第五話 地底の主
勇者一行が休息を取る間もなく、巨大なうねりがのルド坑道の奥から迫る。
「来る……ッ!」
「グォォォォォ……!」
洞窟の深部、血のように赤黒い光に照らされて、二つの影が現れた。
現れたのは、岩のような体を持つ象型モンスターベビーモス。
その背後には、腐臭を放ちながら這いずる死の竜、ドラゴンゾンビだった。
名前 ベビーモス
体力 : 8600
攻撃 : 1800
防御 : 999
素早さ: 800
この世界で古代の象型モンスターで、かつて地下都市を踏み潰して進んだとされる“災厄級”の生物。動きは鈍重だが、一撃の威力は絶大。火属性魔法や強打系の武器で弱点を突く必要がある。地面ごと崩すパワーを持ち、真正面からの戦闘は危険。
名前 ドラゴンゾンビ
体力 : 8500
攻撃 : 2000
防御 : 850
素早さ: 430 固有スキル ドラゴン(状態異常スキル不可)
この世界で生前は地上を焼いた上位ドラゴン。その死骸が地底に引きずり込まれ、呪詛と闇魔力により蘇ったもの。腐敗した鱗と骨に覆われ、通常の物理攻撃は通りづらい。神聖魔法や火属性武器(例:ドラゴンバスター)に特効あり。ゾンビ化しても竜種の本能を持っており、“生者への殺意”が異常に高い。
「来たわね、地底の主たち……!」
カンナが歯を食いしばる。
「ふっ、特効モンスターじゃねぇか。こいつらには“アレ”が効くぜ」
勇者あるベルトがにやりと笑い、背中から新しい武器のドラゴンバスターを取り出した。
「ウオオオォォォ!」
鼻息と共に吹き荒れる土煙。その一歩で地面が陥没し、パーティーは吹き飛ばされそうになる。
「クソッ、真正面からは無理だ!カンナ、上取れるか!」
「聞くまでもないわ!《グラン=ツァンハンマー》、重力解放ッ!!」
背中の武器が唸り、カンナが高く跳躍。空中で回転しながら重力魔法を纏わせた超一撃!
「大車輪クラッシュ!!」
ズガァァァァン―――ッ!!!
ハンマーがベビーモスの頭部に直撃。超重力衝撃波が地面をえぐり、巨大な象型モンスターをその場に沈めた。
「……やるじゃない、カンナ姫」
「当然でしょ。ドワーフ王家をナメないで!」
「グギャアアアァァッ!!」
腐敗した翼を広げ、腐臭を撒き散らすドラゴンゾンビがブレスを吐いた。
「毒だ!下がれ!」
アルベルがドラゴンシールドで仲間を庇い、前に出る。
「これで決めるドラゴンスラッシュ!!」
光を放つ剣が、竜の腐肉を焼く。
神聖の刃が、竜の心核に届いたその瞬間──
「ギャアアアアアァァァアァァァッッ!!!」
断末魔と共に、ドラゴンゾンビは崩れ落ちた。
「……ふぅ。これで地底の主は討伐完了、ね」リスクが汗を拭う。
【パーティ全員のレベルが1上がった!】
「やったわね……私たち、最高よ!」カンナが嬉しそうに笑うが....
その瞬間、周囲の空気が冷たく染まった。
「おやおや……順調すぎて、少し心配していましたよ」
ザッ……ザッ……。
闇の中から姿を現したのは、銀髪の双剣使いリンゼンル。
その隣には、ねじれた杖を持つ闇の司祭カザールが立っていた。
「リンゼンル……まさか、またお前が……!」
「ええ。今度は失敗しません。人間の意識は完全に消しましたから」
カザールの瞳が禍々しく光る。
「彼はもう“器”にすぎません。意思も心も、もう無いのです」
「そして……次はあなた方の番ですよ。苦痛の地底に、永遠に沈めてあげましょう」
リンゼンルが無言で双剣を抜き、地面に火花が走る。
「さぁ、実験の開始です。遊びましょう勇者殿?」
「ふざけるな……!」
アルベルが剣を構える。
「……う……あ……あああああ」
凄絶な呻きと共に、元勇者のリンゼルはゾンビ族の魔族として双剣を握りしめる。
残酷な運命が再び、彼らを引き裂こうとしていた。