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第三話 補給と準備と鍛冶屋の街

要塞都市グラングロットの鍛冶区。巨大な溶鉱炉と魔力炉が唸りを上げるなか、筋骨隆々のドワーフ職人たちが、昼夜を問わず槌を振るっていた。重厚なハンマーの音が響く地下の鍛冶工房。火の粉が舞い、灼熱の空気が流れるなか、屈強なドワーフの職人たちが黙々と鉄を叩いていた。


その中の一人、筋骨隆々のドワーフ職人ゴルドンが真紅に熱した剣を水に沈め、湯気の中からこちらを見やる。

身の丈は低いが、その腕と槌は巨人さえへし折ると噂される。


ゴルドンは鉄棚から五つの逸品を取り出し、ゴトンと並べた。


「こいつらは特注品だ。ドラゴンとの戦いに備えた最高級の逸品、名付けて【ドラゴンシリーズ】だ」


ドラゴンバスター(ドラゴン族特効の剣/ドラゴン族に攻撃力+20%)

ドラゴンメイル(火・地属性ダメージ10%減)

ドラゴンヘルム(状態異常耐性アップ)

ドラゴンレッグ(俊敏性+10/地形効果軽減)

ドラゴンシールド(火・地属性ダメージ10%減)

(ドラゴンシリーズにより火属性・地属性の防御20%アップ)


そして最後に、にやりと笑った。


「で……このセット、合わせて【金貨5000枚】だな」


一瞬、場が静まり返る。


「ご、ごせん……!? は、はぁ!? そんな金あるわけないでしょ!」


カンナ姫が思わず叫んだ。


だが、リスクは微笑みを浮かべ、一歩前に出た。


「さあ、始めようか。ドワーフの誇り VS 商人魂の勝負を」


「俺たちゃな、500年の技術と信念でこれを打ってるんだ。値引きなんぞ――」


「ええ、職人の魂、実に素晴らしい。だが、この素材……ドラゴンの鱗じゃなく、ファイアバジリスクの皮だろ? それも、処理跡を見るに2級品だ」


「なっ……ど、どうしてそれを……!」


「ふっ、【市場分析能力】発動。素材の相場と流通量、火属性耐性の付与効果値から割り出したぞ」


「そしてこのバスター、鍔のバランスが微妙に前傾してる。鍛え直さなきゃ、まともに振れないね」


「貴様……!」


「とはいえ、性能は確か。そこで――金貨【2500枚】、これが妥当な線だろ?」


「馬鹿を言えッ! 半額近くだと!? こちとら昼も夜も休まず槌を振って――!」


「その努力には敬意を払う。ただし、ウチの勇者がティアマットを倒せば、広告効果爆上げ、そちらのブランド価値は天井知らずだ」


「……リスクさん、それって……」

シスターマリアが声を上げる。


「ええ。これは未来の投資ですよ、“バルド工房”の未来にね」


鍛冶場に沈黙が落ちた。やがてゴルドンが大きく笑い出す。


「クック……クハハハハ!! 面白ぇ!! まさか人間の商人ごときに、ここまでやられるとはな……!」


そして彼は、リスクの手に重たい武具の束を渡した。


「持ってけ、金貨【2100枚】でいい! ただし必ず使いこなせよ、必ずだ。これは“誇りの品”だ!」


「ふふっ、ありがとう、ゴルドンさん。ではそちらも“この交渉が間違いじゃなかった”って世界中に広告しますよ。」


 背後でそれを見ていたカンナ姫がぽつりと呟く。


「貧乏人って……本当にすごいわね」


「なにが貧乏人だ。俺は“未来の大富豪”だぜ」


リスクは得意げに金貨を数えながら、笑った。



勇者アルベルトは静かに新たな武器ドラゴンバスターを抜いた。

炎のような赤い刃が、工房の光を反射してきらめく。


この武器が、次の戦場を照らす灯火となる。


次なる目的地、《ノルド坑道》へ。彼らの進軍は、ゆっくりと、だが確実に始まっていた。


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