてだ。
「へぇ~私以外に頼んでいたんだ。私に黙ってこんなかわいい子をナンパしてたんだ。よく逃げられなかったね」
「効率の良い方法を取っただけだ」
「それで、白岡さんは見つけられたの?他には誰もいないみたいだけど」
「はい。わたしです」
「えーと、それは白岡さんがモデルをやってくれるってこと?今回のテーマ分かってるの?」
「はい。わかっています」
それは白岡が現在誰かに片思い中ということだ。
「いいの?もしかしたその相手が知られちゃうかもしれないんだよ。美術部は毎月掲示板に絵を貼ってるから白岡さんに片思いしてる人がいるってことがみんなに知られるよ。それでもいいの?」
「大丈夫です。それでも大丈夫です」
白岡は自分に言い聞かせるように言っているようだった。
「でも、……」
「もういいだろ、やってくれるならそれでいいだろ」
花穂がなにをむきになっているか知らないが、俺はとっとと始めたい気持ちでいっぱいだった。
白岡を誘導し、教室の真ん中あたりに立たせた
「おまえにはこれから毎日ここに来てもらう。絵は一日で書き終わらない何日にかけて書くことになる。部活も休んで来てもらうことになる」
「分かりました。顧問の先生にはしばらく休むことを話してありますの」
おそらく昨日の件だろうが深くは聞かない。今は関係のないことだ。
「あの、わたしはなにをすればいいでしょうか?」
初めてモデルをするであろう戸惑っている白岡に俺は告げる。
「着ているものをすべて脱げ」