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恋の色をさがして  作者: 秋月玉
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2.水着少女との出会い

 その日はなにも絵は描かずに美術室を出る。

 実際、今回のお題はただの思い付きではなく、前から考えていたことだった。過去の辛い記憶から恋については描かないと決めていたが、高校生になってこれからのことを思ってのことだ。

 恋についての絵を描くとあの時の記憶が鮮明に思い出される。

 正直今でもためらっている。

 今すぐ花穂に連絡して今回のことを無かったことにしようという考えが何度も浮かんでくる。けれど、今までお題を決めてから描こうとしたもの辞めたことはなかった。それにいつかは吹っ切らないといけないことだ。

 花穂の前で言い切った以上もう後戻りはしたくない。時間が掛かるかもしれないが絶対に描き切ってみせるつもりだった。

 だからこそ、そのモデルも重要になってくる。本当は自分の目で見てちゃんと決めたいのだがモデルが見つからないと話にならない。モデルを連れて来られるなら本当に何でもするつもりでいた。

 

 そんな思いを抱きながら暗い廊下を歩いていると、目の前に人影が見えてきた。

 暗くてまだよくは見えないが、挙動不審な様子でどうやら周りの視線を気にしているようだった。

 気にはなったが、係わり合いたくなかったので無視して通り過ぎようとしてその人物が女生徒だとわかった。だが、それとは別に驚くことがあった。


 なんと、女子生徒は水着姿だった。


 正確には水泳部が使っている競泳用の水着を着ていた。ただ、なぜ目の前の女子生徒が水着のまま廊下で立ち止まっているのか不思議だった。

 ふいに女子生徒がこちらを見上げてきた。女生徒は驚いた顔をしてすごく戸惑っている様子だった。

「あー、まぁー世の中にはそういう趣味の人間がいるって言うしな。安心しろ、別に誰かに言いふらしたりしないから」

 言うような相手もいないしな、と心の中で付け加えた。

 女子生徒を追い越そうとしたとき、急に制服のブレザーの裾が引っ張られる感覚がした。

振り向くと、女生徒が俺のブレザーの裾を強く握っていた。

「……た……たすけて…………くだ……さい……」

 声がかすんでいて聞こえづらいし、背が10センチ以上離れている上に俯いて表情が分からないが、困っている雰囲気がすごく伝わってきた。

「はぁ~、どうしてそんな格好でいるんだ」

 とりあえず、女子生徒から事情を聞くことにしたが、最初はなかなか話し始めなくて帰ってしまおうと女生徒と突き放そうとしたがどうにも気になってしまい出来なかった。

 やっと落ち着いてくれて話を聞くと、女子生徒はプールに一人残って自主連で泳いでいて、帰ろうと着替えようとしたら、誰かに着替えを隠されてしまったらしい。いわゆるイジメというやつだ。女子生徒は更衣室を探したが見つからず、部活の知り合いにメールをしても返信がないので仕方なく、教室にジャージを取りに行こうとしたところまではよかったが、教室には鍵がかかっていて職員室に鍵を取りに行こうにも格好が恥ずかしくて取りに行けずに教室の前でどうしようか迷っていたところに俺が現れて助けを求めたということらしい。

 女性グループのいざこざなんてわからないが、そういうのを目の前でやられているの見るのは気分が悪かった。

 せっかく描こうと心を決めていた決意を台無しにされたように感じた。

 勿論、目の前の彼女にこの気持ちをぶつけるのは理不尽だと分かっているが、その不機嫌さを顔や声に出してしまうことはしょうがないことだと思う。

 それは、俺を見て怯えている彼女を見ればすぐにわかる。

 仕方なく職員室に鍵を取りに行った。職員室の先生には適当に嘘と本当を混ぜて訳を話したら、涙目で鍵を借かしてくれた。けっして俺が怖かったからではないと思う。そうそう生徒に怯える先生なんていないだろう。

