第7話 仮面は脱ぐ時
スタジオの会議室。
キャストとスタッフが一堂に集められた。
重苦しい沈黙の中、カズヤとアイゼンハワードが立ち上がる。
カズヤは机に一枚の写真を置いた。
血まみれの小鳥の死骸。
それは監督殺害現場で発見されたものだった。
「この死骸は偶然じゃない。装飾でも、いたずらでもない」
カズヤの声は低く、だが全員の耳に突き刺さった。
「これは“モズ”の儀式の一部だ。そして。この中に、同じ執着を持つ人物がいる」
視線が交錯する。ジェシカは顔をしかめ、トーマスは額の汗をぬぐった。
だが、アイゼンハワードが鋭くマークを指さす。
「マーク、お前の過去を調べた。少年時代……鳥を捕らえては枝に突き刺す遊びを繰り返していたと、近所の証言がある。無邪気な遊びではなかった。異常な執着だった」
マークの顔色が変わった。
「そ、そんな……ただの子供の遊びだ……!」
カズヤはさらに証拠を突きつけた。
「そしてこれだ。監督殺害現場から見つかった繊維……君の衣装の裏地と一致した。偶然では説明できない」
一斉にざわめきが起きる。
ジェシカが青ざめ、ヘレンが口を押さえる。
マークは椅子を蹴って立ち上がった。
「……ふざけるな!俺が?スターを夢見た俺が、殺人鬼だとでも!?」
アイゼンハワードは静かに剣を抜いた。
「否定するなら、目を見せてみろ……。だがその震えは嘘をつけん」
次の瞬間、マークの瞳が異様な光を宿した。
唇が引きつり、狂気の笑みが浮かぶ。
「ああ、もういい……!ついに仮面は脱ぐ時が来た!」
彼は懐から、血に染まった仮面を取り出した。
それは忍者ケンのマスクを歪めた、恐ろしい“モズの仮面”だった。
「俺こそが“モズ”だ!弱者を串刺しにして、この腐った世界に見せつけてやる!俺の芸術をな!」
会議室は凍りつく。
カズヤは銃を構え、アイゼンハワードは魔剣ギロティーナを握りしめた。
狂気の正体は暴かれた。だが戦いは、ここから始まる。
登場人物一覧(スタジオ関係者)
◆俳優陣
アノールド
人気俳優。「仮面の忍者剣伝 ケン」で正義のヒーローを演じる看板スター。表向きは無邪気でファンを魅了するが、その裏の素顔は誰も知らない。
ジェシカ
ヒロイン役の女優。アノールドとの関係は親密にも見えるが、裏では不仲説も絶えない。嫉妬心や野心を抱いている。
マーク
ライバル役の若手俳優。役柄の影響で「第二のスター」と持ち上げられているが、本人はプレッシャーに苛まれている。
◆製作スタッフ
トーマス
映画プロデューサー。資金繰りに苦しんでおり、撮影中断は死活問題。事件を早期解決しようと焦っている。
ウィリアム監督(犠牲者)
撮影の総指揮を執っていた人物。アノールドと意見が対立することも多かった。殺害現場には「ケンのマスクの切れ端」が残される。
ヘレン
衣装担当。ケンのマスクや衣装を一から仕立てた。繊維や布の扱いに詳しく、彼女の手を通さずに衣装を改ざんすることは困難。
サム
小道具係。倉庫の管理や舞台用武器を作る職人でもある。だが事件現場に似た凶器の記録は存在しない。
ロバート
スタントコーディネーター。アクションシーンの動線を熟知しており、照明やカメラの死角も把握している。夜間にセットを自由に歩ける数少ない人物。
◆ファンクラブ・外部関係者
リサ
アノールドの熱狂的ファン。撮影所に出入りすることもあり、時に暴走する行動が問題視されていた。模倣犯の疑惑をかけられるが、証拠不十分。
ジョージ
ファンクラブ幹部。モズの犠牲者となる。木に磔のように串刺しされるという凄惨な手口で発見される。