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第七話 失敗の代償

魔界最深部・黒雷の塔。

塔の中心にそびえる玉座の間では、異様な瘴気が渦を巻き、緊張が張り詰めていた。


――ギィィ……


扉がゆっくりと開き、深手を負った男がよろめきながら姿を現す。


闇の司祭カザール。

敗北を悟った影が、その背に重くのしかかっていた。


「……お戻りか、カザール。勇者を仕留め損なったな」


玉座に座す魔王軍の司令官、悪魔王ガイアスの声は冷酷だった。

その視線は、敗者に何の情けもかけてはいない。


カザールは膝をつき、血に濡れたローブを引きずるようにして頭を垂れた。


「……申し訳ございません、ガイアス様。リンゼルが……正気を取り戻し、勇者アルベルトと共に私を撃退しました……」


「貴様の敗北など、どうでもよい。問題は“結果”だ」


その瞬間、横に控えていた魅惑の黒魔術師マーリンが、静かに一歩、前へ出た。


「ガイアス、ひとつお伝えしなければならぬことがございます」


「……何だ?」


「今回の戦闘において、勇者一行に加わっていた村人、その者こそ、“ゼロの能力者”です。名は、リスク」


「ゼロ……? 聞き覚えがあるな」


マーリンは手元の魔導書を開き、薄気味悪い光を放つステータスを浮かび上がらせた。


挿絵(By みてみん)


―――――――――


名前:リスク(Zeroを超越する者)

レベル:40

体力:24

攻撃: 0+995+455(運)+465(賢さ)×300(ゼロの法則発動)

防御: 0+900+455(運) +465(賢さ)×300(ゼロの法則発動)

素早さ:0+955+455(運) +465(賢さ)×300(ゼロの法則発動)

魔力:1

賢さ:455

運:465


※この世界で、最も弱いスライムに負けた男。



称号:必殺の仕事人 リスク

称号:ビックリさせる天才


固有スキル

・ゼロの法則(ゼロの能力を3つ発動すると発動する。 運と賢さががプラスされ×300攻撃・防御・素早さがアップされる。)

・村を作る(現在無効)


―――――――――


ガイアスの目が、一瞬、細くなった。


「……馬鹿げている。ステータスがこのような上がり方をするなど、“理”が崩壊している」


マーリンが頷く。


「“ゼロの法則”――これは、ゼロ能力を三つ持つ者が極限状態に達したときに発動する特異現象です。攻撃・防御・素早さが、運と賢さの合算値に比例して300倍になる……。これは、魔王軍、 すべての戦力と同等です。」


「ふざけた能力だ。だが、魔力は“1”……魔法攻撃に対しては脆い」


マーリンが言葉を継ぐ。

「ゼロの法則は、もはや自然法則を破壊する“異端”。ステータスが整った今、彼は“魔王すら一撃で貫く可能性”を持つ存在になりました」


「……笑わせる。だが、魔力が低いならば、“魔法で焼き尽くす”までだ」


「はい。故に申し上げます。今が最後の機会……この者を仕留めねば、いずれ魔界も滅びます」


沈黙のあと、ガイアスはゆっくりと立ち上がった。


「……よかろう。カザール、マーリン。お前たちの任務はただ一つ」


「村人リスクを殺せ」


「かしこまりました」


「ただし――」

その声が重くなり、玉座の間の空気が凍りつく。


「次に失敗すれば、カザール。貴様はこの場で、自害せよ。もはや魔王軍に恥を持ち帰る資格はない」


カザールの表情が凍った。


「……御意に」


声は低く、震えていた。

だが、その目には覚悟が宿っていた。


(……これが、我が最後の戦いになるやもしれぬ)


マーリンが静かに呟く。


「我々は“災厄”を葬るために、命を投げ打つ覚悟を持つべきときです。……ゼロを超えた者は、秩序の敵。魔界と人間界、その両方を崩壊させる“起爆装置”」


そして、ガイアスが最後に告げた。


「勇者アルベルトもろとも、灰にせよ。行け」


二人の姿が玉座の間から消えるとき、世界は静かに、そして確実に“終わり”へと向かい始めていた。

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