「鍵を持って来たぞ。これでとっとと着替えて帰れ」

「はい。ありがとう⋯⋯ございます」

 鍵を女子生徒に渡し帰ろうとしたら、

「ま……待ってください」

 女子生徒に呼びとめられてしまった。

「なんだ、鍵は渡したんだ。もういいだろ」

「あの……私が着替えている間、誰か来ないか見ていて貰いませんか?」

 つまり、見張りをしていろということらしい。辺りを見回しても生徒が他に残ってないかは分かるが、俺みたいな稀なやつがいないと限らないからな。

「はぁー、わかった。見張っといてやるから、さっさとしてくれ」

「……覗かないでくださいね」

 言われなくてもそのつもりだ。それにジャージを着るだけでなぜ見張りが必要なのかわからない。それ以前に見張りを頼む相手にどの態度は失礼ではないのか。

 そんなことを言われると、その人の姿を想像してしまうやつがいると聞くが、それは本当らしい。

 俺は彼女の姿を想像する。

 肩から競泳水着の紐を外していく。

 高校生にしては豊満なバストが水着からこぼれてプルンッと弾む。

 水着を足から抜く際に突き付けられるお尻と上下左右にゆれる胸

 水着を脱ぎ終わった後に現れる女子生徒の全裸。

 裸の上から着るジャージ。

 どの姿を絵に残そうか一生懸命に考える。

 これは男子では普通の考えであり、偏ってはいないはずだ。

 裸が一番だと思うが、裸の上に着るジャージというのも捨てがたい。

 裸エプロンというのがあるように裸ジャージというのもいいのではないか。

 開けられたファスナーから見える胸とへそにそそられるものがある。

 いろいろな場面を想像しながら待っていると、女子生徒がジャージ姿で出てきた。もちろんファスナーは閉じられていた。

 だが、下に水着を着たままなのか気になるところではある。

「いろいろとありがとうございました。今度お詫びをさせてください」

「別にいらない、たいしたことはしていないしな」

「それでも私にとってはとても助かったので、何かありませんか?」

 こういう場合早く切り上げるには、断り続けるのは得策ではない。簡単なことを頼んだ法が楽だと知っている。

 ふと、俺は今回の絵のお題について考えた。

 花穂には頼んだが一応自分でも見つけられたら、探しておこうと思った俺は今回自分が考えたお題を聞いてみることにした。もしオーケーがでて花穂も見つけられていたら目の前の少女には悪いが断ってもらおう。

「ならお前⋯⋯恋をしていないか?」

「恋⋯⋯ですか?」

「あぁ、お前じゃなくても友達でも構わない、恋をしているやつがいたら俺のところに連れて来てくれ、今俺にはそういうやつが必要なんだ。ちなみに恋人のいない片思いのやつだけな」

「あの、その人を連れてきた後どうするか聞いてもいいですか?」

当然の質問だと思う。目の前の女子生徒はいじめを受けたばかりだ。警戒するのも無理はないか

「俺は美術部だ。今回の俺のテーマが恋をしている女性だ。だからそいつには俺の絵のモデルになってもらう。別にそいつの恋をどうかしようと思っていない」

 女子生徒は俯いて考え込むとすぐに顔を上げた。

「わかりました。そういう人がいたら連れて行くようにお願いしてみます」

「頼むな。それじゃあ鍵はお前が返しておいてくれ」

 鍵を女子生徒に渡し廊下を歩きだした。

「あ、あの……クラスと名前を聞いても⋯⋯」

「そうか、青木悠人だ。クラスは一年二組だ」

「私は白岡しらおか さや、クラスは一年一組です」

「それじゃ今度こそさようならだ」

「はい、さようなら」

校門を出るころには空はすっかり暗闇に覆われていた。

あのなんとも形容しがたい雰囲気のせいで疲れがどっと出てきた。

これだから人と関わるのは疲れて嫌になる。

俺にとって疲れるのは絵を描くのことだけで十分だ。





 一人取り残された私の顔は真っ赤に火照っている。

 先ほどまで目の前にいた彼の顔と声を思い出すだけで、体温がさらに上昇していくのが分かる。

 好きなアイドルの握手とサイン会に参加したときより高くなっている。

「…………やっと……会えました……」











 

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