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エピローグ 裁判 ― 真相と最後の反撃

ロサンゼルス連邦裁判所。

法廷の高い天井を照らす光が、冷たい空気を一層鋭利にする。観衆、報道陣、関係者が列をなす中、マーク・ヴァレンタイン(Mark Valentine)が堂々と座っていた。拘束はされているが、その目にはあの「舞台の魔性」が宿っている。


弁護士が開廷を告げ、裁判は始まった。


検察側は次々と証拠を提示する。

・撮影スタジオ内での監視カメラ映像

・舞台道具の改造痕跡

・マークの過去の精神評価記録

・犠牲者の供述と物的証拠


映像には、スタジオの暗がりでマークが奇妙な動きをする姿が映し出される。まるで鳥のように、捕食者のごとく、獲物の動きを追うその姿は、モズの行動に重なる。


カズヤとアイゼンハワードも法廷に出廷し、専門家証言としてマークの精神状態と事件の手口を分析する。アイゼンは冷静に説明する。

「彼は人を殺すことで、自身の演技を永遠にしようとした。これは単なる犯罪ではなく、狂気の芸術である」


そしてついにマークの言葉が法廷に響く。声は落ち着いていたが、そこには圧倒的な自信と陶酔が漂う。


「私はただ、舞台に立ちたかった。笑う者、見下す者、私を理解しない者……すべて、私の舞台のための観客だ。犯罪者として裁かれるのは、悲しいことではない。私の演技は、誰も消せない」


その瞬間、裁判長も、観衆も、誰もが息を呑んだ。狂気と芸術の境界線が、法廷という現実の場で交錯する。


裁判のニュースは世界中に広がった。

映画業界では安全管理の強化、心理的ケアの導入が議論され、俳優とスタッフの関係性も見直されることになる。

SNSでは賛否両論が飛び交い、「狂気の芸術」と「人命の重み」の議論が沸騰する。


判決の瞬間。マークは微笑み、静かに言った。

「舞台は続く……観客がいる限り、私の物語は終わらない」


その言葉は冷たい余韻となり、法廷内に長く残った。

彼の演技は終わったが、狂気の影は、現実の世界にしぶとく生き残る。


夜、裁判所の外。カズヤはアイゼンハワードと共に立ち尽くす。

「終わった……のか?」


アイゼンハワードは暗い夜空を見上げ、静かに答えた。

「舞台は変わっただけだ。観客も、狂気も……まだ、ここにいる」


そして二人は、次なる舞台、新たな事件の兆しを予感しながら、闇に消えていった。



『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:モズ 猟奇殺人事件』





ー完ー





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